第八十四話 「敗北を知るには その一」
「うっ⁉」
ヴァリァサーの爪が姜椰の頭を直撃した。
姜椰は剣を握る力が無くなっていき、あっけなく床に倒れた。
「……」
小林は顔を上げ、姜椰を倒したヴァリァサーを睨みつけた。
そして何も言わずに大剣を振り上げた。
「決闘を邪魔するなッ!」
そう言うと同時にヴァリァサーの体が真っ二つに裂けた。
「か、神村……⁉」
月海は捻挫の痛みなんて忘れて神村に駆け寄った。
背中をポンポンと叩いたが応答は無い。
「ねえ、早く起きてよ!何あっさり死んでるの……⁉」
続けて体を軽く揺さぶったが、それでも反応は無い。
「神村……」
彼女の目から涙が零れた。
うつ伏せになったまま動かない彼を見ている内に涙腺が崩壊してしまった。
そんな彼女の無様な姿を小林は名残惜しい目で見ていた。
「ちょっと待った。なぜ神村の左肩から出血していない……⁉さっき剣が当たったはずだが……」
ズパッ____!!!!
「ぐあッ⁉」
小林は顔を押さえて後ろに吹っ飛んだ。
「この距離で不意打ちを食らっても後ろに下がれるとは……」
姜椰は泣きじゃくる月海をよそに平然と立ち上がった。
「神村……生きてたの……⁉」
「死んだなんて一言も言ってないんだが」
姜椰は月海を見下ろした。
「……なんで泣いてる」
「アンタが心配させるからでしょっ!」
バシッと彼の足を引っ叩いた。
「油断していた……ッ!お前にこんな傷を作られるとは……!」
小林は上を向いた。顔の輪郭から眉毛の上までに斬撃が入っていた。
左目を瞑っているのは今の俺の奇襲で失明したからだろうか。
「不意打ちしていいのは……される覚悟がある奴だけだ。どっかで聞かなかったか?」
「フン、聞いたことが無いな。想決も教えてくれなかったが……まあいい。やはりお前はこの場で必ず殺す……!」
小林の目に絶対の覚悟が宿ったのがわかった。
今のアイツは俺だけに焦点が合っている。
己の存在を俺に照らし合わせ、俺を倒すことを存在意義にしている。
俺は小林を手招いた。
「かかってこい。俺も本気で相手してやる」
「言ってくれるな!」
小林は姜椰に飛び掛かった。
大剣が空気を割きながら姜椰を襲う。
(威力は絶大だが、その代償として俺の速さに追い付けるほどの俊敏さが欠けている。勢い余って地面に武器を刺させればそこを叩けるッ!)
俺は小林を翻弄するようにちょこまかと動き回った。
暗くて大まかな位置しか把握できない小林は闇雲に大剣を振るった。
「そこかッ!」
いくら遅いとはいえ、一撃必殺の大剣が振るわれる音は姜椰に一粒の恐怖を植え付けた。
その余計な感情が姜椰の足を引っ張ってしまった。
「その程度か、神村姜椰ァ!!!!!」
「ぐッ!!!!!」
小林の大剣が姜椰の胴体に突き刺さった。
姜椰の手が大剣を抜こうともがく。
だが小林はそこを逃がさまいと大剣を押して壁に突き刺した。
姜椰は一言も発せず、ただ電撃剣を大剣に当て続けていた。
その意図は誰もわからない。
しかし小林は勝ち誇ったように目を見開いた。
「どうだッ⁉ここから何か策を打ってくるかッ⁉」
「アタシがいるわ……!」
小林の背後に月海がいた。
彼女はすでに剣を構え、いつでも小林の首を刎ねる準備が完了していた。
「神村ッ!そのまま剣を抜かせないで!」
月海は素早く剣を振るった。
「しまっ……!」
小林は大剣を手放した。
彼は両腕に傷を負ったが、なんとか致命傷を避けることだけはできた。
「次はお前か……月海津波……ッ!」
小林は勝者の笑みを浮かべながら月海を睨んだ。
彼が手放した大剣は傾き、姜椰は首が項垂れたままずるずると壁を滑り落ちた。
血が大量に吹き出し、彼の足元は水溜まりのようになってしまった。
「アンタだけは逃がさない。足の怪我なんて関係無い……!必ず倒す……ッ!」
「それはどうだろうな……?」
小林はニヤリと笑った。
「まだいたの……⁉」
増援のヴァリァサーが月海を取り囲む。
「フハハハハハハハッ!!!!!神村を守りつつ俺を倒せるのか⁉ましてや足を怪我しているというのに……!」
小林は月海を見下した。
確かに小林の言う通り、この状況では月海が圧倒的に不利。
それでも彼女は剣を落とさなかった。
自分の身を呈して戦ってくれた彼を裏切るわけにはいかない__!!!
「俺は端から神村にしか用が無い。お前の処分はヴァリァサーにやってもらうとしよう……」
小林が合図するとヴァリァサーは一斉に月海に襲い掛かった。
「……その程度かしら」
月海は目にも留まらない剣速で周囲のヴァリァサーを切り刻んだ。
血飛沫が宙を舞い、肉片が床に散らばった。
他のヴァリァサーは仲間が目の前で瞬殺されて、一瞬だけ戸惑う様子を見せた。
「ほう。怪我してもSランクは伊達じゃないようだな」
小林は感心したように言った。
「当たり前よッ!!」
月海はヴァリァサーを蹴散らしながら小林の距離を詰めていく。
もう小林の姿が目と鼻の先にまで来た時__。
「本来なら神村のためにとっておいたんだが……特別にお前に見せてやろう!」
小林は何かを口に放り込んだ。
すると彼の右腕が大剣に、左腕は強固な盾に変形した。
「この力で……俺は無敗を知るんだッ___!!!!」
小林は床が壊れるほど足を踏み込み、月海に立ち向かった。
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