第八十三話 「リベンジ・マッチ」
姜椰と月海は今川達に連絡を取ることができずに待機を余儀なくされていた。
「このままここで待機する気?」
「その足で動けるのか。どうせ無理だろ?」
「歩くぐらいだったら……!」
「不意打ちキック」
姜椰は月海の左足を蹴っ飛ばした。
「い゛ッ……あ゛ぁッ……う゛あぁッ……!」
彼女は声にもならない声を出して悶えた。
「当ててないぞ。何を痛がってるんだ?」
「ん……?ホントだわ。てっきり蹴られたものかと」
月海は左足首をさすった。
俺はため息をつき、しぶしぶ彼女に背を向けて跪いた。
「……何してるの」
「乗れよ。お前を外まで連れていく」
「はぁ……⁉その後どうするつもりよ。アンタだけここに戻るの?」
「このままお前をここに置いておく方が危険だ。人質に取られたりでもしたら、俺達は全滅してしまう。だからお前だけでも建物の外まで連れて行く」
彼女は黙り込んだ。
もう諦めて背に乗ってくると構えていた俺だが、そんな気配が無かったため俺は彼女を急かした。
「早く乗ってくれよ」
「足やってるのよ?そこまで動けないわ」
「さっき歩くぐらいなら……とか言ってたよな」
「っ……それは……」
彼女は再び黙り込み、左足を伸ばしたまま右膝を抱えて背を丸めた。
俺は少し疲れてしまったため、壁に寄りかかった。
「ふぅ……」と息を吐いた。
俺の生温い吐息も、研究所内に居座る重く冷たい空気の前では無意味だった。
不意に今自分は何をしてるのか忘れそうになる。同時に睡魔が来て思考が鈍った。
ようやく決心がついた俺は立ち上がった。
「行くぞ」
「だから無理だって言って……」
俺は彼女をお姫様抱っこした。
「かッ、神村ッ⁉」
「頼むから静かにしてくれ。変なモノを呼びたくない」
そのまま二人は第一研究室に目星をつけて道を進んだ。
廊下には姜椰の足音だけが木霊し、二人はその静寂の中から化け物が出てこないことをひそかに願った。
ドォーーーン____
「今のはなんだ……⁉」
「意外と近かったわね……もしかしたら今川が戦ってるのかもしれないわ」
「あまりノロノロしてられないな」
俺が前を向くと、角からわらわらと何かが姿を現した。
「ヴァリァサー……ッ!なんでタイミングこんなところに……」
「すでに囲まれてるわ……どうやって切り抜けるつもり?」
「お前を置いていくとか?」
俺は冗談交じりに言った。
「……別にいいわよ。それでアンタが今川たちの元に無事に行けるなら……アタシは構わない」
彼女は悲しそうに声を絞り、俺のローブをぎゅっと握った。
(冗談で言ったとはいえ、この状況では流石に残酷だったか……)
「まさか俺が本気で言ってると思ったのか?お前って意外と一枚な人間なんだな」
それを聞くと月海は安心したのか、声色が元に戻った。
「アンタだと本当にやりかねないから」
「俺はまだ、仲間を見捨てるほど人として終わってない」
(それに俺にはセイエイの結晶がある。それを利用すればヴァリァサー程度に負けたりはしない!)
俺は『加速』を使用しつつヴァリァサーの群れを正面突破しようと突撃する。
セイエイは俺の意図を汲み取り、地面から結晶を生成してヴァリァサーを攻撃して動きを阻害した。
あっという間に包囲網を抜け、俺は廊下を爆走した。
「思ったよりも数が少なかったな……」
俺は離れていくヴァリァサーの顔を拝みながら不敵な笑みを浮かべた。
「神村、前ッ!」
「前?」
二人の前に大剣が飛んできていた。
回転する大剣の刃は姜椰の左肩に激突し、二人は後方に吹っ飛ばされた。
「月海……大丈夫か?」
「うっ……!」
吹っ飛ばされた衝撃で月海は痛がっていた。
肩が負傷してないことを確認し、俺は電撃剣を抜いた。
「誰だ?」
暗闇の向こうから重い金属を引き摺る音が聞こえてくる。
そしてその姿が露わになった。
「久しぶりだな。神村姜椰……!」
俺は目が震えた。
「小林……⁉なんでお前がこんなところに……!」
「覚えていたのか……光栄だな。人生で初めての敗北を味わわされたお前に名前を憶えられているとは……!」
小林は大剣を床に突き刺し、そこに腕を置いた。
暗くてヤツの表情はよく見えないが、負の感情が溢れてきているのは肌で感じられた。
コイツは本気だ___!!!!!
小林は後ろで倒れている月海に目をやった。
「後ろにいるのは月海か。どうやら足を負傷しているようだな」
「怪我人から襲うつもりか?」
「想決じゃないんだ。俺が殺すのは貴様だけ……ッ!」
彼の目つきは姜椰にプレッシャーをかけた。
小林は姜椰達の目の前で軽々と大剣を引き抜くと、それを片手で振り回して壁を切った。
衝突音と共に壁がボロボロと崩れた。
小林は両手で剣を握り、地面を蹴った。
「さあ……行くぞッ!!」
「月海!お前はヴァリァサーの相手をしてくれッ!」
大剣が電撃剣にぶつかる。
姜椰は辛うじて流し、再度剣を構えた。
「反応が鈍いッ!」
「ッ⁉」
真上から大剣が振り下ろされた。
姜椰は電撃剣で受け止めたが、真正面からの攻撃故に流すことができず、じりじりと押されていく。
「神村、後ろッ!」
月海が叫んだ。
姜椰の背後に、月海が狩り損ねたヴァリァサーが迫っていたからだ。
ヴァリァサーは鋭い三本爪で姜椰を襲った。
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