第六十九話 「最強の残留物」
古村青叡
ランク:S
適性:「身強」
人類で唯一「完全適性」を発現した者。ヴァリァスの侵食作用を全て無効化し、その圧倒的な強さで数々の化け物を屠ってきた。
日本にZランクヴァリァスが発現した際は誰よりも多くの化け物を倒し、国家崩壊を阻止した。
その後はごく普通の生活を送っていたが、あることが理由で精神を病み自殺した。
「最強なのは悪くない。だが、他に最強がいないことが唯一の懸念なのだ__」
翌日、俺は本部まで出向いた。
「おはようございます。さあ、どうぞ中へ」
「どうも……」
エレベーターに乗り、真っ暗な部屋まで案内された。
「今から少しだけ準備しますので少しお待ちを」
黄月は部屋の奥でガチャガチャ何かを弄ると、こちらに戻って来た。
「それではこちらの画面をご覧ください」
そう言った途端、宇宙船の操作室のように部屋中の画面が起動した。
真ん中にある大きな画面にはパスワードを入力する画面があった。
「これは?」
「私が見せたかった、あなたに教えたかったものがここにあります。心の準備はよろしいですか?」
「はい」
「それでは……」
黄月はプロジェクターの隣にあるパソコンをカタカタしてロックを解除した。
「……⁉」
俺は画面に映し出された男の顔を見て絶句した。
「この人が歴代最強と言われた隊員、そしてあなたの父親である古村青叡です」
「ちょっ、ちょっと待ってください!どうして俺の父親が……」
「言いたいことはたくさんあるでしょうが、ひとまず落ち着いてください。詳しい話はそれからです」
俺は五分ほどかけて状況を呑み込んだ。
「すいません……あまりにも衝撃のことでしたので……」
「無理もありません。誰でもそういう反応をするでしょう」
黄月はさらにパソコンを弄り、彼の__俺の父親のプロフィールを見せた。
「私があなたを護衛するという命令を受けることになった経緯を説明すると、少し話が長くなりますが……あなたも詳細を教えられてないのに身を狙われるのは気分が悪いでしょうし、ここで全てお話致します」
■◇■
「まずは彼とあなたの関係を軽くまとめますと……あなたは古村青叡の遺伝子を強く受け継いでいます。あなたがまだ部隊に入る前、Ⅾランクヴァリァスを単騎で攻略したらしいですが、その時に靴が全てヴァリァスに侵食されていたにも関わらず足には一切その影響が無かったと聞きました」
「そうですね……あの時は戦闘に必死でそこまで意識が回ってなかったです」
「もう出ているんですよ。父親の完全適性の片鱗が」
(俺の『加速』も父さんの適性の一部なのか……?)
「昔話になりますが、彼が完全適性を発現したと世界に知られてからというもの、そのメカニズムを究明しようと科学者が殺到しました。まあそれより先に彼は亡くなってしまったわけですが……」
黄月は俺に顔を近づけ、目をじっと見つめた。
「まあそのご子息である神村殿も何かあるのではないかと踏んだ連中が動いているわけです」
「その……俺は誰に身を狙われてるんですか?」
彼は一呼吸おいて口を開けた。
「相田財団……この言葉に聞き覚えは?」
「!」
「あるようですね。あれも表向きは立派な事をしているようですが、実態は電源がショートするほど胸糞悪いものです」
「相田財団ということは……総隊長も一枚嚙んでいるということですか?」
「ほう……いい勘をしていますね。ですが、それはまだ確認できていません。そもそも総隊長自身が相田財団を嫌っているので、彼らと協力する可能性は低いでしょう」
「俺を狙う主犯格とかはわからないんですか……?」
「……その方はすでにあなたと接触しているかと」
「すでに……?」
俺は思考を巡らせた。
出会ってきた名前が次々と思い浮かぶ中で一つだけ禍々しいオーラを放つ存在があった。
「相田想決……!」
「正解です」
「アイツだったら何をしてもおかしくはないか……」
「くれぐれも彼と二人っきりになることは避けてください。彼は色んな意味であなたに害を及ぼす存在です」
「想決は入学当初からクラスでも異端の人間でした。少し訳あって俺も目の敵にされてまして……」
「ここでそれがわかってよかったです。事が起こってからではこちらも対処のしようがありませんので」
黄月は画面を切り替えた。
「神村殿、同じクラスに部隊の方はおられますか?」
「申奏とか……ですかね」
「他には?」
俺は考えたが何も出てこなかった。
どうにか頭を絞って考えていると黄月の方から名前を出した。
「慈串楓さん……とかは知ってますか?」
「ッ!」
「忘れていたのですか……」
彼は上を向いて自分の顔を押さえた。
「彼女とは話したことがあります。確か想決と同じ部隊に所属してると聞きましたが……」
「すでに知己でしたか。確かに慈串さんは彼と同じ隊でしたが……先の制度改変で別々になっているかもしれません。後で調べておきます」
「ありがとうございます」
「知っている方はそのぐらいですか?」
「そうですね……」
黄月は画面の電源を落とすと部屋の電気を点けた。
「それと……自身が古村青叡の息子であることは他言無用でお願いします。如月殿でも言ってはいけません、いいですね?」
「わかりました」
彼は俺が部屋を出ると鍵を掛けた。
廊下に誰もいないことを確認して俺は黄月に聞いた。
「聞きそびれたんですが、何故相田財団は俺の身を狙ってまでヴァリァスや適性を究明しようとするんですか?」
「私には理解できませんが、強いて言うなら人は好奇心の奴隷だから……でしょうか」
「はあ……」
「ですが、その先頭に立つ彼(想決)が狂ったように動くのは彼の生き様が影響してるかと」
「アイツの生き様……ですか」
「気になりますか?」
俺が小さく頷くと黄月は少しだけフリーズした。
彼の目を見るとレンズのようなものが拡縮していた。
「……この階には私たち以外に誰もいないようですし、私が知っている限りでお教えしましょう」
◇
ARLの一室にて、相田想決はいくつものモニターと向き合っていた。
机の上には何やら複雑なことが書かれた書類が散乱し、想決は飲み干したコーヒーカップ片手に窓の外を眺めていた。
そして散らかった机に目を落とした。
「流石に片付けるか……」
特に仕分けることもせずに無造作に書類を棚に乗せた。
彼が額の汗を手で拭った直後、書類たちが雪崩のように机の上に崩れてしまった。
「はぁ……」
ため息をついて書類をかき集めていると、雪崩に埋もれていた一枚の写真を見つけた。
それは想決が小学校に入学する際に彼とその両親で撮ったものだった。
家族全員がカメラに向かって微笑んでいる、最初で最後の一枚。
その写真をそっと棚に立てかける。
何か思っている顔で数秒ほど写真を見つめると「フン……」と鼻息を立てた。
彼はドアノブに手をかけた。
そして廊下の眩しい照明が顔面を直撃した。
扉を閉まりきる寸前、暗い部屋に向かって呟いた。
「僕は昔から恵まれていないみたいだ……」
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