第六十六話 「名も知らぬ誰は裏で動く」
道路を彷徨った赤子は突然止まった。
そしていきなり立ち上がり、俺の方に向いた。
「ッ……⁉」
しかし赤子は何か危害を加えてくるつもりはなく、周りにいる隊員たちに目を向けた。
彼(或いは彼女)から見れば自分より背丈が何倍もある鉄の塊に囲まれていて、物騒に銃口まで向けられているというのに泣き出す素振りも見せなかった。
「アガガ……!」
赤子が変な声を上げた瞬間、その体から緑色の光が数本飛び出た。
「ぎゃあァァァァァァァッ!!!!!!!!」
「キャァァァァァァァッ!!!!」
男女の隊員の断末魔が自然のプラネタリウムに反響した。
隊員たちがバタリと倒れる。
その後に訪れた静寂が俺の緊張感を際立たせた。
「お、おいッ!どうしたんだよ!」
光を食らわなかった隊員が倒れた仲間を揺すった。
それでも応答がない彼らを見て恐怖したのか、パニックになって俺の方へ逃げてきた。
すると彼らが乗っていた車が小さな物音を立てて揺れた。
全身が真っ黒になった隊員たちは車を飛び降りると、地面に座っている赤子を大切そうに持ち上げた。
「何が起こってるんだ⁉」
「隊員が赤子側に寝返ったのか……⁉」
「ばッ、化け物が現れたぞッ!!」
隊員が叫んだその時、地面から複数のヴァリァスが発現した。
(これは……ポケットヴァリァス⁉これだけの数をいつの間に……もしかして隊員の中に裏切者がいるのか……?)
「……とりあえず化け物を片付けるとするか」
俺たちは武器を構え、化け物とヴァリァス化した隊員と一戦交わした。
パパーン___!!!!
化け物は頭を撃たれて後ろにぶっ倒れた。
その精密さに既視感があった俺は大方の検討をつけて振り返った。
「申奏……⁉来なくていいと言ったはずじゃ……」
「姜椰が私を置いて行っちゃったから頭にきて後をつけてきたのっ!(私は)Sランクなんだからいた方がいいに決まってるのに」
「うっ……」
「……まあいいよ。これ片づけたらお説教するから」
「はぁ……」
それから十数分後、少し負傷者が出たが誰も死なずに戦闘が終わった。
「そういえばあの赤子はどこに行った……?」
「相棒、あそこだ!」
「あれは死んでる……のか?」
赤子は体内から緑色の液体を垂れ流してぐったりしていた。
「なんだったんだコイツは……それに格我を葬った男も何がしたかったんだ……?」
俺は最後に応援に駆け付けた隊員たちが乗っていた車に乗って戻る際、地獄と化した戦場に叫んだ。
「赤月ィッ!!!!」
声は跡形も無く消えた。
如月さんと一緒にいたから姿が見えないことに胸騒ぎがしていたが、きっと二手に別れたりしていなくなったのだろうとその場で思い込んだ。
さっき現場を見回った時、クレーターの中に焦げた機械の部品があったのを思い出した。
格我が現れる前に見つかった部品をいくつか拾ってポケットに入れた。部品は全て欠けたり爛れていたりと原型を留めているものの方が少なかった。
俺は車に乗りながら、離れていく戦場を見つめた。
「どうかした?」
どこか深刻そうな顔をしている俺に申奏が尋ねる。
「……なんでもない」
俺は車に揺られながら体の力を抜いた。
さっきまで剣を握っていたせいで右手が少し痛かった。
わずかにかいた手汗を手の甲で拭き、まだ暗い空を見上げた。
その夜は月が雲に隠れて見えなかった。
◇
時は少し遡り、格我が襲われたところまで戻る。
ビルの上で想決は一部始終を見ていた。
「格我はもう用済みということか……博士には僕の方から言っておかないとね。そしてこれを……」
想決はビルの上からポケットヴァリァスを三つほど落とした。
やがて化け物が出現し、姜椰たちとの戦闘が始まった。
「ハハハ……やはりそうだったか!」
(僕が睨んだ通りだ。実験の結果は僕が求めているものそのものだった……!)
彼は屋上で一人笑った。
やがて冷静になると再び姜椰たちを覗いた。
「今回の実験で知りたかったこと___それは化け物はヴァリァス化した人間に敵対するのかどうかだ。今見た限りでは化け物たちは赤子や(ヴァリァス化した)隊員に手を出さなかった……つまりこのまま計画を進めても問題は無い。これでようやく僕の……母さんの描く世界が実現するッ!」
想決は屋上から立ち去った。
彼は物事が思い通りに進んでいるのをひしひしと感じて悦に入った。
ARLに戻る最中、彼の頭の中に二つの顔が浮かんだ。
「いつ思い出しても虫唾が走る……ッ!」
想決は力の限り歯を食いしばった。
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