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侵食世界「ヴァリァス」  作者: 弱十七
第二章 「四色の瞳」
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第六十三話 「月が最期に刻んだ覚悟」

「アナタも赤月も意外としぶといのねぇ……早く死んでくれないと困るんだけど」

余裕を見せつける黄陽を前に蒼花は立ち上がった。

「とりあえず下がってて……アイツは私が倒すから」

「でもその傷じゃ……!」

赤月は心配そうに自分の尊敬する姉を見上げた。


「私にはアンタしか残ってないの!!!!遺される私の身にもなってッ!!!!」

蒼花はいつになく厳しい顔をして赤月を怒鳴った。

すると赤月はかなり悲しそうな顔して涙ぐんだ。きっと亡き妹の顔が浮かんだのだろう。

「……」

蒼花は体ごと赤月に向き直り、頭を軽く撫でた。

「愛する家族だけが……私の生きる理由なの。だからお願い……自分を大切にして……!」

彼女は片手で赤月を抱きしめた。

「僕も同じだよ……!」


「あのさぁ戦場のど真ん中でイチャイチャしないでくれるぅ?見るに耐えないんだけどぉ」

黄陽が感動的場面を満たす空気を一瞬にして消し飛ばした。

「それじゃ私はいくから……」

蒼花は赤月に最後の別れをした。


自分の命を捨てる覚悟で変わり果てた姉を倒す。

そう決めたから……。


「フッ!!!!」

蒼花は自分の残像が消えるよりも早く槍で突いた。

「遅いわねッ!」

即座に振り下ろされた矛が槍を流した。

「まだまだッ!」

見えない槍と矛が虚空で火花を散らす。

しかし打ち合うにつれて蒼花が黄陽を押し始めた。

(さっきより明らかに戦闘能力が上がってるッ……!)

少し不利になった黄陽は蒼花から距離を置いた。


「……逃げるの?」

彼女は槍を強く握りしめ、ドスの効いた眼で黄陽を睨んだ。

制限(リミッター)解除……!!!」

黄陽は薄気味悪い笑みを浮かべると彼女の体は閃光に包まれ、暴風が立ち込めた。

二人は光を隠して吹きつける風を踏ん張って耐えた。


「……!」

蒼花が目を開けた先には腕が左右に二本ずつ生えた化け物がいた。

さっきまで持っていた矛は消え、代わりにそれぞれの腕に長剣が握られている。


「何……その姿ッ……!」

彼女は自分の姉が異形の姿になったことで流石に驚きを隠せなかった。

「私の適性『身強』を改造したの。この状態であれば全ての攻撃を見切り相手に致命傷を与えられる。いくらアナタが指折りのSランク隊員とはいえ、この状態のワタシに勝てるかしら?」

黄陽は剣をくるくる回すとその手でがっしりと掴んだ。


黄陽の四本の手による超高速の連撃が繰り出される。

蒼花は長い槍を駆使して防ぐものの、流石に本数が多すぎて徐々に押されていった。


ガキーン____


やがて鈍い音とともに蒼花の防御が剥がされた。

「しまっ……」

顔から足元までガラ空きになった隙に、黄陽は容赦なく斬った。


「あっ……!」

後ろで見ていた赤月は思わず声を漏らした。

蒼花の足元に血が数滴を落ちる。


彼女は自分の右目を押さえ、数歩下がった。下がりざるを得なかった。

「傷が浅かったかしら。そのまま肩まで切り裂こうと思ってたのに」

「うぐっ……」

蒼花は押さえていた手を外して目を開けようとした。

しかし無理だった。


同時に自分が右目を失ったという現実を突きつけられ、ため息をついた。

「ワタシの妹にしてはよくやったわ。翡翠なんて抵抗すらできなかったんだから」

「あの子の名前を口にしないで……!」

蒼花は歯を食いしばり顔を上げた。

片方しか開いていない目で化け物と変貌した実の姉を睨んだ。

「まだ諦めてないのねッ!!!!」


「ぐっ!!!」

黄陽はあえてとどめを刺さず、蒼花を蹴っ飛ばした。

「お姉ちゃん!」

赤月は倒れたまま起き上がらない彼女に呼びかけた。

「逃げて……」

「え……?」

蒼花は添えられた赤月の手を押し返すように握った。

「げほっ……そしたら神村を呼んで……」

「でも呼んでる間にお姉ちゃんが……!」

「今は私の命より……アイツを倒すことが優先。私では勝てないけど……神村は違う。あの人なら必ず打開策を思いついてアンタを救ってくれるから……」


「でも……彼がどんな戦い方をするのか……この目で見たかった……」

「……」

赤月は無言で立ち上がった。そして近づいてくる黄陽に接近した。

「赤月……⁉何してるの……⁉」


赤月は赤く輝く瞳に黄陽の顔を映した。

「僕が誰か……わかる?」

「さあ……どっかの出来損ないの弟かしら」

黄陽は一瞬だけ倒れている蒼花の方を見た。


「翡翠の敵……僕が取らせてもらう……ッ!」

赤月の左腕に着けられた機械が大量の蒸気を吐いた。

「ワタシとやり合うの……?ボクの姉でさえワタシに手も足も出なかったというのに」

「ごめんなさい……」

赤月はそう呟いた。

「は……?そっちから来といて命乞い?バカじゃな……」


ガシッ……!


「⁉」

赤月の機械から生えた金属のアームが黄陽の胴体をがっしりと捉えた。

「これがアイツの受けた痛みだァァァァッ!!!!!!!!!!!!!!」

叫んだ瞬間、真っ赤な炎が黄陽の体を取り囲んだ。

パチパチと音を立てて燃えている中、黄陽は何も慌てることなく立ち尽くしていた。


「ぐっ⁉」

黄陽は燃えていながらも剣を二本、赤月の背中に深く突き刺した。

「簡単にはやられない……一人でも多く道連れにしてやらないと……!」

「うっ……うっ……」

あまりの激痛に赤月は涙を押さえ切れなかった。

下着にじんわりと温かな血が滲みていく。その内側を鋭い痛みが走る。

「赤月……もうやめて……!」

蒼花がか弱い声で赤月に訴えかけた。


しかし彼は上から刺さる剣に抗うように体を起こし、煙を吐く機械を再び黄陽に向けた。

「いい加減にしなさいよッ!」

黄陽は残る二本の剣を赤月の脇腹と右腕に突き刺した。


一切引き下がらない赤月の執念に不気味ささえ覚えた黄陽は刺した剣を引き抜いてもう一度刺した。

それでも彼は全く態勢を崩さなかった。

「あぁ……はぁ……」

赤月は不敵な笑みを浮かべる。

すると機械が橙色に赤色にそして白色に変わっていった。

「……クールダウン完了ッ!!!」

「赤月ッ!!!!本当にやめてッ!!!!!!!!」

蒼花が声を絞っても彼は聞く耳を持たなかった。

しかし一度だけ後ろを振り返り、愛する姉に別れの言葉を()った。


「翡翠と……向こうで待ってるから……!」


「はっ……早く放せぇッ!!!」

黄陽が死に物狂いで逃げようとするが赤月の決死の執念が許してくれなかった。

「さよなら。お姉ちゃんたち……!」


直後、目が眩むような白色光を鼓膜を裂く爆発音が起きた。


しばらくして目覚めた蒼花は何も考えずに起き上がり、弟の姿を探した。

彼がいたところはドロドロに融けたコンクリートが真っ赤に彩るクレーターだけが残っていた。

彼女にはそう見えた。


「あれは……⁉」

消え去る煙の中でふらふらしながら立つ人影が見えた。

「生きてたんだ……!」

蒼花は涙を拭いながら煙が晴れるのを待った。


「が……ガハッ……」

煙が消えて見えたのは上半身の大部分が吹き飛んだ黄陽の姿だった。

「なんなの……あの化け物……ッ!」

絶望する蒼花の前で体がみるみる体が再生していく。


「次はッ……蒼花……!アナタの番よ……ッ!!」

顔から生気を失った蒼花に黄陽は鋭く指と現実を突きつけた。

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