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侵食世界「ヴァリァス」  作者: 弱十七
第二章 「四色の瞳」
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第六十二話 「因縁の対決」

如月蒼花

ランク:S

適性:「練度」


「練度」は短時間での戦闘の量に応じて、身体能力、動体視力、その他戦闘技術が上昇する。

主に連戦する場合などに適しており、敵と長時間戦うのにも向いている。急に戦闘能力を上げることは出来ないため、雑魚敵などで練度を積んでおかないと強敵に一撃で仕留められる危険性を兼ねる。

基本的に人体の限界、或いは適性の限界が来ない限りはいくらでも強くなれる。

彼女相手に出し惜しみをすることは、敗北へと駒を進めることと同義である。


「人生は退屈。でも退屈の拭い方を探せるからこそ人生は楽しい__」

「じゃあ俺は向こうで準備してくる」

「ワタシは何してればいーい?」

「巡回してる隊員を始末しておけ。くれぐれもバレないようにな」

格我の後ろ姿は人混みに消えた。


「格我ってばぁ……やっぱり最近冷たいなぁ」

黄陽は自分の胸を持ち上げるように腕を組んだ。


「久しぶりだね……黄陽」

黄陽の後ろから如月が現れた。

「あらぁ……今日は姜椰君はいないのかなぁ?」

「どうしてあの子の名前を……」

「調べたに決まってるじゃなぁい。今宵はアナタたちにいいもの見せてあげるぅ!」

黄陽は武器を構えると、邪魔な通行人を切り刻みながら蒼花に襲い掛かった。

「黄陽……頭イカれてるの⁉」

「だってぇ……邪魔なんだものッ!!!!」

「チッ……」

蒼花の左腕に切り傷ができた。


「この前みたいにぃワタシを楽しませてくれるぅ⁉」

狂ったように蒼花に攻撃を仕掛ける。両手で槍を構えて矛を防ぐだけで精一杯だというのに攻撃の強さは指数関数的に上がっていく。

一度矛が戻るにつれて蒼花の顔には傷ができていた。

「あらぁ……かわいい顔が台無しねぇ」

「どの口が……!」

蒼花はヘラヘラした口調で喋る黄陽に殺意が湧いていた。


「ん~?どうしたのぉ?」

蒼花は無言で黄陽に襲い掛かった。

目にも留まらぬ速さで繰り出された槍も黄陽には遅すぎた。

「……この程度?」

黄陽は冷たい目で彼女を見下ろした。

「これで終わりだと思ってるの……?」

「⁉」


赤い目をした少年がいかつい機械を抱えて蒼花の背後から飛び出した。

「食らえぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!」

「あ……赤月ッ!」

蒼花と入れ替わるように赤月の機械が橙色に輝く。

そして放たれた火炎が周囲の物体もろとも燃やし尽くした。

「ありがと、一応助かった……けどどうしてここにいるのがわかったの?」

「え?」

「だって……今日の赤月の巡回の範囲ってここじゃないでしょ?」

「……間違えた」

「はぁ……まあいいか。助けてもらったんだし」


「いきなりやってくれるじゃないの……!」

黄陽は丸焦げになった体を抱きしめた。するとみるみる肌の色が元通りになっていく。

「やっぱりアナタたちは全員死んでもらうわ……!」

「赤月、下がって」

黄陽にはギャルのような雰囲気は微塵も残っておらず、ただ本能に任せた怒りだけが剥き出しになっていた。

「まずはアナタから殺すわ!」

超高速で蒼花に突撃した。

全力で振り下ろされた矛の威力が強すぎるあまり、槍を横に構えた蒼花は後ろに吹っ飛ばされた。

「なんて馬鹿力……ホントに化け物そのものね」

「まだ終わりじゃないわ!」

態勢を立て直す隙も与えず黄陽は矛を振った。

また間一髪で攻撃を受け止めるが、やはり蒼花には負荷が大きくガードレールを突き破って道路に放り出された。

「ゲホッ……」

皮が剥けて血が滲む手で口から出た血を拭った。


(最悪……口を思いっきり噛んだみたい……)


彼女は槍を杖のようにして立ち上がった。

「ふふっ……もう終わりね」

完全に油断しきった黄陽は蒼花を翻弄するような動きで攻撃した。明らかに手加減された矛、もはや撫でるだけの足蹴り。

しかし蒼花は諦めずに攻撃を躱し反撃の隙を探った。


 ◇


「結晶はどのくらい作れそうだ?」

走りながらセイエイに問いかけた。

「そんなに残ってないぞ……」

「あと2kmだ……向こうに着き次第、如月さんを見つけるぞ」


ドゴーン__!!!


いきなり目の前に何かが地面に激突した

「あの女隊長に合流か……?させないぞ」

煙が晴れるとあの男が姿を現した。

「やはりお前か」

「名乗ってなかったな。俺の名は格我、この世界に見限りをつけた男だ」

「そうか、一言余計だな」

「お前の名前……神村姜椰だろ?想決から聞いたぞ」

「格我、相田想決と仲間だったのか……!」

「なんだ今更か。てっきり知ってるものと思ってたんだがな」

俺は剣を引き抜き、電気を流した。


「今度はやられないぞ……!俺の結晶で永遠に眠らせてやるッ!」

格我の背後から大量の結晶が放たれた。

「相棒、その結晶に当たってみてくれ」

「は⁉」


(人が剣で結晶を避けている時に何を言ってるんだ……)


「大丈夫、破れることは無いから!」

俺は試しに一発だけ食らってみた。

「ハハッ!結晶が当たったなァ⁉瞬く間に体の一部が侵食され……」


「確かに結晶は当たったが……俺には効かないな」

「何ッ⁉」


「お前……何がしたかったんだ?」

俺がセイエイに問いかけると意気揚々と答えた。

「この結晶には侵食作用があるだろ。つまり僕が吸収できるエネルギー状のヴァリァスがあるってことだ。こうすれば攻撃も防げるし結晶も使い放題だ!」

「考えたな」

「あ、でも顔が自分でガードしろよ。生物のヴァリァスは吸収できないからな」


「ならば……肉弾戦と行くぞッ!!!!」

その拳を電撃剣で防ぎ、腕に小さく斬撃を入れた。

「少しも成長してないようだな」

「同じ戦法ばかり使うお前には言われたくない台詞だ」

格我の額の血管が一つ浮かび上がった。


「殺すッ!!!」

何本もの大きな結晶が蛇のようにうねるながらこちらに迫った。

「相棒、足元気をつけろよ!」

「は?一体何をする気だッ⁉」

セイエイは俺の足元から結晶を作り出し、近くのビルの屋上へと運んだ。

「そんなところで逃げたつもりか⁉」

たちまち結晶がビルへ突っ込んだ。民衆が悲鳴を上げながら逃げ惑うのが見えた。

「相棒、このまま建物伝いに如月のとこへ行くんだ!」

「ああ、わかった!」

後ろから結晶が建物を破壊しながら迫る中、俺は軽々と進んでいった。


「逃がすわけないだろッ!」

なんと格我自ら姜椰に拳を振り翳した。

間一髪で躱したが、建物が結晶に囲まれてしまった。

「まずい……」


(加速の倍率を上げれば……!)


俺はその瞬間、姿を消した。

「消えただと……⁉」

格我は周囲を見渡したが、俺の後ろ姿を捉えることは無かった。


「まさか元来た道を引き返したとは思わないはず……!」

「頭使ったな、ナイス!」

壊された建物を横に走った。

逃げ惑う人々に溶け込めば見つかる可能性も低い。


「回り道して如月さんのとこに向かおう。このままアイツの相手はできない」

「まだ結晶はかなり作れるから、最悪の場合は戦っても大丈夫だぞ」

「俺が大丈夫じゃないんだって……」


(今年のハロウィンは死者がバカにならないだろうな……)

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