第六十一話 「ハロウィン」
ARLの正門前にて__。
「じゃ、行ってくる」
格我はカプセルがあること確認して篠宮博士に挨拶した。
「念を押すが、今度はしくじるなよ」
「大丈夫だってばぁ。こっちはなぁんども念入りに準備してきたんだからさぁ……」
黄陽はよく手入れされた指で長い髪をくるくると巻いた。
「それが壊れたらわしもお前たちも終わりだ。わしが持ってても使えないから渡すだけ渡しておくが、やるなら死を覚悟してやれ」
「おや。君らこんなところで何してるの」
一人の少年がポケットに手を突っ込みながら歩いてきた。
「……想決か。お前こそ何しに来た」
格我が見下して言った。
すると相田想決は片耳のイヤホンを外した。
「イヤホンしてるから聞こえないよ。で、篠宮博士。さっき格我が持っていたカプセルは何?どうせ君が作ったんだろう?」
「お坊ちゃまの計画の一部でございます。ちょうど格我と黄陽が引き受けてくれるとのことですので……」
「へえ……?」
想決は小物を見る目で二人に焦点を合わせた。
「僕でさえ実験すらしたこと無いのに、君ら二人でできるの?」
「なんだお前、バカにしてんのか?」
急に空気が殺伐とし始めた。
「わかってると思うけど、それが失敗したら二度目は無く、部隊の上層部にも情報が伝わってしまう。そうならないよう保証できるのか……或いは自信があるのかって話だよ」
「もぉ……博士も想決も疑い過ぎだってばぁ。ちゃぁんと為すべきことは為すからぁ!」
うんざりした黄陽はその場に座り込んでしまった。
「んじゃ、俺たちはもう行く。ありがとな、博士」
博士と想決は二人が去っていくのを眺めていた。
「博士は二人が成功すると思う?」
「私めはそうなることを願うことしかできませぬ……」
「と言っても今回はあることを確認したいだけだから、失敗してもさほど損害は無いかな」
「お坊ちゃまは相変わらず聡明ですな」
「まあね……僕は父さんとは違う。必ずこの世界を変えてみせるさ」
◇
十月最終日、世間がハロウィンではしゃぎまわっている夜、一本の街路樹の下で俺と申奏は話していた。
「ハロウィンの夜ってヴァリァスが出た時に人が多いから危険なんだよね……」
「そして一人が浮足立つとそれを皮切りに他の連中までパニックになるから俺たちの指示が通らなくなって面倒だ……って如月さんが言ってたな」
「十番隊で活動するのも今日が最後なんでしょ?」
「言われてみれば確かに……あっという間だったな」
夜風に吹かれながらそっと目を瞑る。
風が騒ぐ人々の声や車の走行音や信号の音を運んだ。
「ね、少し歩かない……?」
申奏が俺の裾を引っ張った。
彼女の上目遣いに少し心臓が躍動した俺は表情を殺して誘いに乗った。
ほぼ毎日帰る時は、二人並んで歩くが今日だけは一段と距離が近い気がする。
「姜椰は仮装とかしたことある?」
すれ違う人々の姿を見ながら彼女が言う。
「無いな……でも化け物を燃やした事ならある」
「それは火葬でしょ」
二人は少し微笑む。
付き合いたてのカップルのような初々しさがそこにあった。
「わっ……」
人とぶつかった申奏が姜椰に抱きついた。
「ご、ごめんね……?」
「……」
姜椰は照れのあまり言葉を失った。
「だ、大丈夫だ。怪我はないか……?」
「あ、うん……大丈夫だよ……」
お互いに相手を好きなのを自覚してるのにあと一歩を踏み出せずにいた。
(いつ言えばいいんだ……?)
と姜椰が頭を悩ませている一方で申奏は……
(実は私に気が無いのかな……)
なんて考えていたのだった。
お互いに少し気まずい雰囲気の中、如月さんから連絡が来た。
「はい……?」
「落ち着いて聞いてほしいんだけど……」
電話の向こうから如月さんの荒い息遣いが聞こえてくる。
「あ、あの……どうしたんですか?」
「新宿に黄陽が現れたの!しかも隣にはこの前君が戦った男もいる!」
俺はすぐに事態を把握した。
(あの二人が暴れ回ったら街に深刻な被害が出るに決まってる……しかも如月さんと赤月二人で黄陽たちを相手するのは多分無理だ……)
「今俺渋谷なんですが……合流した方がいいですか?」
「そうだね……できるだけ早く来てくれると助かるよ」
「このまま通信繋げときますので到着したら連絡します」
「誰から?」
「如月さんから。少し危ない感じだ」
「私も連れてって。さ、早く!」
「ダメだ、これは化け物とは勝手が違う!君を巻き込むわけにはいかない!」
俺はフェンスを飛び越えて道路に出て北上した。
「ちょ、ちょっと!」
申奏の声は姜椰に届かなかった。
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