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侵食世界「ヴァリァス」  作者: 弱十七
第二章 「四色の瞳」
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第五十九話 「大規模改革」

十月初めての土曜日、俺と申奏は本部まで呼び出された。

「学校が終わったと思ったらこんなところまで呼ばれるとはな」

「何の用かな。面倒なものじゃないといいんだけど……」

二人は足を揃えて建物に入っていった。


案内されるままに行くと半年前に俺が初めて呼ばれた時の部屋に辿り着いた。

ノックをして扉を開けると宮坂試練を始めとするSランク隊長が勢ぞろいしていた。

「二人ともよく来てくれた。まずは座ってくれ」

総隊長こと相田俊之が出迎えた。

「とりあえず座ろっか」

「そうだな」

俺達は空いていた席に腰かけて待った。


待たされること三十分後、相田パパがタブレット片手に部屋に戻って来た。

ビルの窓に暗幕が下ろされ、スライドが映し出された。

「これで全員揃ったかな……?さて、まずは今日はわざわざ集まってくれたSランク隊長諸君に礼を申し上げよう。こればっかりは私だけで決めるわけにはいかなかったのでね」

「先に要件から言ってくれよ。俺は暇じゃねぇんだからよぉ」

墓庭が机の上に乗せていた足を下ろして言った。


相田パパがタブレットの画面をポチっと押すとスライドが切り替わった。

「今回、君たちを呼んだ理由は大きく分けて二つだ」

またスライドが切り替わった。


「一つ目は特殊部隊におけるEランクの廃止だ」

「ほう?なかなか思い切ったことをするもんじゃな」

朗らかな笑顔を浮かべながら、前野さんはコーヒーを口に運んだ。

「やり方は以下の通りだ。まず隊員個々での業績を調べ、それらを点数に換算しボーダーを定めてランク分けする。そしてEランクに分類された隊員は解雇する……という流れになる」


すると今川は椅子にもたれかかって腕を組んだ。

「はぁ、Eランクの隊員全員をクビにしたら経済がどうなることやら……」

「だが足手まといに戦場をウロウロされるよりは何倍もマシだ。その分俺たちの負担も減らせる」

今川の発言に、さっきからずっと眠ってると思っていた宮坂試練が口を挟んだ。


(そういえば時雨の姿が無いな……)


キョロキョロ見渡すと部屋の隅の方で爆睡していた。

理由は知らないが、時雨は食事している時以外は必ず床で寝る癖がある。

「ホントにろくな人間がいないな……」

と俺は呟いた。


 ◇


ARLにて__。


「あの玲がやられたのか⁉」

篠宮博士はわなわなして滝汗を流した。

「そんな驚くないだろうが。アイツは弱かった、ただそれだけだろ」

「いいか、格我!あれはわしが元最高傑作だったんだ。少し方法を間違えたら奇跡的に当初の想定していた作品よりも遥かに戦闘力のある個体が生まれたんだ。ずっと何よりも可愛がり何よりも大切にしてきた、いわば息子みたいなものなんだぞ!」

篠宮博士は格我に熱弁を振るった。

当然馬の耳に念仏……だったが。

「ならなんで息子を戦場に向かわせた。どこの親だって子供を戦争に行かせたいわけないだろ」

「アイツが話も聞かずに勝手に行ったんだ……!こんなところで戦力を失うわけにはいかないというのに……!」

「博士、漢字を間違えてる。行ったんだ、じゃなくて逝ったんだだろ。この前現場を見に入ったら山が綺麗に無くなっていたぞ」

「……もういい!その話はしなくていい……」

篠宮博士は消え入りそうな声で格我の言葉を遮った。

「ところであの肉片はどうなった。もう使えるのか?」

「ああ……あれか……」

博士は腰をさすりながら立ち上がり一つのカプセルを取り出した。


格我はそれを受け取ると色んな方向から中に入っている肉片を覗いた。

「これが博士のいうアレと言われてもな……」

「信用できんか」

「……まだ玲のことを引き摺ってるだろ。しわだらけの顔に出てるぞ」

「大切なものを失ってすぐに立ち直れる人間がいるわけなかろう……」

篠宮博士は「よっこらせ……」と椅子に座り、機械を触り始めた。

「ふん……まあいい。これはもらっていくぞ」


格我はカプセルを隠して部屋を出た。

部屋を出てすぐ、見慣れた女の顔に目がいった。

「あれぇ?いないと思ったら博士と何を話していたのぉ?」

「黄陽か。見ろよ」

格我は懐からカプセルを取り出した。

「これ使うのわけぇ……?なんかぁ気持ち悪いんだけどぉ」

「まだ使わねぇよ。俺の方で日時は決めてある」

「……楽しみだねぇ」


 ◇


会議が始まってからもう三時間は経つ。

「あぁ……」


「でもこちらの都合だけでクビにしては失業者が街に溢れかえります。実際にEランクの隊員だけで……」

「彼らに給料を支払うだけでも相当な出費になる。手柄も立てていない者にも平等に怪我の手当をしていては上級ランクの隊員にも支障が出る」

「おーい。コーヒーのお代わりは無いか?」

「ふぁ~……早くパチンコ打ちてぇなぁ」

「ZZZ」

「そろそろこの銃も買い替えようかな……」


会議でまともに発言しているのは相田パパと今川だけだった。

見ての通り、他のみんなは会議をすっぽかして自分の時間を楽しんでいた。

「私たち……なんのために呼ばれたのかな」

「俺もわからない……」


そこからさらに一時間後、ようやく話が終わった。

時雨の後に続いて姜椰、申奏、如月、弥生の四人も眠りの底についていた。

相田パパが皆を起こすと二つ目の話をした。


「私はここ最近の部隊の被害状況を鑑みて……隊で動くというのを廃止しようと思ってる」

「は⁉」

隊長たちが一斉に耳を疑った。

「どういうことですか!僕たち特殊部隊は十人で構成される隊で任務にあたるものじゃないんですか!」

今川が声を大にして言う。

「まあまあ諸君、少し落ち着きたまえ。何も一人で行動しろと言ってるわけじゃないんだ。私が言いたいのは、無理に大人数で行動するのではなく君たちが仲間として信頼できる人たちだけで自由にチームを組んでほしいということだ」

「ずいぶんと思い切ったことをやるんだな」

「ずいぶんと思い切ったことをやるのね」

墓庭と月海が相田パパに鋭い眼差しを向けた。

「足手まといがいては敵に集中できないだろう?」


「まあ、私にとっては関係ないね……」

如月さんは大きく独り言を言った。

「ちょっと暇だから自販機行ってくる」

彼女はそう言うと、ヘッドホンをつけて部屋を出て行ってしまった。


カオス状態の部屋を見て俺は思った。

上層部の重要な会議とは思えない空気だ……と。


午後六時手前で相田パパの話が終わり、俺と申奏は建物を出た。

「土曜日……あっという間だったね」

「絶対に俺は要らなかったと思うんだがな……」


こうして俺の大事な大事な土曜日は潰された。

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