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侵食世界「ヴァリァス」  作者: 弱十七
第二章 「四色の瞳」
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第五十六話 「死を宣告する大剣」

俺はセイエイの感覚を頼りに山中を歩いていた。

「さっきより気配が強くなってきてるぞ……」

「数とかはわかるか?」

「ん~?化け物と人が混ざっているような……」

「戦闘中か……」


確かに山の奥の方で物音がする。

足を進めるにつれてどんどん激しくなっていく。


「これは……銃声か?」

濃い火薬の臭いが木々の間を通り抜けていった。

俺は流れ弾を食らわないように物陰からそっと顔を覗かせた。複数人の隊員が化け物に囲まれながら銃声を轟かせていた。

発砲した回数だけ化け物が倒れていく。


「ギャオォォォォォン!!!!!!!!」

最後に残った化け物が咆哮を上げる。そして戦場の中心にいる少女は一発、冷静に発砲した。

その直後、化け物の体は硬直して地面に倒れ塵と化した。


ふと月明かりが雲の隙間から差し込み、その少女の顔を照らした。

「弥生!」

俺は物陰から飛び出して彼女の名前を呼んだ。

「ん……?あっ、姜ちゃん!」

「夏休み以来だな。まさかこんなとこで会うとは思わなかった」

他の隊員たちは「誰だ、コイツ」みたいな目で俺を見た。

「姜ちゃんも任務で来たのか?風の噂ではSランク十番隊に所属してるみたいだけど」

「そう。今は単独で化け物を探してる最中だ」

「隊のみんなは?」

「さっき刺客と戦って俺と如月さんは負傷したから、他の隊員は彼女の護衛にまわして軽傷の俺は一人で歩いてるってところだ」

「なるほどね」

弥生は拳銃をしまい、自分の隊のメンバーの安否を確認した。


一人の隊員が弥生に尋ねた。

「城城さん、その人は誰なんですか?」

「姜ちゃんは私の数少ない友達だよ。手も繋いだし、一緒に旅行にも行ったんだ」

「えっ」

弥生の話を聞いた隊員たちは俺をじっと見つめた。

「ちょっと待った。手を繋いだのは弥生がお願いをしたからであって、旅行だってSランクの隊長数人と一緒だっただろ。別に二人きりで行ったわけじゃない」

俺はすぐさま訂正した。

「あーあ。全部言っちゃってさ……」

弥生は残念そうに肩を落とした。


「ところで、弥生たちは化け物を見つけられたのか?」

「フィールドボスか?それがね……姿はおろか気配すら感じられないというか、そもそもまだ出現していないんじゃないかな」

「出現してない……?」

「ほら、ヴァリァスは最初に雑魚敵が現れてソイツらを全部倒すとボスが出現する仕組みでしょ。五個に一個くらいはフィールドボスを出現させるために雑魚敵を全て狩らないといけないヴァリァスが出るんだよね……」

「この山にいる化け物を全て倒すまでボスに挑むことすら出来ない……というわけか」

「まとめるとそういうこと」

弥生はパチンと指を鳴らした。


俺は同じところをくるくる歩きながら解決策を考えていた。

「相棒、僕ならなんとなく化け物の気配がわかるよ?」

セイエイが小声で言った。

「本当にできるのか?」

「大雑把な位置を把握するだけならの話だけど」

「しかしお前の存在を他の人に知られるわけにはいかないしな……」

「ならこう言えばいいだろ」


俺は弥生に話しかけた。

「弥生、化け物を探す手段が見つかった」

「え?ホントか?」

「俺の隊の人間から化け物の大雑把な位置を教えてもらう。そこに出向いて化け物を狩る、これを繰り返すだけだ」

「いいね、その作戦に乗るよ」


夜も更けてきた。

体も重くなり、眠気がじわじわと意識を侵し始める。

俺は必死に目をこすって眠気をどかした。


俺含めたSランク九番隊は暗い道を歩いていた。

枝の折れる音、土が踏まれる音、武器の部品がぶつかり鳴り響く。

すっかり朝方に冷え込んだ空気がそれらを運んでいた。


「……ストップ」

セイエイが小声で呼び止めた。勿論、俺以外の人には聞こえていない。

「弥生、ここら辺に敵が潜んでいるらしい。警戒してくれ」

「おっけー。みんな、戦闘態勢に入って!」

弥生に続いて他の隊員も武器を構えた。

しかし化け物が現れる様子は無く、俺に対する懐疑の雰囲気が漂い始めた。

するとしびれを切らした隊員の一人が構えを解除して俺に詰め寄った。

「ちょっと!全然来ないじゃないの!」

女の隊員は俺を怒鳴りつけた。


「まあまあ……まだ違うと決まったわけじゃないんだし……」

弥生がその隊員を宥めた時だった。

「ゴフッ……」

女の隊員は情けない音を立てて口から血を吐いた。

見たことない造形をした大剣が隊員の胴体を大きく貫いていたのだ。

「なっ……!」

俺達は呆気に取られてただ眺めることしかできずにいた。


勢い余って貫いた剣先は弥生の肩にまで少し刺さっていた。

すると化け物は刺さった隊員ごと剣を振り上げた。

「いッ!いやぁッ……」

女が泣きながら断末魔を上げる。

最期に助けを求める手は弥生の方に向けられていた。


大剣の切れ味は女の隊員を持ち上げただけで、胴体から頭にかけてまで切断してしまうほどだった。

アジの開きの一歩手前みたいになった彼女の死体は道路に無惨に転がった。

「全員、陣形を整えてッ!」

弥生の一言で隊は陣形を作り、各々武器を構えた。

「弥生、勝算はあるか?」

「弾が当たればいいんだけど……」

彼女は自分の銃を見つめた。


「私が……みんなの敵を討たないと」

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