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侵食世界「ヴァリァス」  作者: 弱十七
第二章 「四色の瞳」
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第五十五話 「豪傑の最期」

「さっきから道が荒れてないか?」

「吹っ飛ばされたところが登山ルートから大きく外れてるのかもな。一応、如月さんたちにもこっちに来てもらってる。今の体では急な坂道も登れないからな」

俺は足を滑らせないように一歩一歩を踏みしめて進んだ。

「周囲に敵の姿は……無さそうだな。相棒は運だけいいんだからさ……」


それから程なくして如月さん一行と合流した。

「その怪我、どうしたの……⁉」

如月さんは俺を横にした。

「山頂に現れた玲という男にやられました……」

「えっ⁉あの男は僕が跡形も無く焼いたはずでは……⁉」

赤月は戸惑った表情を見せた。

「確かにお前はヤツに炎浴びせて爆撃も当てた。だが、ヤツが俺の前に姿を見せた時は左半身が焼け焦げて左腕も無い状態でありながら問題無く戦闘ができていた……」

「とんでもない化け物だね……」

如月さんは引き気味に言うと胸の前で腕を組んだ。

「ところで、君はその男に何かしらのダメージは与えたの?」

「右目は潰せましたが……」

「ってことは……敵は両目が見えないってこと?」

「そうですが……アイツには目なんて必要ありません。こっちの気配を察知して攻撃を繰り出してきますから……」

「そう……とはいえこっちもヴァリァスの化け物を見つけられてないから、その男のために人員を割くにはいかないんだよね……」

場にいた全員は頭を抱えた。


俺は脇腹の痛みが収まりかけてきたので上半身を起こした。

「とりあえず……ゲホッゲホッ!」

「ちょいちょい。君はもう戦える状態じゃないんだから大人しく休んでて」

如月さんは俺の背中をさすりながら再び地面に寝かせた。

「さてどうしたものか……」

「ですから……ゲホッ。先に化け物を倒してから玲を倒せばいいじゃないですか……」

無理して立ち上がった俺を見ると、如月さんは腰に手を当てて言った。

「君さ……倒れても知らないよ?」

「ゲホッ……足手纏いにはなりませんから……!」


スタ……スタ……


「!」

「……誰か来るみたいね」

静まり返った闇の中から足音が木霊する。

その足音が近づいてくるたびに空気が重くなり、息苦しくなっていく。


「……」

現れたのは一人の隊員だった。

それを見ると如月さんを除く俺達全員は緊張が解けて態勢を崩した。

「みんな気をつけてッ!」

「⁉」


「探したぞ……小僧……!」

「た、隊員に喋らせてる……⁉」

俺は困惑しながらも剣を引き抜いた。

「あれから戻ってみればお前が出て行った痕跡が残っていた……まさかこのわしが一杯食わされるとは……!」

すると隊員はぶっ倒れ、その背後から玲が姿を現した。

全員が臨戦態勢に入ったことで現場は再度緊張した空気に包まれた。

「神村、ここは私に任せて」

「ソイツの拳は食らったら無事(ただ)では済みません……絶対に間合いを取って戦ってください……」

彼女は了承の合図として左手を小さく上げた。

俺は赤月らに連れられて化け物を探しに向かった。


しばらく歩き回った頃、俺たちは一休憩するために立ち止まった。

周囲のヴァリァスに触れないように座った。

他の隊員は近くを見渡したり他の隊と連絡を取っていた。

「……セイエイ、近くに敵が現れたら教えてくれ」

沈黙が流れたままだ。

「セイエイ……?セイエイ?」

耳にはキーンという静寂を流れる耳鳴りしか届かなかった。

「おい、どうしたんだ?」


セイエイからの返事が返ってくることは無かった。


 ◇


私は槍の先を男に向けた。

「まったく、何故わしが女相手に拳を振るわねばならんのだ……」

玲はため息交じりに言葉を吐いた。

「あなたが私の部下に喧嘩を売ったからでしょう?」

「女、これが最後の警告だ。そこをどけ」

「やってみれば。部下にやった時と同じように」

「後悔しても知らんぞッ!」

「……所詮は目で追える速さだね」

玲が如月の背後に回る。

如月が瞬時に繰り出された槍が玲の拳と衝突した。

「わかる……わかるぞッ!貴様の殺気と闘志が!」

「うっ……!」

槍が押され始めた如月はすぐに下がった。


(神村の言った通り、間合いを詰められたら終わりね……)


「流石はSランクだけあるな……」

「それだけの技量があるのに、どうして私たちに敵対するわけ?あなたほどの強さなら部隊に入ってすぐ昇進できると思うけど」

「わしはお前ら反逆者に加担するつもりは無い。何も知らない分際でバカの一つ覚えのように化け物を狩り尽くす……愚か極まりない」

「は、反逆者……?」

玲から出た言葉に如月は困惑した。

「それはどういう……」

如月が全て言い終える前に玲は拳を握りしめた。

「死に行く者には説明するだけ無駄だッ!!!!!」

「っ……」

超高速のラッシュ攻撃が如月を襲う。

如月はあまりにも強烈な連撃を流すだけで精一杯だった。

一発一発を受けるたびに手が痺れ、意識が飛びそうになる。いつ槍が真っ二つに折れてもおかしくないような状況だった。

「ずいぶんと固い槍だなッ!!!!」

やがて連撃に耐えかねた如月の槍は拳に弾かれてしまった。


カランカラン……


地面に落ちた槍は情けない音を立てた。

「ぐッ!」

「……もう終わりのようだな」

玲は如月の首を掴んで持ち上げた。

「は……離せッ……!」

如月はヒリヒリと痛む両手で必死に抵抗するも、まったく意味が無かった。


首を絞める手の力はどんどん強くなっていく。

痛みと苦しさで意識が遠のく。

「遊びは終わりだ……如月蒼花ッ!」


「ガハッ……⁉」

玲は突然血を吐き、如月から手を離した。


(い、一体何が……?)


咳き込みながら玲の方を見る。その目に飛び込んだのは暗闇に溶け込む真っ黒な結晶だった。

鋭く大きな結晶が玲の腹部を貫いていたのだ。

「なんだ……これはッ……⁉」

玲は抜け出そうと結晶に拳を振るうもまったく応えなかった。

しばらく殴って拳から血が出始めると、玲は何かに気づいた。

「そうか……このわしが、人ですらない者に……最期を与えられるとは……」


その言葉が彼の最期の言葉だった。

ほどなくして結晶は崩れ、玲は地面に倒れた。


とめどなく流れる血が坂に沿って落ち葉を運んでいった。

「何だったの……今のは……」

如月は一人呟き、ふらふらした足取りで槍を拾った。

あれだけの連撃を受けていながら槍は傷一つついていなかった。


 ◇


「日を越してからもう一時間は経つのか……」

未だヴァリァスの化け物の足取りも掴めていない。

それに如月さんから連絡が無いのも不安で仕方なかった。

「ん……?」

持ち前の地獄耳に誰かの足音が聞こえてきた。


(足音が弱弱しい。しかも足が三本あるような……)


その方向に数歩歩くとボロボロの如月さんが姿を現した。

「如月さんッ⁉ゲホッ、大丈夫ですか⁉」

すると俺の声を聞いた他の隊員の駆けつけ、彼女を近くの木に寄りかけさせた。

「あの男と戦ったんですか……?」

「売られた喧嘩を買っただけだから……」

彼女はそう言うと、すやすやと眠りについた。


俺は槍に目を向けた。

「……そこにいたのか」

「よくわかったな」

槍からセイエイが飛び出した。

「なんで如月さんの槍に……」

「別れる寸前に相棒の服からこっちに移動して槍を保護したんだ。にしてもあのデカブツときたら、これでもかってぐらい僕(が入っている槍)をボコスカ殴ったもんだからムカついて結晶で始末してやったぞ!」

「玲は確実に死んだのか?」

「あれだけ負傷しておいて生き残れるはずが無いと思うぞ。お腹に思いっきり風穴開けてやったからな」

「俺より頼りになるヤツだな」


セイエイは俺の服に戻った。

「……そういや化け物は見つかったのか?」

「まだだ。それ以前に今の状態じゃ化け物を見つけても戦えるかどうか……」

「入山した時よりもヴァリァスが相当侵食してるぞ。もうそろそろ山の深部まで到達する」

「もしオーバーブレイクしなければ……ってことか」

「僕が補助するから早く化け物を倒しに行かないと」

「……そうだな。俺だけでも行くとするか」


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