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侵食世界「ヴァリァス」  作者: 弱十七
第二章 「四色の瞳」
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第五十三話 「パラサイト・アーミー」

神村姜椰

ランク:B

適性:「加速」


能力の発動中は周囲の時間経過が遅くなる。遅くなった時間の中では自分だけ通常の速さで動くことができる。理由は不明だが、ある程度の高所までは飛び降りても無傷でいられる。

デメリットして、加速倍率を極度まで上げたり、長時間使用していると体の麻痺などの反動を食らう。

また、発動中は仲間に声が届けられない。


「この力は孤独の証。だが俺は平気だ。孤独が日常だった今までに比べれば、思うことは何も無い」

「はぁ……はぁ……」

赤月は爆風が止み、立ち上がって周囲を確認した。

爆心地を中心にやや大きめのクレーターができていた。

「赤月、敵は倒せたか……?」

「それが……爆破したせいで、敵の死体が残らないほど損傷してしまったかもしれないです……」

「他の隊員に周囲を警戒するように伝えてくれ。その間に俺達はヤツの死体、或いは吹き飛んだ体の部位を捜そう」

早速俺たちは捜査を開始した。


(もうすぐ日も暮れる。そうすれば残骸の捜索も困難になり、そもそも触れたら一巻の終わりであるヴァリァスに侵食された山道を暗い夜に移動するのは危険だ……無いなら無いで早めに切り上げよう)


「そっちは見つかったか?」

「ここら一帯を見て回りましたが……」

赤月は残念そうに首を横に振った。

「……まあいいか。とりあえず敵は消えたんだ。俺達も如月さんの方へ向かおう」

「了解です!」


それから慎重に山道を進んでいくと別動隊が歩いていた。

「あれは……他の隊か」

俺達は情報を共有したいと思い、近づこうとすると全員が同時にこちらを振り返った。

しかも全員とも首が明らかに曲がってはいけない角度まで曲がっていた。

(なんか様子がおかしいな……)


「俺が様子を見に行ってくる。大丈夫であれば合図を送るからこっちに来てくれ」


スタスタと隊員に近づいた。

「ナニ……シニキタ?」

「!」

俺はすぐさま下がった。

「……化け物にやられたんだな」


よく見ると隊員の目つきが不自然で、額からは怪しげな角が生えていた。


(間違いない。コイツらは何かに寄生されてる……!)


「ココハ……キケンダ。イマスグ、オウエンヲ……!」

乗っ取られたはずの隊員の意識から必死の叫びが聞こえた。

もうほとんど自我も無くなっているだろうに。


俺が剣を抜くと彼らの後ろから別の隊員がやってきた。

「こんなところにいたのか。……って、どうしたんだよ!おい!」

若い隊員は目の前で様子のおかしい隊員と剣を構えている俺を交互に見た。

そしてゆっくりとこっちに来ると親指で彼らを指して言った。

「何が起きてるんだ……?」

「おそらく彼らは化け物に寄生されてます。まだ少しだけ自我が残っているようですが、体を乗っ取られている以上は手遅れかと……」

「実は俺の隊もさっき壊滅したんでな。誰かと合流できないかと歩いてたらこれかよ……」


ボヤく隊員をよそに、俺は赤月たちへ合図を送る。すると赤月だけ落ち着いた様子でやって来た。

「すまない。ここは俺がどうにかするから先に如月さんの方へ行ってくれ」

「え?でも場所が……」

「あそこに煙が出ている。彼女はあそこに向かったはずだ」

「わ……わかりました。神村さんも終わったら来てくださいよ」

「すぐ行く」

一時の別れを告げると赤月たちは如月さんの方へ走り去った。


「まさか旧友と戦うことになるとはな。……まあ俺が安らかに眠らせてやるとするか」

若い隊員は剣を引き抜いた。

「少し辛気臭くなってきたな……そうだ。お前、俺と勝負しないか」

「何をですか」

「倒した敵の数だ。ヤツらは八人。その内より多く倒せた方の勝ち……どうだ?」

「ただ勝負するだけなら構いませんよ」

「勝負成立だな。よし行くぞッ!」

若い隊員はセリフを言い切る前に敵に斬りかかった。


「いきなりフライングですか……」

俺も彼の後を追い、一番近くにいる隊員に剣を振り下ろした。

「ギャァァァ!!!!!」

電撃剣が隊員の脳天を思いっきりかち割ると、紫色の血が噴き出した。

「まずは一体……」

「ヨクモコンナ……!」

断末魔とともに地面に転がった化け物を俺は容赦なく踏みつぶした。


(個々の脅威はそれほどではない。油断しないように早めに仕留めて戦線を離脱するとしよう)


すると背後から新たな隊員が襲い掛かった。

彼らは自分の体を無理矢理動かされて関節がイカれてしまっていた。

「イタイ……ツライ……」

俺は防御していた剣で隊員の武器を振り払い、首を刎ねた。

抜かりなく化け物を潰し俺はそっと呟いた。

「どうか安らかに……」

寄生されていた隊員の体は化け物がいなくなるとドロドロに融けてしまった。


「相棒、後ろっ!」

「ッ!」

また別の隊員の強烈な打撃が足を直撃した。

「だ、大丈夫か?」

セイエイが心配そうに声をかけた。

「少し痛むが……戦闘に支障はない」

「ウガァ……!」

獣のような静かな咆哮を上げた。

(コイツは……完全に理性を飲み込まれたようだな)


「だが……そんな速さじゃ俺には追い付けない!」

加速して背後に回り剣を振る。


キーン__


「なっ……⁉」

俺は己の目を疑った。

背中から生えた三本目の手が剣を掴んでいた。

電撃剣の刃を掴もうものならまず手が大火傷を負うはず。それなのに傷一つついていない。

「ウガァッ!!!!!」

「うぐっ!」

俺は剣を掴まれたまま地面に叩きつけられた。

地面に激突したせいで顔の半分がヒリヒリと痛む。

「……いっ!」

出血を確認するために左手で触ると痛みが走った。

どうやら顔をすりむいているらしい。


「ガァッ!!!!!」

化け物は足を蹴り上げた。


(加速!)


間一髪のところで足蹴りを躱して態勢を立て直した。

そのまま隊員に斬りかかり、向かってくる拳を流しながら隙を見計らった。

「グルァッ!!!」

「……」

俺はしゃがみ隊員の足を斬り落とした。

「ウガッ……⁉」

「フッ!!!」

バランスを崩し地面に倒れていく隊員の首を斬った。


「これで三体目……」

「おいおい、まだ戦ってたのか?」

振り返ると残りの隊員は全て切り伏せられていた。

「俺が倒したのが四体。お前が倒したのが三体。つまり俺の勝ちだな」

若い隊員は剣をしまうと、勝ち誇ったように腰に手を当てた。

「……隊員は八体いたはずですが?」

「そうだったか……?」

「確か……」

俺と若い隊員は同時に首を傾げた。

お互いに自分の記憶に自信が無かった。


ウオォーン!!!!!!!!


狼の遠吠えが聞こえた途端、上から何かが落ちてきた。

それを見て俺達は目を合わせた。

「なんだコイツは……⁉」

「敵は八体いると言ったでしょう?」


「シャアァァッ!」

威嚇してくる隊員を見ると、人間と似通う部分がほとんど無く、脇腹から生えた手で六足歩行をしていた。

「コイツを倒せば終わりです。さっさと倒しましょう」

「流石にこんなヤツが相手で、そう時間はかからないだろうしな」

俺達は再度剣を抜いた。


日没になり、隊員の来ている隊服が夜の闇に同化し始めた。

「うおっ⁉」

先に動いたのは化け物の方だった。

より近くにいた若い隊員の方に飛び掛かったのだ。

若い隊員は反射的に剣を振る。しかし、あと少しのところで化け物は引き下がった。

「コイツ……意外と素早いぞ!」


(この程度なら目で追えるな……)


俺は加速で化け物に近づいた。

少し遅れて化け物が逃げようと飛び跳ねたところに斬撃を入れた。

「シャァァァ……!」

隊員の顔に大きく切れ目が入り、傷口から血がボタボタと零れた。

「おお……やったんじゃないか⁉」

「……まだ息があるみたいです」

「お前、十番隊の人間ってだけあって強いんだな」

俺は彼の言葉を背に受けて最後の隊員にとどめを刺した。


「これで終わりですね……」

俺は息を吐いた。登山して戦闘して少し疲れたのか、一度息を吐いただけではまだ息が苦しかった。

ドロドロに融けた隊員の骸を見下ろした。

「俺はこれから自分の隊へ戻りますが、あなたは……」


ドチャッ__


暗闇の中で、誰かの体が血だまりに落ちた。

「わしか?わしはお前を殺して考えることにしよう……」


聞いたことある声だった。

あるもなにも、さっき自分と戦い行方をくらました人間の声だった。


「その声……まさか玲か!」

「ご名答……先程はお前の部下に世話になった。その礼をしに来たのだ」

玲は怒りに満ちた声でそう言うと、準備体操がてら両手を鳴らした。


(最悪だ。ただでさえ苦戦を強いられるヤツが、よりによって俺が戦いで体力を消耗してる時に襲来してくるとは……!)


味方だった若い隊員も経った今、コイツに殺された。

暗くて少し見えにくいが彼の体は上半身を吹き飛ばされているように見える。


風邪をひきそうなほど冷たい汗が顔の輪郭を滑った。

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