第四十二話 「量産型エクスカリバー」
化け物から逃げた__。
それ即ち、ヤツに自由時間を与えるということになる。
化け物は鬼のように二本角を生やし、右手に巨大な棍棒を持っていた。
「ガァァァァァッ!!!!!!!」
俺や月海が動くよりも早く、化け物は牢屋に向かって武器を振り下ろした。
「なっ……」
俺の目の前で生徒たちは潰された。
真っ赤な血と誰のかもわからない肉片が宙を舞い、それらが雨のように降り注いだ。
今の一撃で軽く三人は即死、ほかの何人かは地面に叩きつけられて怯えていた。
「キャアアアアアアアアアーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
生徒たちが悲鳴を上げながら潰走状態に陥った。
「本当に最悪……よりによってこんな時に……!」
月海は頭を押さえ、何かを嘆いていた。
「セイエイ、アイツを倒せるか?」
「攻撃は厳しいけど、武器なら作れるぞ」
するとセイエイは結晶を利用して真っ黒な剣を作り出した。
「これ……触れても大丈夫なんだよな?」
「僕の結晶には侵食作用は無いから安心しな」
俺は聖剣エクスカリバーのように地面に刺さっている黒剣を引き抜いた。
「アンタ……その剣はどこから……⁉」
「俺もよくわからないんだが……そういえばお前はSランク隊員だったな。ほら戦え」
自分の持っている剣を月海に放り投げた。
「セイエイ、あと一本くれ」
「あいよ」
「じ、地面から剣を……⁉」
月海は目を丸くしていた。
「さて……やるか」
「ガァッ!!!!!!!」
「こ、こっちに来るなァ!!!!」
生徒たちの悲鳴も虚しく、彼らは鬼によって潰されてしまった。
鬼は人間をおつまみ感覚としか思っていないようだ。
「申奏!皆を誘導してくれ!」
「う、うん!みんな!こっちに来て!」
申奏は生徒たちを校舎側へ誘導し始めた。
「ウウウウウウ…………!!!!」
鬼は荒く息を吐きながら校舎の方へ移動し始めた。
俺と月海はその間に割り込み、剣を構えた。
「あのさ……あたしの我儘なんだけど、もう一本剣ある?普段二刀流だから」
「注文が多いな……ほら」
「なんで地面から武器が出てくるのよ……」
「ガルァッ!!!!」
二メートルを超えるその巨体から繰り出される一撃は空を切り裂き大地を震わせた。
俺達は攻撃を躱しつつ、ヤツの急所を探った。
戦っている最中、少し気の毒に思ったのが、鬼の攻撃を間一髪で避けた生徒の何人かがヴァリァスに触れてしまったことだ。
「た、助けてくれぇッ!!」
「フッ!」
月海は鬼の右足を斬り落とし、バランスを崩したヤツは倒れた。
「まったく……柔らかいくせに太さだけあるから切るのが面倒だわ」
「それで、急所は見つかったのか」
「これから探すのよっ!」
彼女も鬼ような顔になり、こちらを睨んだ。
安心していたのも束の間、鬼の左足が月海の頭上に迫っていた。
「……月海、後ろ!」
「わかってるわよ……」
その瞬間、左足は細切れになり黒い血の雨を降らせた。
「これが私の実力だから。甘く見ないでくれる?」
「その剣、俺のなんだけど」
「うっ……それはそれでしょ!実力はまた別の話!」
「ウガァ……!!!!」
「お、起き上がった……⁉」
すると鬼は手を伸ばし、地面に転がっていた女子生徒を持ち上げた。
彼女は両足と右腕がヴァリァスに侵食され、ほとんど抵抗できない状態だった。
「やめて!やだやだやだやだやだやだやだやだやだやだぁ……!」
「ウガァッ⁉」
月海が鬼の腕も斬り落とした。
「これで……終わりよッ!!!!!!!」
一刀両断__。鬼の首は地に転がった。
「終わったな」
「何を偉そうに……アンタは何をしたのよ」
「武器提供だけど」
「うっ……。ちょっと待って、あれ!」
「ん……?」
「グルァーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!」
黒かった地面が徐々に戻っていく。黒く染まっていた女子生徒からもヴァリァスが引いていった。
「オーバーブレイクか……」
「第二ラウンドね」
完全にヴァリァスが無くなると、鬼は第二形態へと変貌した。
角は一本、体は半分ほどの大きさになり、持っている棍棒だけはそのままだった。
「今度はお遊び無しでやるわよ」
「最初から遊んでるつもりは無いんだが……」
「ウウウウウウウウウ…………!!!!!!!」
シュン__。
鬼は目にも留まらない速さで動き、近くに散らばっていた死体を全て回収した。
ほとんどの死体は原型を留めていないが、鬼はそれらを抱えてなぜか口を大きく広げた。
その体でどうやってその大きさまで広げられるのか謎に思うぐらいだ。
「ガハハッ!!!!!!!!」
鬼は嬉しそうに声を上げるとそれらを全て喰った。
口を閉じると、血が大量にこぼれた。
「ヒッ………!こ、来ないでっ……!」
さっきの女子生徒は腰を抜かし、後ずさりし始めた。
完全に顔が引きつり、首を横に震わせていた。
「アイツは俺が運ぶ。お前は一人で相手できるよな?」
「当然じゃないの」
「じゃあ頼んだ」
「ガァッ!!!!!!!!」
「セイエイ、結晶で防げるか⁉」
「任せろって!」
すると地面から結晶が生成され、鬼の視界を遮った。
鬼が気を取られている間に俺は一人の女子生徒を抱えた。
「よっと……」
俺は走り、彼女を校舎内にまで避難させた。
昇降口には他の生徒たちが怯えながら外の様子を見ていた。
「あ、ありがとう……」
「ん……ああ」
俺は適当な返し方が思い浮かばず、なぜかコミュ障みたいな話し方になってしまった。
「姜椰……怪我の方は大丈夫なの……?」
申奏が俺の身を案じた。
「月海がいるから」
そう言い残して俺は校庭に戻った。
恐怖の衝撃音が避難した生徒たちにトラウマを植え付けていた。
「すまない、遅れた」
「は⁉別にアンタが出る幕じゃないから!早く戻って!」
彼女は冷たく言い放った。
「おい、相棒。そろそろあの剣壊れるんだけど……」
俺が離れたところから見ているとセイエイが申し訳なさそうに言った。
「……まずくないか?」
「まずいよ」
セイエイは結晶を作った張本人。
だから結晶の耐久性もわかっているのだろう。ともあれ、このことを月海に伝えないと最悪の場合、あの人まで殺されるかもしれない。
「やっぱり俺も参戦する」
「合点承知の助!」
相変わらず緊張感の無いセイエイだった。
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