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第四十四話 「飛び交うレーザー」

慈串は十分ほど経った頃に養成高校まで戻って来た。

「はぁはぁ……早くしないと」

上がった息遣いを抑えながら助けを呼ぶために彼女は再び走り始めた。


昇降口まで来ると、申奏が装飾の手伝いをしていた。

「慈串さん……?どうかしたの?」

申奏は慈串が命懸けで逃げてきたような様子を見て、心配するような声で言った。

「お、臣桜さん!神村くんが大変なんです!」

「姜椰が……⁉何があったの⁉」

「さ、さっき……」


 ◇


レーザーが縦横無尽に飛び交っている。

近くの建物を崩壊させ、道路には深く傷を残し、そして俺の命を奪おうとしている。


正直、俺に勝ち目は無い。

生身の状態で化け物に挑むことは無謀の他ならない。セイエイが戦力にならない今、俺にできることは敵の注意を引いて時間稼ぐことだけ。


「ウッシャァ!!!!」

レーザーが俺の髪を掠める。死ぬかと思った俺は、バランスを崩しそうになりつつも地面に転がった。

「ッ……」

九月とは思えない日差しの下で動いたせいか、一滴の汗が地面に落ちた。


「相棒、何か作戦はないのか⁉」

セイエイが慌てたように訊いてくる。

「俺にそんなものを考える余裕があるわけないだろ……攻撃は辛うじて避けられるから、お前が適当に策を練ってくれ」

「急にそんなこと言われても……」

「悪いが今は相棒の危機だ。普段使わない頭で考えてくれ」

「はぁ⁉言っとくけどな、僕は頭の回転だけは自信があるんだぞ⁉」


のんきに話しているとまたレーザーが飛んできた。

俺の後ろに生えていた街路樹は横に真っ二つにされ、その断面が高音で融けていた。

(レーザー……そもそもこのエネルギー源はどこだ……?)


「セイエイ、ヤツのレーザーのエネルギーはどこから供給されてる?」

「おそらく体内に蓄積されてるものを小出しにしてるんだろうな。で、それがどうかしたのか?」

「お前、生物でなければ何にでも適応できるんだったよな……?」

「まあな……?」

セイエイは相棒の質問に困惑していた。

「なら策は成った。すぐに手のひらサイズの結晶を作って、その中に入ってくれ」

「は⁉」

「早く!」

「はぁ……⁉レーザーで脳を焼かれたのか……⁉」

そうボヤくとセイエイは小型の結晶を作り、その中に入った。

「攻撃こそ最大の防御……やられる前にやればいいだけの話だ!」

俺はセイエイの入った黒い球を化け物めがけてぶん投げた。


「何してんだぁ~~~~!」


セイエイの悲鳴が道路中に響いた。

「ギャァッ!」

化け物は俺からの攻撃(セイエイ入りの球)が当たり、面食らっていた。

「ウガァ……」

心配そうに当たったところを手で確認し、傷が無いことがわかると攻撃を再開した。

「上手くいったか……?」

俺はレーザーを避けつつ化け物の様子を観察していた。

すると化け物の腹部が融け始めた。


シュワァァァァァ……!


「フッ……作戦成功だ」

化け物の体はドロドロと崩れていき、真っ黒な骨が見えてきた。

崩壊に苦しむ化け物を見ていると人体模型で見るような背骨が露わになった。

「ウッシャァーーーッ!!!!」

背骨さえも崩れる刹那、一本のレーザーが俺に発射された。


「……」

頬からチクッとする痛みがした。

指で触って見ると血がわずかに出ていた。

「セイエイ、無事か?」

「よくも僕をこんな目に遭わせたな……と思ったけど大量のヴァリァスを吸収して満腹だから許してやる」

「やっぱりお前は最高の相棒だ」

セイエイの頭を人差し指で撫でる。毛がふわふわして心地良かった。

「な……照れるだろ!」

セイエイは飛び上がって俺の額に体当たりすると、すぐさま制服に入り込んでしまった。


「さて……俺も帰るか」

よっこらせと、立ち上がって再化結晶を探した。しかしどこにも見当たらない。

心のどこかで嫌な予感がマグマのように湧きあがってくる。


(ヴァリァスが消えてる。オーバーブレイクしたのか……)


オーバーブレイクしたのは別にいいとして、肝心の化け物の姿が見えないことに焦りを感じていた。

たった今倒した化け物よりも強化されているはずだから苦戦を強いられるのはほぼ確実だ。

「セイエイ、あと一戦だけやるぞ」

「その前に。後ろからなんか来たぞ」

「ん?」

セイエイの言葉を聞いて俺は振り返った。

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