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第四十二話 「取引」

翌週月曜日、教室内は騒がしかった。


何が起きていたのかと言うと、会話どころか俺が認識したことない顔がわらわらと俺の席を取り囲んでいたのだ。

「神村って部隊に入ってたんだな!めっちゃすげぇじゃん!」

「え、しかもBランクなんでしょ⁉相田君よりも上なんて優秀だね!」

「それで今はSランク十番隊に所属してるんだろ?……羨ましいッ!俺だって如月さんに命令されたい!」

俺が何も言ってないのにクラスの連中は勝手にはしゃいでいる。


「な、如月さんてどんな人なんだ?」

取り巻きの一人が言った。すると他のクラスメイトたちも一斉に黙り込んだ。

「如月さん?あの人は……」


「そこ、どいてくれるかしら」

その声の主、月海が教室内までずかずかと入って来ていた。

まるでモーゼの祈りのようにクラスメイトたちはパッカリと道を開け、彼女の姿がお見えになった。

そして俺を真っ直ぐ指さして言った。


「神村姜椰、アンタに用があるんだけど今時間あるわよね?」

彼女がそう言った途端、場が静まり返った。

「あの月海が神村に会いに来るなんて……」

「もしかしたら部隊での連絡かもしれないけどな」

クラスの連中がざわついた。


「はぁ……何の用だ?」

「ここじゃ言えないわ」

「一昨日のことを忘れたわけじゃないよな。俺は初対面の時から、できることならお前と関わりたくないと思ってる。誰かに言えないようなことは俺のとこに持って来ないでくれ」

「ならここで言うわ。でも言う前に人払いぐらいはしてくれるかしら」

するとクラスメイトたちは教室に散らばり、各々会話をし始めた。


「フン……それであたしが来た理由なんだけど、アンタが先日出してくれたあの黒い剣について聞きに来たの。答えて、あの結晶の正体は何?」

「……言えないな」

「何か言えない理由でもあるわけ?」

「あるから言えないに決まってるだろ」

お互いに目すら合わせずに会話していると、段々と険悪ムードになっていった。


「アンタって会話もまともにできないわけ?」

「お前が相手……という条件付きだがな」

「……放課後また来るわ」

「頼むから来るな」

彼女は俺の最後の一言も無視して教室を出て行ってしまった。


「姜椰さ、いつの間にか人付き合いが増えたんじゃない?」

申奏が言う。

「あれ(月海)はその弊害だな。常に言葉も節々に棘があるから極力関わりたくない」

「まあ嫌うのもほどほどにね。彼女も同じ部隊の人なんだから」

「申奏ぐらい優しい人だったらよかった……はぁ」

俺は机に突っ伏して眠りについた。


「私……優しい?」

彼女はそう呟き、読んでいる本で顔を隠した。

顔を真っ赤にしているその姿を俺が見ることは無かった。


間もなくして担任が慌ただしく教室に入ってきた。

ドタバタと教壇を踏み鳴らし、教卓の上で書類を整理している。

「姜椰、起きて?」

「おはよ……ZZZ」

一瞬だけ睡魔に勝てた俺だったが、あえなく撃沈してしまった。

「ふふっ……おやすみなさい」


 ◇


月海は宣言通りに俺のところまでやって来た。

「……来るなと言っただろ」

「ここだと人が多いから、私について来て」

「無視するな」


「で……わざわざ屋上まで連れてきた理由はなんだ」

彼女は屋上のフェンスから校庭を見下ろし、

「神村、あたしと取引しない?」

「お前にそんな材料があるのか?」

「一昨日、あたしの部下に手を上げたでしょう?それを不問とする代わりに結晶の正体を教えてくれるかしら」

「……わかった。契約成立だ」

「あら、意外と物分かりがいいのね」

彼女は勝ち誇ったように不敵な笑みを浮かべた。


「だが、俺にも追加で約束してほしいことがある。ここで俺から見聞きしたことは誰にも言うな」

「わかったわ」

「それじゃ、簡潔に説明する。この黒い結晶は……」

俺は手を広げ、その上に結晶を生成した。おそらくセイエイが会話を察してくれたのだろう。

「ヴァリァスの力を利用したものだ」

「説明が抽象的すぎるわ。もっと細かく言ってくれる?」

「細かくも何も、これしか俺は知らないんでな」



「神村、ちょっと待って!」

俺が校舎内に戻ろうとすると彼女が引き留めた。

「……まだ何か?」

「そこの階段のところ、誰かいるわ」

「えっ……」

俺は走って校舎内を覗いた。


バサッ__。



一瞬だけ黒い布切れのようなものが視界に入り、マントを翻したような音が階段に残響していた。

(俺たちの会話を聞いていた……?誰が?何のために?)


「相田か……?」

俺は右腕をそっと触った。

夏なのに幽霊でも見たかのような鳥肌が立ち、校舎へと入っていく風がいっそう寒気を引き出していた。

「誰かいた?」

「おそらくな。もしかすれば会話も聞かれていた可能性もある」

「別にアンタの適性なんて知りたい人はいないわよ、きっと」


(……そうか。この結晶を作る能力を自分の適性ってことにしてしまえば、月海にこれ以上に怪しまれたりすることも無くなるのか……)


「そうだな……別にバレても問題無いか……」

「ここでの会話は控えた方が良さそうね。今も誰かに聞かれてるかもしれないわ」

「だから面倒事は嫌だと言ってるのにな……」

「あたしとまともに会話できるなんて本来なら末代までの誉れなのよ?どいつもこいつもあたしと話すだけで身震いするし、男に至っては話しかけただけで発狂する始末。アンタも少しは正直になったら?」

「悪いな。お前とはいくら話しても楽しめない」

彼女に何かしらの恨みがあるわけではないが、俺は冷たく突き放した。


彼女は何故か俺を昇降口までついてきた。

(送ったんじゃない、たまたま通り道だっただけだ。そうに違いない。こんなヤツに目をつけられるのは本当に御免だ)


「それじゃ、また明日」

俺は靴を履き替え、彼女の別れに無言で手を上げて挨拶した。


駅までてくてく歩いている途中、セイエイが喋り出した。

「相棒、どうしちゃったんだ。月海とかいう女にあんなにまで冷たく接しちゃって」

「当たり前だろ。元々俺に対して風当たりが強く、挙句の果てにはお前の能力の情報にも迫って来た。あれ以上あの女と関われば、俺の人生も破綻するかもしれない。ヴァリァスを利用できる化け物を使役してるなんて世間に知られたら終わりだしな」

「いくらなんでも考えすぎだぞ。親切にも昇降口まで送ってくれたじゃないか」

「お前……月海の味方なのか?」

俺はドスの効いた声でセイエイに問い詰めた。

「ひっ!ち、違うぞ。僕はただ事実を述べたまでだっ!」

「誰がなんと言おうとも構わない。俺はアイツを極力避けて行動するまでだ」


(実際、誰かが俺たちの会話を盗聴しに来た。当分は警戒を怠ることはできそうにないな……)


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