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侵食世界「ヴァリァス」  作者: 弱十七
第二章 「四色の瞳」
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第三十八話 「麒麟児、頭角を現す」

次に目を覚ました時は病院のベッドだった。

「……くぅ……すぅ……」

誰かの寝声が聞こえる。


(誰かが寝てる……?)


俺はカーテン越しに入ってくる陽光を手で隠した。

右を向くと如月さんが丸椅子を三つも並べてそこに寝ていた。

「寝相良すぎだろ……」

「別に寝てないけど」

突然彼女が喋りだした。


彼女の策略にまんまと引っかかってしまった。


「んん……あぁ……久しぶりに熟睡できた」

「やっぱり寝てたんじゃないですか……」

「最近は夜中に起こされることが多かったからね」


まだ眠いのか、目を擦っている彼女に俺は問いかけた。

「……そういえば、如月さんは何しに来たんですか?」

「ん……別に用なんて無いけど」


マジで何しに来たんだ、この人。


「……ホントは違う。君に……いくつか伝えておきたいことがあったの」

彼女は急に声のトーンを落とし、目を瞑った。

「ちょっといいかな」

「何がですか」

「ここじゃ、少し言いにくい内容だから。できれば屋上とかで話せないかな」

「医者さえ許可を出してくれれば大丈夫ですよ」


すると如月さんは躊躇いなくナースコールを押し、看護師を呼びつけた。

そして車椅子に乗っけてもらうと、彼女は俺を屋上まで連れてきた。


頭に巻きつけられた包帯がすこしきつかった。


彼女は屋上のベンチに座り、その隣に車椅子を置いた。

「一応歩けるんですけど……」

「こうなったのは私の責任だから。最低限は面倒見ないと」

「それで、何の用で来たんですか。ここなら話せるんでしょう?」

「まずは……君にお礼を言いたくてね。ほら」

私服の彼女は袖を捲り、包帯に巻かれた左腕を見せた。


「怪我……したんですか」

「私が化け物の攻撃を受け止めていた時、ナイフが刺さったの。それで思わず槍を離してしまって……ごめん」

「別に謝ることじゃ……」

「そんなことない……覚えていないのかもだけど、あの時君が庇ってくれたし……」

「えっ」


俺の声を最後に会話は途切れた。

彼女は俯き、しばらく黙ったままだった。


(そんなに辛いことがあったのだろうか……)


俺が屋上の風に揺られていると、彼女は急に頭を上げた。

「ごめん寝てた」

「心配を返してください」

「えっとどこまで話したっけ……あれだ、私が刺されてからか」


 ◇


時は少し巻き戻る。


「うっ!」

どこからかナイフが如月の左腕に刺さった。

敵の攻撃を受け止めているのに精一杯だった彼女は、思わず力を緩めてしまった。


「ガァァァァァァァァァ!!!!!!!」

長槍を退けた黒イエティの爪が流れるように如月の顔に襲い掛かる。


「ぐッ……!」

その瞬間、姜椰が彼女を押しのけて自らが代わりに攻撃を受け止めた。

「神村⁉」


剣を両手で構えて攻撃を受け止めていた姜椰は横がガラ空きだった。

闘争本能で生きてきた黒イエティがその隙を見逃すはずが無かった。

「ガァッ!!!!!」


繰り出される左フック。

「させるか!」

すかさずセイエイが結晶を作り出し、攻撃を待ち構える。


パリィーーーン____。


セイエイは如月視点から見えないように結晶を作る必要があった。

かつエネルギー不足故に、強度が不十分の結晶しか作れなかったのだ。


音を立てて割れた結晶ごと、黒イエティの拳が姜椰に直撃した。

「ぐはっ!」

姜椰は吹っ飛ばされ、歩道の建物の壁に、頭から激突した。


セイエイが適応した物体は強度が格段に上がる。

しかしながら、衝撃吸収の性質は兼ね備えていない。


つまり激突してもローブ自体は無傷だろうが、衝撃はそのまま伝えてしまうということだ。


姜椰の適性は『加速』であるが故に、能力が発動されていなければそこら辺を歩く一般人と何ら変わりはないのだ。

そして能力の発動に遅れた姜椰は激突した瞬間に意識を失った。


如月はその間に起き上がり、再度槍を構える。

他の隊員も黒イエティを囲うように陣形を組んだ。


如月が動いたその時、黒イエティの体が燃え上がった。

「なっ……⁉」

普段は冷静な彼女も驚き、最初は自然発火か何かと考えた。

困惑している隊員をよそに、彼女が辺りを見渡すとあるものが目に留まった。


(あれは……私が渡したフレアガン!まさか、あの一瞬でコイツに向かって撃ったの……⁉)


思わず彼女は頬が緩んでしまった。

「道理で総隊長が麒麟児って呼ぶわけか……」


そう言っている間にも黒イエティの体はキャンプファイヤーのように燃え盛っている。

「赤月!翡翠!」

如月は二人に合図した。


それを見て二人は大砲に弾丸を入れていた。

「あれ……こうだったっけ」

「僕に任しとけって……よし着火していいよ」

「着火!」

二人は離れて耳を塞いだ。


ボンッ!!!!!!!


鼓膜が張り裂けるような音が響き渡る。

砲弾は一直線に黒イエティに向かって突き進んでいく。


ボゴッ__!!!


黒イエティの体は惨い音と肉片を発して倒れた。

「攻略完了……かな」


その後、姜椰を病院まで連れて行き現在に至る。


 ◇


「__ってわけ」

「吹っ飛ばされてからの記憶が全く無いんですが……勝てたなら結果オーライです」

「寛容な人なんだね……」

「それで残りの二つというのは……」

「二つ目は君への感謝だよ。会って間もない私を身を挺して庇ってくれたから……ありがとう」


感謝を伝える声が笑っていた。

彼女の髪が風に煽られたせいで、その横顔を拝むことはできなかったが。


「それじゃ……三つ目を教えるよ」

「はい」


(告白かな。いやなろう系の主人公じゃないんだし、そんな甘い現実があるわけがないよな)


「ちょっと昔のことになるけど……」


如月は自分の生い立ちを話し始めた。

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