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第二百二十八話 「亡き姫と天上の楼閣にて舞う」

想決は息を荒くしながら地面でのたうち回った。

「ヴァリァス……がッ!ぬぁぁぁぁ!!!!」

姜椰はゆっくりと剣をしまうと、想決へと歩み寄っていった。


(想決の体は大部分がヴァリァスで構成されている。たった今セイエイが想決(コイツ)に適応し、内側からヴァリァスを吸収し続けている。もうじきヤツの生命活動も停止するはずだが……)


「罪も無い人々を虐殺したお前を……そんな簡単に死なせはしない」

姜椰は想決の近くに来ると拳を握りしめた。そしてのたうち回って呻き声を上げている想決を何度も何度も容赦なく踏みつけ始めた。


「相棒⁉」

セイエイが驚きの声を上げる。それでも姜椰は表情ひとつ変えず蹴る足の速くする。気づけば周囲は血が飛び散り、想決の顔はボコボコになっていた。

「……もういいか」


チャキ___。


姜椰が蒼電剣を構えると同時に、想決が手を地面に手をついた。

「君らは僕を敵に回したんじゃない……!」

想決の手に血管が浮かび上がる。直後、治りが極めて遅かった想決の傷が一瞬で再生した。

「⁉」


操作式:『超欲占握(ちょうよくせんあく)』!!!!!


想決の体にドス黒いオーラが集まり始める。姜椰はすぐに下がり、周囲を目を向けると状況をすぐに読み取った。

「セイエイ、戻れッ!!!」

「神村姜椰、ここが正念場だ。君の相棒がどれだけのヴァリァスを吸収できるか見物だよ!!」

想決は半径二千キロメートル内のヴァリァスを全て吸収していた。セイエイは想決の復活を防ぐため、死に物狂いでヴァリァスを奪い続けていた。


「やめろセイエイッ!!!お前が消し飛ぶッ!!!!」

姜椰が叫んでもセイエイは出てこない。何が起こっても想決のヴァリァスを全て吸収する気なのだと察した。

「セイエイッ!!!早く戻れェーーーーッ!!!」

姜椰は喉が張り裂けそうなほど叫んだ。ついに声が出せなくなった時、反動で咳が出てしまった。

「相棒!!僕のことは気にしなくていい!!そのまま構えてろ!!」

「フハハハハハ!!!どこの馬の骨かもわからない君が僕に抗う気か⁉」


シュパァァァーーーーーーーン!!!!!!!


目を瞑っても眩しすぎるほどの極光が放たれ、姜椰がゆっくりと顔を上げると、想決の体から黒くも艶やかで神々しい羽が生えていた。

「セイ……エイ……?」

姜椰が呆然と立ち尽くしていると、目の前に黒い羽が舞い下りた。


「ごめんな……抑えきれなかった」

「セイエイ……」

セイエイはもはや原型を留めておらず、ただ遺言を伝えるためだけに存在しているようなものだった。黒い羽は最期に安らかな声で言った。

「僕はただ……責任を取っただけなんだ。Zランクヴァリァスの……片割れとして……お前の相棒として……」

「それが死ぬ理由になるかよッ!!!」

姜椰は泣きながら羽に向かって怒鳴った。すると黒い羽は塵になりながら言った。


「相棒なら……最期はあたたかく見送ってくれよ___」


姜椰は手に残った羽の感触を心の奥底にしまった。かけがえのない仲間の死を忘れることの無いように。

「……そうだよな。ありがとう……!」

姜椰は涙を拭う時、少し笑っていた。今までの思い出が彼に少しだけ笑みを作っていたのだ。


「送別会は終わったようだね!!!」

全快した想決は物理攻撃のオンパレードで姜椰を潰しにかかる。姜椰はすぐさま反応し、蒼電剣で攻撃を弾いていく。だが想決に近づくにつれて攻撃の密度も威力も上がっていく。次第に姜椰の進む足が遅くなっていった。

「操作式:『死矛』!!!」

前方からは『暗黒流星群』によって黒棒の弾幕が飛んでくる。そして『死矛』によって姜椰を取り囲むように刃が出てくる。もはや姜椰に進む道は残されていない。


「さようなら。僕の宿敵よ」

想決が刃を動かしたその瞬間、姜椰は全ての攻撃を躱した。想決は衝撃の光景に目を疑い、姜椰を目で追っていると一瞬だけ視線が合った。

「セイエイはお前からヴァリァスを奪い、それを俺に託してくれた。俺にヴァリァスを渡した時点でお前の負けだ」

姜椰は揺れるように全ての攻撃を捌き、無傷で突撃していく。


『黒曜六韜・亡姫(なき)舞天楼閣(ぶてんろうかく)』____。

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