第二百九話 「選び抜かれた最良の未来」
月海は時迷の背後に浮かんでいる砂時計を捉えた。
「砂時計……?」
(さっきはアタシの攻撃を無かったことにされた……というより時間そのものを巻き戻されたのかしら。おそらくあの砂時計は能力の発動条件。このまま絡まれても厄介だし、早めに片付けるしかない!!!)
月海は部下に手出しをしないように指示してから斬りかかると、時迷の砂時計の一つが反転した。
カコン___。
「チッ……」
「速いですね。私が戦ってきた中では無類と言っても過言ではありませんわ」
月海は砂が落ちる砂時計を見ると、時迷の能力を推測した。
「その砂時計……クールタイムなのね。戻せる時間はせいぜい数秒程度。砂が完全に落ちた砂時計の数だけ能力の発動できるようね」
「こんな早く見破られるとは……流石ですわッ!」
時迷は有り得ない速さで月海に襲い掛かる。
ガァン!!!!
「な……⁉」
時迷は素手で月海と渡り合った。
「素手で電撃剣を……」
月海も他の隊員も時迷の異変には気づいていた。
(いや……最初の一撃もコイツは素手で受け止めてたわ。それに砂時計も動いてない。これはただのフィジカルなだけ……怖気づくな!アタシならいけるッ!!)
月海はそれから何度も攻撃を仕掛け、どうにかして一撃だけでも与えようと奮闘した。
「ハァッ!!」
「惜しいですわ」
時迷に軽々と防がれると、隙だらけになった月海は思いっきり蹴っ飛ばされた。
「ゴホッ……あぁっ……!」
月海は腕で腹を押さえながら立ち上がった。
「もうアタシ一人で戦う必要も無いわ……!」
「⁉」
不意をついた隊員が時迷を突き刺す。
「紳士の振る舞いとは思えませんわ」
時迷の一撃を躱すと、他の隊員もそれに続いて猛攻を仕掛けた。
カコン___。
「戻ったぞ!」
時間が戻ったことで時迷のダメージは無かったことになった。
「そろそろ本気で行かせていただきますわ」
すると時迷は虚空に拳を振りかぶった。唐突な謎の挙動は、近年の生成動画のようだった。
カコン___。
再び時間が戻ると、隊員達の位置が変わった。
「ッ⁉」
「ン!!!!」
時迷の渾身の一撃で隊員は腹を貫かれてしまった。
「ガハッ……」
倒れる隊員を見て他の隊員は武器をしっかりと構えた。
「後ろですわ」
「!」
ドォン!!
背後を取られた隊員は遥か遠くまで吹っ飛ばされた。
標的を部下から自分へ移そうと、月海が追いかけて攻防戦を繰り広げるも、砂時計のせいで方向などが変わってしまって苦戦していた。
(この女の能力……ただ時間を戻すだけじゃないわ。対象の「状態」と「位置」と「方向」を選択して時間を戻してるんだわ。だから彼女は疲弊してる様子が無く、傷も一瞬で治る。でもアタシの傷は治ってないし、疲れも取れてない……)
「ぐぁぁぁ!!!!」
また別の隊員が断末魔を上げる。月海はその天才的な戦闘センスからある策を編み出した。
「イチかバチか……!」
すると彼女は性懲りもなく時迷へと斬りかかるのだった。
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