第二百八話 「時の経ち方」
十一月二十一日午後十一時過ぎ___。
「はぁ……」
「退屈ですか?」
「当たり前よ。一般人の避難は終わったのに、待機なんて」
そう愚痴を零していたのは月海津波とその部下だった。彼女は車の荷台に座り込んで待機していた。
「敵出現!!!敵出現!!!」
「隊長!!化け物の大群が現れました!!!」
隊員の一人が声を上げる。全員が警戒して構える中、月海だけは違った。
「ようやく来たわね……」
焦る様子も無く立ち上がると、剣に手を掛けた。
「準備運動には……ちょうどいいかしら」
ウォォォォォォォォン!!!!!!!!
狼のような遠吠えと共に化け物の眼が赤く変わる。その不気味さにも彼女が怖気つくことはない。むしろ部下たちを下がらせて我こそはと先陣を切った。
「行くわよ」
「了解!!!」
相手は一帯を埋め尽くす数、対して月海達は九人。しかし頭数が不利なのは最初だけだった。
「訓練が足りないわ」
月海の二刀流による斬撃が狼の大群を蹴散らしていく。一人で群れの中を突き進む月海とは違い、部下達は各々役割分担して戦っていた。
「あと少しね」
月海は攻撃の手を緩めるどころか、逆に加速して化け物を切り刻んでいった。最後の方は部下達は見守ることしかできず、月海が剣を振る毎に化け物の悲鳴が響いた。
「フッ!!!」
「ガゥゥ……!」
最後の化け物も盛大に切り捨てると、月海は剣を振って血を振り払った。
隊員が月海に拍手を送った。
「流石ですね」
「いつも通りよ」
キィン!!!!
異変に気づいた月海が隊員に向かって剣を振るった。
「何者?溶け込み過ぎてて気づけなかったわ」
「ちょっと……急になんですか。部下に襲い掛かるなんて……」
隊員を名乗る女は月海の攻撃を弾いた。
「アタシの隊にアンタのような顔はいないわ。それにアタシの攻撃を受け止められるのもおかしいわ」
「フフン。自分の腕に自信があるのですね」
「アンタが『互』の刺客なのはわかってるのよ。死ぬ前に名前ぐらい言ったらどう?」
すると女は手で口を隠した。
「フフン。自分の腕に自信があるのですね……」
(気味が悪いわ……存在が空気だったし文脈を汲み取った会話さえもできてない。この女が『互』なら間違いなく特殊能力を持っているはず。それさえ気をつければ……)
月海らが様子を伺っていると、女は突然夜空に向かって両手を差し出した。
「時迷巡……これより最良の未来を選択致します」
「……スピってるのかしら。頭にアルミでも巻いてから来るといいわ!!!」
月海が斬りかかり、刃が時迷に向かっていく。
フィン___!!!!
「?」
月海は硬直した。
「今……何が……?」
「おや……私を斬らないのですか?」
「何したの……もしかして、それがアンタの能力……ッ⁉」
時迷は敵意の欠片も無い笑顔を浮かべた。
「はい、今のは最良の未来ではありませんでしたので……」
彼女の背後には砂時計が三つ浮かんでいた。
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