第二百六話 「強者に相応しいセリフ」
戦闘態勢に入った想決を前に小春が一歩前に出る。神楽坂はそんな彼女の前に鎌を構えた。
「救威、下がれ。お前の敵じゃない」
「いえ、彼は私の敵ですから。この機会を逃すわけにはいきません」
言っても下がる気配を見せない彼女に、神楽坂は少々呆れた様子を見せた。
「自己責任だ。私はお前を助けないと、先に言っておく」
相田想決はゆっくりと彼らの方へと歩み寄っていく。
「来るぞ。全員構えろ」
「操作式:『黒星』」
突如として地面に複数の黒い球体が出現した。それらは固体ではなく、竜巻のように渦巻いていた。
危険を察知した神楽坂が黒い渦から脱出すると、地面が綺麗に抉れた。
「本当に鈍いね。今ので大半がやられるとは思わなかったよ」
想決の言う通り、二番隊と十番隊それぞれの隊員の半分が『黒星』によって即死してしまった。
「当たれば即死だが、発動までには時間があるようだな」
「全てにデメリットはあるさ」
そう言うと想決は周囲にいた隊員に襲い掛かった。負傷していた隊員含め、想決相手にまともに戦えるはずもなく、あっという間に全員殺されてしまった。
「殺し損ねたか……」
生き残ったのは神楽坂と小春、そして三名の隊員だけだった。
「神楽坂さん、逃げて下さい。ここは私が時間を稼ぎますから」
「お前には無理だ。それは弱者に相応しいセリフではない」
神楽坂が鎌を出し、想決を睨む。
「救威、このことをできるだけ全員に知らせろ。そして、自分の命を最優先にして生きろ」
立ち上がろうとする小春だったが、さっきの攻撃で左手首から先を失っていた。
「うっ……神楽坂さん……!」
弱弱しくその名を呼ぶも、彼は応えてくれなかった。たちまち神楽坂と想決の戦闘が始まり、小春ら四人は撤退を余儀なくされた。
◇
「フッ!!!」
神楽坂の一振りは、一歩間違えれば全生物にとって致命傷になる。想決もそれがわかっていたため、防御や回避には全神経を使っていた。
「使いづらそうだね」
想決は神楽坂に向かって手を翳す。
「ッ⁉」
神楽坂は急ブレーキをかけ、即座に横に避けた。
「操作式:『空間侵食』」
目に見えない衝撃波が空間を伝い、その果てにある建物を真っ黒に染めた。
「そうか……君はあの日見てたのか。集約所で訪れた時に使ったのを忘れてたよ」
想決はあえて操作式を使わずに神楽坂と接近戦をすることを選んだ。
キィン!!キン!!ガァン!!!!
想決は地面から結晶を生やし、神楽坂の一挙手一投足を阻害した。
「生成速度が遅いから攻撃には使えないけど、妨害なら結構に役に立つね」
「フンッ!!!」
神楽坂は鎌を一振りして結晶を全て粉砕した。その直前に想決は空へと位置を移動させていた。
「遊びは終わりだ。逃げた四人を殺さないといけないんだ」
(空間侵食!!!)
想決は隙だらけの神楽坂に手を翳す。
「ッ!」
スバァン___!!!!
前触れもなく相田想決の右腕と右翼が斬り落とされた。
「なに……ッ⁉」
「……」
想決は地面に激突し、結晶で神楽坂が距離を詰められないようにした。
(バカな……⁉なんだ今の斬撃は……!!!周囲に隊員の気配は感じなかった。それほど遠くからこの僕の体を軽々しく斬ったというのか……⁉)
想決は息を荒くし、右腕と右翼を瞬時に再生させた。
「フフッ、特殊部隊も切り札を用意してたのかな?」
「……」
すっかり本気で相手する気になった想決は、挨拶感覚で神楽坂に蹴り、遥か遠くまで吹っ飛ばした。
「まだ終わらない!!」
瞬時に神楽坂の近くまで移動し、並走すると操作式を発動させた。
「操作式:『死矛』!!!」
神楽坂が着地すると同時に、斬撃が容赦なく襲い掛かる。その威力は地面に焼き痕を残し、電柱を真っ二つにするほどだ。
「余裕そうだね……!」
「操作式:『黒星』『空間侵食』『空間捻転』!!!」
想決の多重操作式により、たちまち周囲が技の効果に包まれた。
『黒星』が神楽坂の逃げ道を狭め、『空間侵食』が神楽坂を追い込んでいき、そして『空間捻転』が最終地点に待ち構えていた。
そして想決の思惑通り、『空間捻転』の発動が完了すると同時に、神楽坂が操作式の範囲内に進入した。
「フフ、さようなら。よく頑張った方だよ」
「!」
その瞬間、『空間捻転』が空間を捻じ曲げ始めた。
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