第二百四話 「質量と数の暴力」
時雨は急いで物陰に隠れ、刺さった刃を押し戻して抜いた。
(止血を……いやそれよりも敵の位置を把握して皆に知らせる方が先か。まさか不意打ちを食らうなんて……攻撃された後も気配を感じなかった……!)
時雨は自分に刺さった剣を片手に刺客の位置を探ることにした。
「痛い……」
トスッ___。
時雨の顔の真横にナイフが突き刺さる。
「やっぱり集中できてないなァ⁉」
死角から襲いかかるも、時雨の体に当たった瞬間刃が砕けた。
「ハッ!!!」
「ウッ⁉」
時雨の拳が刺客にクリーンヒットする。刺客は肋骨の数本がイカれ、衝撃で壁に激突した。
「フィジカルでこれか……ッ!」
「不意打ちしか芸が無いの?」
「なめてんのか……?」
刺客は素早く起き上がると、ナイフを自分の前に浮かびあげた。
「操作式:『仮想具現』!!!」
刺客の前に浮かび上がっていたナイフの数が数本に分裂した。それぞれのナイフが青、赤、黄、緑などのカラフルな色を纏い、刺客を中心に回転し始める。
「⁉」
時雨は自分の目を疑った。さっきまで回転してナイフの数が指数関数的に増えていたからだ。刺客は時雨の表情を見るなり言った。
「これで終わりとでも思ったか⁉」
ナイフは数えられないほど増えると、空間一面を埋めるように配置されていった。
(ここはゲートエリア……ろくに身を隠す場所も無い。この攻撃の威力がわからない以上、『硬体』で防ぐのはリスクが高いかも……)
「なら……!」
時雨は急いで近くにあった柱の影に移動した。
「ハハハハハ!!!物陰に隠れたところでこの攻撃からは逃れられんぞ!!!!」
ナイフは空間全域を猛スピードで駆け抜けた。
ゲートエリアにあったものは粉々になり、柱も窓ガラスも建物全体が木端微塵になってしまった。そして一直線に進んだナイフは地平線の果てに潜っていった。
「はあ……はあ……フン、流石にあの女でも避けきれまい。床や天井を破壊した形跡もないから、攻撃はもろに食らったようだな」
刺客は息を切らし、周囲を見渡した。
「あの女の死体は……そうか、吹き飛んだから見つからないか」
ドタドタ___!!!
特殊部隊の隊員が刺客の姿を捉えるなり叫んだ。
「隊長をやったのはお前か!!!」
時雨の部下が戦闘音を聞いて駆けつけたと悟ると、刺客は懐からナイフを取り出した。
「お前らを殺せば……ここは制覇完了か。あともう一踏ん張りといくか」
刺客とSランク六番隊で戦闘が起こる。最初は見慣れない攻撃に苦戦していた六番隊だったが、普段の戦闘経験から刺客の攻撃パターンを学習していた。
「ウラァ!!!」
刺客は隊員の一人から一撃をもらったが、すぐに態勢を整えた。
「……危ないな。もろに食らえば死んでたぞ」
パァン!!!
刺客がナイフを取り出した時、突然左腕が宙を舞った。左腕は力無しにナイフを離し、床には「ボスッ」という肉片がぶつかる音と、静かな金属音が鳴った。
「バカな……!」
刺客は即座に振り返り反撃を試みるも、逆に胴体にナイフを数本刺された。
「貴様……ッ⁉」
「破ッ!!!」
なぜか生き残っていた時雨が右足で刺客を蹴り上げる。
容易く天井を突き破り、夜空に飛ばされた。彼女は空いた穴から刺客の姿を捉えた。
「これ……返すね」
時雨の投げたナイフが刺客の首に突き刺さる。数秒後、大きな音とともに刺客の死体が落ちてきた。
「隊長!!!」
部下たちが急いで駆け寄ると、怪我した時雨の手当てを始めた。
「み、右腕が……」
「ああ、さっきの攻撃で無くなっちゃって……」
時雨の顔色は明らかに悪くなっており、他にも切り傷がいくつかあった。
「まさか私の『硬体』が破壊されるなんてね……」
「これで止血は終わりました。とりあえず隊長は極力戦闘を控えて下さい。スプレーもほとんど残っていないんです」
隊員は止血スプレーをしまうと、時雨を安全な場所まで連れて行き、椅子に座らせた。
「誰か……甘い物持ってないかな?眠くなってきちゃった……」
「甘いものですか?んと……グミと炭酸抜きコーラならありますよ」
「流石だよ。ありがとう……」
時雨の護衛にあたる隊員は周囲を警戒し、残りの隊員は空港内を見回りに行った。
時雨はコーラを一気飲みすると、体を仰け反らせた。
「あぁ……!!やっぱり美味しい!」
◇
時は少し戻り、十一月_二十二日午前零時。
神楽坂紫影率いるSランク二番隊と、救威小春率いるSランク十番隊は戦闘の流れにより合流し共に行動していた。
「救威といったか。お前はなぜ十番隊の長になった」
「私ですか?仲間に推薦されました」
「仲間の推薦……?誰だ、お前の仲間にそこまで権威のある者がいるのか?」
救威小春は教えるか迷っていたが、自分を推薦した者の名前を出すことにした。
「神村姜椰という少年です」
「……なるほどな」
神楽坂は納得したような返事をした。
そんな雑談をしていると、目の前に巨大な化け物が数体現れた。
「話は中断だ。先にコイツらを始末するぞ」
「はい」
全員が武器を構えて化け物に臨む。
そしてそれを傍観している男がいた。
「神楽坂に……見ない女だ。まあいいか、あれがやられたら僕が片付けよう___」
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