第二百三話 「買収不可」
「すごい一撃だったな!」
セイエイは歓喜の声を上げた。しかし姜椰は右手をブンブン振っていた。
「……どうかしたのか?」
「右手が痺れただけだ」
姜椰は右手の違和感を振り払い、今川の到着を待った。
「全然来ないな……もしかして瓦礫に巻き込まれたか?」
「如月がいるんだし、多分大丈夫だろ」
少し嫌な予感がしていたが、程なくしてこちらに向かってくる人影が見えた。
「あ、今川さん。無事ですか?」
「神村こそ。とんでもない破壊音だったけど、怪我はしてないか?」
姜椰は二つの死体を指さした。
「そこにいる女と、その直後に襲ってきたやつの相手をしただけです。怪我はほぼしてません」
殿の如月が後ろからやってきた。
「両腕が無いこの子、特殊部隊の隊員証を持ってた」
彼女の左手には、あの少年のものと思われる隊員証があった。
「Bランクか。もしかして……内通者だったのか?」
今川の一言に皆は顔を向けた。
「これだけの規模になれば内通者の一人や二人はいてもおかしくない。どうせ私達も『互』に何人か送り込んでるんじゃないの?」
彼女を除く全員が息を呑む。
「この前も裏切者がいたわけだし……ね?」
如月は少年の隊員証を投げ捨てると、戦闘音がする方へ歩き始めた。
「行かないの?」
「いや行こう」
今川は如月を追い越し、皆もそれに続く。最後は如月が後を追う形でその場を去った。
◇
一方、その頃冬野時雨率いるSランク六番隊は羽田空港に来ていた。
人体適応によって急遽全便が運航停止になり、人が集中してしまいそこにヴァリァサーがさらなる混乱をもたらしていたからだ。
「私が化け物を倒すから。他は旅行客の避難を優先して」
「了解!」
時雨は空港に蔓延るヴァリァサーを、まるで通り魔のように瞬殺していった。
「数が多いなあ……にしてもお腹減った」
流れるように化け物を始末していくと助けられた一般人たちは感謝の声を上げた。
ドンッ!!!!
時雨は後ろから何者かに吹っ飛ばされた。打撃を受けた瞬間に、彼女は『柔体』へ能力を切り替えたおかげで衝撃の大部分を吸収できた。
「誰……」
振り返ると、『互』の刺客が数人立っていた。
「冬野時雨だな?」
「そうだけど……」
すると刺客の一人が懐をゴソゴソと探り始めた。
不意打ちを警戒していた時雨だったが、刺客が出したのはスナック菓子だった。
「くれてやる」
時雨は爆発物の可能性を考慮して避けたが、スナック菓子の袋には何も起きなかった。
「我々につけば飽きるほど食わせてやる。それは前金だ」
「いらない」
次の瞬間、時雨が先頭に立っていた刺客の頭を吹き飛ばした。
「私、そんな軽い子じゃないの」
「このクソガキが!!!」
刺客が一斉に襲い掛かるも、斬撃は『硬体』によって防がれ、打撃は『柔体』によって衝撃を逃がされて時雨には一切のダメージが入らなかった。
「狂戦進乱」
時雨の反撃によって刺客は体の大部分が欠損し、モザイク必須の惨状と化した。
「もう終わりかな?」
ドスッ!!!!
「⁉」
時雨の胸から刃が飛び出ていた。刃の先端が下に傾き、血が流れる伝い滴った。
「空腹で集中力が切れたか?」
「……ッ⁉」
時雨が振り返ると、そこには両手にナイフを握っている男が立っていた。
お読みいただきありがとうございます!
⇩からブックマーク追加、★★★★★をお願いします!あなたの評価がモチベに繋がります!
できるだけ毎日更新しているので、チェックの方よろしくお願いします!




