第二百二話 「それを上回る一撃を」
「さて、邪魔者はいなくなったよ。戦ってる最中に割り込まれると困るからね」
少年はゆっくりと、そして堂々と歩き出す。
姜椰も動じることなく剣を構える。
「お前の目で……俺を追えるといいな」
加速・最高倍率___。
ほんの一瞬だけ姜椰の姿は世界から消し飛んだように見えた。
そして直後、彼の姿が少年の背後から現れる。
「……全然目で追えるって」
キーンッ!!!
少年は姜椰の一撃を防ぎ、すぐに距離を取った。
「お兄さん、若いのに速いね。あなたもこっち側の人間なのかな?」
「こっち側?多分俺はお前と違う。ごく普通の人間だ」
少年は姜椰をじっくりと観察した。そうして少年は先程から覚えていた違和感の存在を確信した。
「なるほどね……やっぱりあなたはこっち側だ」
少年が姜椰に向かって襲い掛かる。
「あなたにこれを捌き切れるかな⁉」
(なんか見えるな。突進しながら周囲に斬撃を纏わせているのか。しかし俺は無理に近接戦をする必要は無い。代わりに……セイエイが相手してくれるからな!)
姜椰は迎え撃つフリをして、急に方向を転換した。
「戦いで無理をするのは禁忌だ。俺がお前の相手に近距離で戦うのは分が悪い。だから代わりにそれをくれてやる」
「⁉」
ドスッ___!!!
地面から飛び出した結晶が少年の体を串刺しにした。
すぐに血が伝い、少年はすぐに斬撃で結晶を破壊した。
「ヴァリァスの結晶……⁉なんで……人間はヴァリァスを操れないはずじゃ……!」
少年は刺さった結晶を引き抜き、すぐに傷を再生させた。
「でも急所に一つも当たってないよ。ちゃんと殺す気ある?」
「……そうか。お前は『互』の一員だったな」
「あ、そういえば名前教えてあげるよ。あの世で誰に殺されたか教えられるようにね」
「興味ない。第一、俺はやられない」
姜椰は電撃剣をしまい、蒼電剣を引き抜いた。
少年は姜椰が武器を切り替えたことに疑問を抱いた。
「剣、なんで変えたの?」
「お前を斬るため……と言って理解できるか?」
「へえ……それくらい自信ないとね」
姜椰を冷笑した次の瞬間、見えない斬撃が姜椰とその背後にあるビルを両断した。
「使う出番も無かったね。あなたじゃ遊び相手として退屈」
ビルが轟音を立てて倒壊する。舞い上がった煙を背に、姜椰は立ち尽くしていた。
「俺もだ。子供相手に手加減を強制されるのは疲れる」
「ッ……⁉死んでない……⁉そんな、確かに当たったはずだッ!!」
少年は瞳を震わせて取り乱す。
「お前の力を利用させてもらう……!」
ローブから黒い煙が出る。それらは全て姜椰の体の中に染み込んでいった。
「まだ別の技が……⁉」
『黒曜六韜・無果晴天』___!!!!!!!
姜椰が剣を引き抜くと、真っ黒な刃が姿を現した。
そして次の瞬間、周囲の建造物が一切の音を立てずに切れた。頂点前の加速寸前のジェットコースターのように、一瞬現れた静寂の存在を掻き消すように轟音が鳴り響く。
「これでも退屈か?」
「……」
少年は何も言葉を発することなく、その場に立ち尽くしていた。両腕は欠損し、心臓を始めとする多くの内臓が再生できないほど大破してしまい、わずか数秒で大量の血が流れ出ていった。
少年はそのまま倒れてしまった。
「やはり子供の相手は苦手だ」
姜椰はその場に座り込み、呼吸を整えた。
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