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侵食世界「ヴァリァス」  作者: 弱十七
第一章 「枝分かれする運命」
17/55

第十五話 「前哨戦」

時は過ぎ去り、七月上旬__


今日がその元創祭当日。

丸一日かけて優秀な生徒を選抜し、将来のキャリア作りも兼ねている重大なイベントだ。

そんな中、真っ先に始まったのは射撃だった。

「そういえば申奏は銃専門だったな」

「Sランクの実力を見せてあげる」

「頑張れ」


さて、こちらはクラス対抗戦の準備をしないと。

だって電撃剣の充電が満タンであることを確認しないと安心して試合に臨めないからな。


俺が校庭の隅っこで剣を眺めていると、見覚えのある人影が現れた。

「神村か、こんなとこで何してるんだ?」

「あ、ええ……?」

顔を上げると以前に会ったSランク部隊隊長がわらわらと集まっていた。


「今日は僕らで君たち、将来有望な卵を見に来たんだよ」

「今川さんと……九番隊の城城に、十番隊の如月さんまで……」

「僕らは世代こそ違えど、ここが母校だからね。故郷に帰ってきたような感覚だよ」

「私は違うんだけど」

城城が訂正した。


「なんか、今から射撃があるみたいですよ」


それを聞いた城城が俺と今川の手を引っ張って申奏の射撃を見に行った。

「誰が出てるんだ?」

「申奏とかですね……」

すると城城と今川が笑い始めた。

「ハハハハハ!!!終わったな、あいつら」

「彼女がいる中で射撃を競うなんて僕も同情するよ……フフッ」


(なんだ、こいつら……)

やっと笑いが冷めてきたのか、今川が腹を抱えながら言った。

「ダメだよ……彼女は隊の中で最も銃の扱いが上手いんだから。試合にあんなの入れてもバランスブレイカーにしかならないよ」


間もなくして射撃の結果発表の声が聞こえてきた。

「一年六組、臣桜申奏さん!驚異の全弾命中です!」

そのアナウンスを掻き消すほどの拍手があちこちから鳴り響いた。

「な?」

「Sランク隊員って伊達じゃないんですね……」


「当たり前だ、私が申ちゃんを訓練したんだからな!」

城城が誇らしげに言った。

「城城も拳銃使いなのか?」

「まあね。そういえば、あの時私に抱きついた恨み、まだ忘れてないからな!」

「あれはお前から落ちてきたんだろうが……」

「あれが初めてだったのに!」


それを聞いた今川が俺の頭を軽く殴った。

「神村~?未成年はあれほどアウトだって言ったのに……お父さん、悲しいよ」

今川はあからさまな噓泣きをした。

「前もこのくだりやったような……あと俺に父親はいません」

「……それはすまなかった。僕もいないものでね」


そこに申奏が戻ってきた。

「三人揃って何話してたんですか?」

「申奏の腕前を見に来たらしい。君がバランスブレイカーだって笑ってた」

今川が即座に俺の言葉を修正した。

「あいや、申奏が銃の扱いが上手すぎてバランスブレイカーだよねっていう……」

「今川さん、修正できてないです」


そこで話していると、後ろから騒ぎ声が聞こえてきた。

「なんか騒がしくないか?」

振り返ると、女子の先輩たちが今川をみてはしゃいでいた。


モテる男はつらいよ__。


こう言い残して今川は腐女子たちの大群に単騎で突撃していった。

「姜ちゃん、ドンマイ」

「姜椰、ドンマイ」

「二人して慰めてくれなくていい。あれ?目から水が……」


くるっと後ろを見ると今川を軸として綺麗に円が描かれていた。

「サインくださーい!!!」

「ウチらと写真撮ってくださーい!!!」

「キャァァァァァ!!!!!」

「わかったわかった、一人ずつね」


俺は申奏と城城に向き直った。

二人揃って俺に対して軽蔑に似た視線を送っていた。すると城城が口を開いた。

「(今川)晴斗(せいと)がうらやましい……、なんて思ったんでしょ」

「んなわけ……」

俺はもう一度後ろを見た。女子たちは黄色い悲鳴を上げている。


「んなわけ……ない。きっと。多分。おそらく……」

「まあ姜椰は誰かに囲まれるのが好きじゃなさそうだからね」


申奏がカバーしてくれたのに対し、城城は俺に容赦なく暴言を吐いた。

「フンッ、これだからヘッポコドジ陰キャは」

「城城、俺に()()()を奪われといてその発言は酷いぞ」


申奏は意味がわかっていないようで、なんとも言えない顔をした。

彼女の頭の上には髪の本数よりも多くクエスチョンマークが量産されていた。


城城と俺は申奏から距離を置き、耳打ちをした。

「やめてよ、申奏ちゃんは純粋無垢(ピュア)なんだから」

「どうせ知らないと思ったから言っただけだ。でもネットには詳しいからそういうことを理解している可能性は十分にあるのか……」

「お〇わっかとか知ってたら大惨事になるからくれぐれも要注意でね。ヴァリァスの化け物なんかよりも人間関係に気を配らないと人生詰むことになるから」

「わかってる。でも……城城って見た目は幼そうだけどお〇わっかを知ってるんだな。どこで知った?」


「ネットサーフィン」

「一体、何を検索してたんだ……」

「時代はティ〇ダだよ」

「一旦止まってくれ。それ以上踏み込むと規制音掛けないといけなくなるから」

俺たちは何とも言い難い顔をして申奏のとこに戻った。


「何の話してたの?」

純粋なる好奇心のままに彼女は俺たちに、その眼差しと質問を投げた。


(ダメだ……俺には申奏の心を穢すことはできない!)

(ダメよ……私には彼女の心を穢すことはできない!)


俺と城城は目を合わせ、思考を共有した。

同じ系統の人間は目を見れば相手の考えがわかるのだ。


ー(姜椰と城城の心の中)ーーーー

「なんて誤魔化せばいい⁉」

「私に聞かないでよ!そっちが適当に濁せば大丈夫!」

「わかった、俺の演技力を見るといい!」

「任せたぜ、相棒イケボ

ーーーーーーーーーーーーーーーー


俺たちは情報共有を中断し、申奏に言った。

「これからやるクラス対抗バトルのアドバイスをもらってたんだ。少しだけ緊張してるからさ」

「え⁉そんなのがあるのか⁉」

城城は興味津々そうに、斜め十五度ぐらい前のめりになった。


(おいこのメスガキ。よくもボロを出してくれたな)


俺が睨むと、城城は大急ぎで訂正した。

「ああいや、知ってたよ。うん、知ってた。だからコイツ(姜椰)にアドバイスをあげたの」

そう言うと、申奏は微笑んだ。なんとか誤魔化せたようで俺は胸を撫でおろした。


(危なかった……一番気を配らないといけないのは城城だったな。以後気をつけよう)


「それじゃ、二人で仲良くね!」

城城は手を振って去っていった。


「クラス対抗バトルまであと一時間くらいあるし……」

「(クラス対抗バトルが)始まるのが一時でしょ。お昼ごはんの時間だし、何か食べない?」

「満腹の状態だと動きにくいしな……先に食べててくれ。俺はこのままで行く」


そして午後一時、俺にとってのメインイベントが始まった。

(俺たちは最初に五組とやるのか……)

コートの向こう側には四組の代表者が肩を並べていた。


しかしこちらには俺含めて二人も部隊に所属している人間がいるから無問題(モウマンタイ)

相田も俺も同じCランク(姜椰は先日の里弦駅での功績でDからCランクに昇格した)だから僅差で負けるようなことはない、と信じたい。

なんなら俺に出番が回らずに試合が終わってくれるのが理想ではある。


そして一回戦の火蓋が切られた。

俺は後ろから戦闘の一部始終を見ていたが、相田以外の生徒たちもある程度の強さを身に着けていて

問題無く勝利できた。というか全員が弱すぎた。


それから二回戦、俺たちは四組と戦うことになった。

結果は二人やられたものの、あっさりと勝てた。

相田は自分の出番がなかなか回ってこないことに苛立ちを覚えていた。

「まだか……」


(気が立ってるな……)


続いて優勝候補であるシードの二組と戦う権利を争う準決勝。

「相手は七組だ。全員攻撃パターンが単調だから、落ち着いて見れば簡単に倒せるはずだ」

相田はいつになくクラスメイト達に優しく助言していた。


(ここは相田に任せて、俺は武器の用意でもしておくか……)


俺が剣を後ろ腰につけ戻ると、試合がすでに始まっていた。

戦っているのは相田と七組の大将だった。両者動きが素早く、武器の風切る音が心地良いほど聞こえてきた。成り行きを見守っていると相田が、敵を倒してしまった。


(次が……決勝戦か)


決勝戦が始まる前、俺は申奏と話をしていた。

「それ(電撃剣)使うの?」

「出番が来たら。多分、相田が適当にやってくれるはずだ」

「今日のために練習したの?」

「まったく」


【間もなく、クラス対抗バトルの決勝戦が行われます。選手は校庭にお集まりください】


「それじゃ、行ってくる」

「うん、気をつけて……」


そして決勝戦が始まった。

俺たちが戦うのはシード権を持つ二組だった。


聞いた話だと、大将の小林とかいうヤツがイカれるほど強いらしく戦闘慣れしてるとのことだった。

「向こうの手はずは整っているな……?」

「はい、手加減はします」


どこからか怪しい会話が聞こえてきた。

(手筈……誰かが何か画策してるのか?)

周りを見渡したが、不審な点は見つからなかった。聞き間違いだろうか。


気づけば、相田と小林(大将)の戦闘になっていた。

勝敗は一瞬で決まった。小林が蹴りを入れると、相田は受け身もろくに取れず……どちらかといえば取らなかったようにも見えた。

審判が勝敗を決め、俺の出番が来てしまった。


おかしかったのは受け身すら取らなかった相田が勝敗が決まった途端に起き上がったことだ。

いかにも八百長っぽく見えたが、俺が戦いたくないがために文句を言ってると思われたくなかったので、

大人しく戦場に赴いた。


相田はそれを見て笑みを浮かべていた。

「今、お前の目の前にいるのは俺と同じ部隊の人間だ。自分の無力さを痛感して殺されるといい」


(なるほどな……最悪だ)


俺はまんまと罠に嵌められた。

端から相田は俺とこの大将を戦わせて、勝負という状況を利用として俺を消そうと目論んだということか。道理で相田が吹っ飛ばされてもピンピンしてるわけだ。


それをわかった上で、俺は前に出て敵将と挨拶を交わした。

「お前が聞いていた大将か……そんな細い剣一本で俺と渡り合う気か?」


「……」

雲一つない青空と観客が両者を見守る。これでこの学校での「最強」が決まる。


「一撃で仕留める__!」

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