第百三十三話 「なんか気まずい」
鹿張の訃報を聞いた後、想決はすぐに行動を開始した。
(以前に今川や神村たちが『ARL』に侵入して以来、再びあの連中が来ることを恐れて一切あの建物には近づいていなかったが、そろそろ篠宮博士もアレが完成したはず。久しぶりに顔を出してみるか……)
想決は最悪の事態が起こらないことを祈って『ARL』まで足を運ぶことにした。
◇
『ARL』は表向きには、ヴァリァスを研究している有名な研究所、ということになっている。だが、その裏では軍事運用にも似た実験を何度も繰り返している闇深い場所だ。
「篠宮博士、久しぶりだね。元気にしてた?」
「ん……?」
半年ぶりに見る篠宮博士は白髪が増えていた。顔には少しシワも増えただろうか。
いきなり想決が現れて困惑しているようだ。
「坊ちゃま……!急にどうしたのですか……⁉」
篠宮博士は想決が無事であることに涙腺が決壊しそうになったいる。いや実際に少し零れ始めた涙を、そのしわっしわな白衣で拭っていた。
「例のアレの進捗を確認しに来たんだ。もう完成てるなら欲しいんだ。一刻でも早く実行したいからね」
「ああ……あれですか。最終確認を済ませるのにあと一ヶ月ほどかかりますが、それが終わればいつでも使えるようになりますよ」
篠宮博士はパソコンで何かをし始めると、想決に向かって画面を見せた。
「こちらで間違いないですか……」
想決は食い入るように画面を見る。その瞳孔はとても大きく開き、それが彼の渇望を表しているようでもあった。完成間近と聞いて興奮しているのか、机に乗せている両手が小刻みに震えていた。
「そうそう……!これだよこれ!ハハハ……これがあれば僕は……!」
想決は内心超ハイテンションになったが、必死に笑顔を堪えた。
「完成が待ち遠しいね。ところで、このことは誰にも漏らしてないよね?」
「ええ、それはもちろん……」
「ふ~ん……そうか。安心したよ」
想決は満足そうに頷くと、博士に応援の言葉をかけて研究所をあとにした。
「いいね……あとは越津に……」
時は一か月後。その時が来れば、人類史の革命が始まる。
◇
今日は如月さんと久しぶりに任務に行く日、そして今川さんと初めて任務に取り組む日でもある。
少し気まずいのもあるが、俺が二人と初めて出会ったあの日に比べてはるかに成長できたことを見せるいい機会でもある。
(できるだけ彼らの足を引っ張らないように。余裕があれば如月さんのカバーもできると尚良し、といった感じかな)
俺は早速今川さんと合流し、他の隊員たちへ軽く挨拶を済ませた。
今川さんは「蒼花はもう少しで来るから待ってて」と言って、武器の点検をし始めた。
(今日はいつもみたいに現場で集合ではなく、六番隊訓練場で通報が入るまで待機すると言った感じか。まあしかし、現場で集合するのは本来なら緊急時だけ。あれが通常なのはおかしいのだ)
「お待たせ。ああ、君も来てたんだ」
槍を片手にやって来た如月さんに、俺は「はい。またよろしくお願いします」と返した。
彼女は俺の向かいの席に座ると、何を考えてるかわからない目で俺を見つめ始めた。気まずいから彼女と視線が合わないように、自分の電撃剣を意味もなく触っていたが、やっぱり視界の端の方から見ると彼女が俺を見ているように思える。
「……」
俺は自然を装ってゆっくりと顔を上げる。案の定、彼女は俺を見ていた。
「……どうかしましたか」
「別に。君が電撃剣ばかり触ってるから触り心地いいのかなって」
「ほ、ほう…………」
(ほらな。気まずくなった。俺だって別に触りたくてこんなベタベタ触ってるわけじゃない。ただ、俺はこうなることがわかってたから触っていただけなんだ!)
「……触りますか?」
「それ?ああ、一度近くで見てみたかったんだよね」
俺が剣を差し出すと彼女はそれを受け取った。
鞘も持ち手も、お世辞にも柔らかくもないし表面が滑らかなわけでもない。触り心地がいいはずがないのに。
(ああ……早くヴァリァス出ないかな。一秒でも早くこの苦しい空間から出たくてしょうがない)
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