第百三十話 「あの日の戯言」
「あれ……神村?」
我が家にいる申奏と連絡しながらホームで電車を待っていると、懐かしい声が俺の名前を呼んだ。
如月さん……?
「……!」
「久しぶり。元気にしてそうで何より」
紫陽花の三色のような目に俺の姿が映る。右目は真っ黒な眼帯をつけており、左腕の裾はひらひらと風に靡いていた。
「俺も会えて嬉しいです。この前に病院で少し話して、それ以来でしょうか」
「私も君が活躍してると風の噂で聞いたよ。前に比べて成長したって、一目見てわかった」
彼女が俺を褒めてくれて素直に嬉しくなった。
「それは如月さんも同じです。何があっても屈しないその姿勢は今でも見習ってます」
「ありがとう。それはそうと、私と組むって約束……覚えてる?」
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これは今からおよそ半年ほど前のこと___。
俺は彼女のお見舞いに行き、軽く言葉を交わした。そして黄月さんと部屋を出る時に、たしか俺はこう言った。
必ず成長して……如月さんを退屈させないようになって帰ってきますから____!
扉を閉め終えるまで彼女は俺に向かって優しく微笑んでいた。
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「覚えてたんですか」
「もちろん。で、返事はどうかな」
「……」
(まだ俺の配属先が決まってない以上は俺が勝手に組むなんて言うのは大丈夫なのか……?無いとは思うが、まさか規律違反なんてことになってたら面倒だし、それ以前に駅のホームで決めることではないな)
「えっと、少し返事は待ってもらえませんか。まだ配属先が決まってないんです」
そう言うと彼女は一瞬だけどこかに視線をそらし、また俺の目へと戻ってきた。
「配属先が決まってない……?城城弥生の隊にいるって聞いたんだけど」
「その……彼女は辞めましたよ。二週間くらい前に」
「辞めた……⁉そうなの……まあきっと何か事情があったんだろうね。ということで話を戻すけど、私と組むって話は君の所属先が決まるまで延期ってことでいい?」
「はい……なんかすいません」
彼女は「そんなことない」と首を振った。前より少し伸びた髪が俺に当たりそうだった。
その後、彼女と同じ電車に乗り、俺は別れの挨拶をして電車を降りた。
◇
放課後、俺は家に一直線で帰り、勢いよく玄関を開けた。
「ただいま。申奏?生きてるか?」
リビングの方から物音が聞こえた後、彼女が玄関まで出迎えてくれた。
「おかえり。見ての通り生きてるよ」
「安心した。学校を早退しようか迷ってたんだ」
「流石に大丈夫だよ。セイエイくんとずっと喋って過ごしてたの」
するとリビングの方からクッキーを咥えたセイエイがやってきた。
「私、今日は家に帰ってみるよ」
テレビを消すと、彼女はそう言った。
「……大丈夫なのか」
「何日もいたら悪いし、学校を休み続けるわけにもいかないから」
「わかった。『互』の連中には気をつけろよ」
俺は彼女を玄関まで見送った。
「……怖いのか」
と、セイエイは俺の心を見透かしたようなことを言った。
「この後、彼女が自宅で遺体になって発見されようものなら、俺は高校も辞めて『互』の連中を皆殺しにするぐらいの覚悟を決めているだけだ」
「え、こわっ……」
セイエイが俺の肩から飛び立ち、少しだけ後ろに移動した。
「何も無いといいんだがな……」
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