第百二十九話 「三月はとうに過ぎ去った」
「相棒、もう行くのか」
「ああ。いつもみたいな寝ぼけた顔は見られたくないからな」
俺は音を立てないように玄関の扉を開けた。
昨日ぶりに見る太陽はすごく眩しい。
そろそろ五月になるというのに、朝はまだ冷たい風が吹いていた。俺は今日も「そこまで寒くないな」と嘘をつき、バサッと学ランを羽織る。風が当たると服が冷えて、そこへ体の熱が流れていってしまう。
だから適当に分厚い布で覆うのだ。
(弥生が養成高校を卒業して、それから特殊部隊も辞めてしまってからというもの、俺の配属先が見つからなくて困ったものだ……)
ん?何だ?いつ弥生が特殊部隊を辞めたかって?
そういえば読者にはまだ言ってなかったな。
◇
そう、これは十日ほど前のことだった。
あの日、俺は風呂から上がって寝ようとしていた。その時、スマホのバイブが鳴り、見てみると弥生からだった。
「なんだ。何か用か」
「姜ちゃん?私、特殊部隊を辞めることにしたんだ」
「ああ、そうか……なんだって⁉」
俺がどうにか状況を読み込むと、彼女は詳細を話し始めた。
「辞めるって言っても休職みたいなものなんだ。総隊長から籍だけでも置いておいてほしいってね」
「そ、そうなのか……何から言えばいいかわからないんだが、とりあえず応援しとく。弥生にはお世話になったし、逆に何かあったら俺のことも頼ってくれ」
「ありがとう。姜ちゃんも気をつけて。まだ『互』との決着が残ってるでしょ?」
「まあな」
(そうか……彼女、辞めてしまうのか。今更俺が何をしたって辞職を止めることはできないんだろうな……まあ家庭の事情ではよくあることか……)
「他の人には言ったのか、このこと」
「ううん、まだ。小春には今さっき言ったばかりで……」
弥生は会話の区切り方を忘れたのか、消え入るようにして発言を終わらせた。
「これからは俺と小春さんで動くのか?それとも今川さんとかと……?」
「まあ……おそらく?晴斗しか代わりはいないだろうし」
それから一時間ほど喋った後、通話は途切れた。
一番上に残された履歴がなんともいえない虚無感と通話の余韻を感じさせる。
「もう二度と、彼女と共闘することも無いのか……なんか寂しいな」
◇(現在___)
ここ最近は『互』より化け物との戦闘が圧倒的に多い。
一度だけ鹿張の残党を名乗る人物と戦ったことがあったが、それ以来は今までの通り化け物と戦う日々だった。
(次の所属先はきっと今川さんのところだ。『互』最後の幹部である越津という人物を倒さなければ、相田智影や想決と戦うのは厳しいだろう)
「そういえば……如月さんは元気にしてるだろうか」
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