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第百二十五話 「今は亡き博士が遺した情報端末」

今からおよそ三十年前、日本に国家滅亡の危機が訪れた。


それが人類史に深く名を刻んだ『Zランクヴァリァス』の出現だった。

本州の半分がヴァリァスに呑まれ、かの古村青叡までもが苦戦を強いられることになった。


他の隊員たちはヴァリァスに侵食されないように隊服を布団代わりにして睡眠を取り、食料はヘリコプターなどから落下させる形で運ばれた。

大地に血の海と死体の山が築かれるほどの死闘の末、古村青叡が勝利を収めた。


しかし、博士曰く、古村青叡はフィールドボスに決定打を与えて消滅を確認した後、再化結晶の破壊まではできなかったらしい。古村青叡本人がそう言っていたようなのだ。


ふと俺の頭に疑問が浮かび上がった。

「再化結晶を破壊できなかった……⁉なぜだ、あれはヴァリァスのランクに関係なく硬度も大きさも変わらないはずだぞ。最強だった父さんには造作もないはずでは……」

「僕の記憶によると、そのときに力尽きて気絶してしまったんだってさ」

「だがヴァリァスは消滅したんだろう?それなら誰が再化結晶を破壊したんだ……」

「そう……そこに僕が生まれた理由があるんだ___」


古村青叡が気絶した直後、何者かがその再化結晶を破壊せずに、なんと()()した。

その際に再化結晶から欠けた破片が落ちた。

その破片を入手した相田財団が、博士のところに研究材料として送りつけた。


「博士がバラバラの破片を凝縮したらフィールドボスの断片となる生物が誕生したんだ。それが僕」

「……」

セイエイは特に声に抑揚をつけることなく言った。

「つまりセイエイ……お前はZランクヴァリァスの化け物……ということか」

「僕はあくまでも片割れなのであって僕自身がZランクヴァリァスというわけじゃないぞ。ただ、この世界には今もあの大災害が暗黒の果実という形で保存されているってことは覚えておいてほしいんだ」



「あと僕が知ってるのは、ヴァリァスの正体について立てた仮説とかかな」

「ヴァリァスの正体の仮説?そんなものまであるのか」

「まあな。博士が教えてくれ……」


ウ~ッ……ウ~ッ……ウ~ッ……


会話を遮るようにスマホのバイブが鳴った。

「出動か?」

「出動のアラームはこんな静かじゃない。誰かからの電話じゃないか?」

俺がスマホを覗くと、そこには申奏の名前があった。

「申奏からだ。何かあったのか?」


俺が電話に出ると申奏の荒い息遣いが聞こえてきた。

「はぁ……はぁ……あ、姜椰……?聞こえる……?」

「ああ、聞こえる。どうかしたか?」

「あ、あのさ、急で悪いんだけど、今すぐ里弦駅まで来てほしいの……理由は会ったら話すから、お願い」

「わ、わかった」

俺はそれだけ言って電話を切った。


(いつもみたいな雑談ではない。任務の助太刀を求めるものでもない。なら一体何の用だ?少しだけ風の音が聞こえたから間違いなく屋外、かつ息が切れているから走っていたのか……)


「とりあえず里弦駅まで行くぞ。申奏がそこで待ってる」

「ケッ、これから超大事な情報を教えようってのに……」

姜椰は家を飛び出して駅に向かって走った。

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