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第百二十三話 「星雲は見守る」

場は切り替わり、弥生たちの戦場にて___。


「怪我人は下がれ!戦える奴だけ前に出るんだ!」

小春の掛け声を聞いた隊員たちは士気を上げ、鹿張の部下たちと切り結んだ。


その時、どこからともなく一人の隊員が歩いてきた。

彼は左手に鹿張の首を持ち、戦場に足を運んできたのだった。

戦場には両者の咆哮がぶつかり合っていた。


「あと少しだ!鹿張様がいらっしゃるまで、我らだけでも持ちこたえるのだ!」

そう言うのは央牟(おうむ)という人物だった。前話で姜椰に瞬殺された照旗と同じ、鹿張の側近でこの場の指揮官を担っていた。


「足音……?誰だお前は」

「コイツも鹿張の部下か……」

「なっ、剣を抜いたな!さては特殊部隊の人間か!ええい、我が刀の錆に……」

姜椰は一瞬にして央牟に近づき、電撃剣を胸に突き刺した。

「ぐわああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


央牟の悲鳴が響き渡ると同時に戦場は静寂の海と化した。

すると姜椰は首を高く掲げて言った。

「鹿張の首は俺が取ったッ!!敵討ちしたいなら全員かかってこいッ!!!!」

「何を言ってるんだ!鹿張様がそう簡単に負けるわけ……が……」

しかしその後ろには、さっき悲鳴を上げた央牟が胸に剣を突き刺されて横たわっている。

今目の前で首を掲げている人間がどれだけ強いかは、もはや言うまでもなかった。

姜椰は鹿張の首を投げ捨て、央牟の体から剣を引き抜いた。


「な、何があった……⁉」

小春が後ろの方で戸惑っていると、一人の隊員が戦場の目を独占して歩いてきた。

「小春さん、ただいま戻りました」

「か……神村……⁉お前だったのか!生きてたのか!」

「まあ……はい。怪我の手当てをしてほしくて命からがら来ました」

小春は姜椰の肩を「がしっ」と掴んだ。

「そうか。よく帰ってきた。彼女もお前が無事でいてほしいって落ち着かなくてな……」


小春さんの目は安堵の色をしていた。

血の匂いを乗せた不穏な夜風が彼女の髪を靡かせる。

俺は汗で変に束になって邪魔になった前髪をどかした。


その後、鹿張および央牟と照旗の死亡を受け入れた部下たちは大人しく降参した。


 ◇


数日後、三人は世薙の遺体があったところまで来た。


俺はそっと目を瞑り、心の中で「安らかに眠ってくれ」と祈った。

「二回も来たらアイツもしつこいって思いそうだな」

「あれ、小春はここ来たっけ?」

弥生が相変わらず間抜けそうな声で聞くと、小春は小さく首を振った。

「私は直接言ったんだ。彼に直接……な」

「は?」

「は?」


俺と弥生は顔を見合わせ、互いに首を傾げて小春の顔を見た。

「弔問に直接とかあるんですか?」

すると彼女は道端に置かれた花束を見ながら語りだした。


 ◇


私が死にかけたあの日、気づけば見たこともないところにいた。

風もない、人影のない、ただの一本道だ。


そこには見覚えのある人間が道から一歩外れたところで立っていたんだ。

「世薙……なんでお前が……」

「そっちこそ……まさか助からなかったの?」

「そうか……!私は……!」

その時、私は自分が死にかけであることを思い出した。


突然息が荒くなった。体が痺れ始め、このまま死んでしまうかもしれない現状に焦りを覚え始めた。

「まずい……まだ死ぬわけにはいかない……」

「そうは言っても……僕は何をすれば……」


「また来たのか」


私の横には低い男が立っていた。私が瞬きしたその一瞬で現れたのだ。

「お前は……何者だ……!」

「ここに来るような小娘に名乗る名前は持ち合わせてない。ただ、元同じ組織の人間として向こう側に帰してやろうと思っただけなんだが」

「……どうすればいい」

男は鼻で笑うとスタスタとどこかへ歩き始めた。

「どうした、置いていくぞ」

「す、少しだけ待ってくれ!」


私は身勝手ながら男を待たせ、短い言葉を世薙に放った。

「またいつか会おう!それまで永く待っていてくれ!」

彼の表情はまったく変わらなかった。ただ私の方を見て無言で手を振るだけ。

少し寂しそうにしていたのは私の思い込みだろうか。もう見ることは無いからわからない。


 ◇


「__というわけで世薙は今も向こうで待っているというわけだ」

「世薙には悪いけど、あと百年くらいは待ってもらわないとな」

弥生が腰に手を当てて自信満々に言った。どうやら長寿が前提らしいが。


「姜ちゃんもお手柄だったしな!」

「……ただの偶然だ」

「そうだ、帰りにご飯食べようよ!もちろん小春のおごりで!」

「なんで私なんだ……まあいいか。二人には助けてもらった恩があるからな」

小春がしぶしぶ引き受けると、弥生はめっちゃ飛び上がった。

そしてニヤニヤしながら姜椰の顔を見た。

「……なんだよ。そんなニヤけて」

「うへへ……実は最近お金が無いからこの機にたくさん食べてやるぜ……!ぐへ、ぐへへへ……」


「僕も……一緒に食べたいな」

去り行く三人の背中を見つめながら、小さな天文学者は呟くのだった。

十一月の投稿はお休みします。

次回の投稿は12月1日からになります。今しばらくお待ちください……

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