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第百二十二話 「鹿張VS神村姜椰 その三」

「何してるの……こんなところで」


声をかけてくれたのは少し聴き慣れたお前の声だった。


「世薙!……ってことは俺は死んだのか」

「見てたよ。僕の敵討ちで……」

「焦り過ぎた。そうでなくても負けてたと思う」

「はぁ……姜椰もこっち側に来たのか……残念だよ」

世薙が涙を拭うと赤い線が消えてしまった。

「線……消えたぞ。大丈夫か」

「ああ……これ?オシャレで書いてた」

「おしゃ……そうだったのか。てっきり何かあるのかと思ってた」

「そんなまさか」


世薙が立っている横に俺も立った。

「死後の世界ってどんな感じか知らないが、いつもここで立ってるだけなのか?」

「違うよ。人を待ってるだけ」

「ああ、そうか」


(俺も弥生と小春が来るまで待つか……)


「ん……姜椰は待ってなくて大丈夫だよ」

「俺だって仲間なんだ。先に逝くのは違うだろ」

「僕が誰を待ってると思ってるの?」

俺と世薙の会話が噛み合わない。


「誰って……弥生と小春じゃないのか」

「違うよ。多分、君は知らない人」

「そうなのか……じゃ、俺は先に逝って待ってる。ところで、これはどっちに行けばいいんだ?」

俺の前には分かれ道があった。

「わからない。好きな方を選びなよ」

「あ、ああ……」


(好きな方ってなんだよ……)


「世薙はどっちにするか決まってるのか?」

世薙の姿は景色ごと消えていた。

「何が起こってるんだ?やはりあの世だから少しおかしいのか……」

「どうかしたのか」

「ん?」


前を向くと、自分より少し背の高い青年が立っていた。

「どっちの道にしようか迷ってるところです」

「新入りか。確かに二つも道があると、どちらを選ぶか迷うだろうな」

「あなたは決めてないんですか?」

俺が聞くと青年は笑いながら言った。

「ハハハ、俺はすでに決めた。だが、その道を最後まで歩くことはできなかったんだ」

「……」

「お前も歩く道くらいは決めろ」

肩をバシッと叩かれた。


「右か左か……進路みたいで辟易します」

「何言ってるんだお前は。道は一本しか無いだろう」

「え?」

青年が俺の後ろを指さす。


振り返ると一本だけ道があった。

「な、なんで……?さっき消えたはずなのに……」

「間違えた道を選んだのなら、早々に引き返せ。そして仲間と共に信じられる道を歩め。最期は彼らと互いに笑い合え。以上だ」

「あ、ありがとうございます……」

「お前、名前は」

「名前ですか……?神村……姜椰って言います」

「姜椰……我ながらいいセンスだ」

「我ながら……?」

「フン、早く行け。俺も暇じゃないんだ」

「あ、はい。ありがとうございました!」

俺は未練を残して来た道を引き返す。戻るにつれて景色に色が、体に感触が、呼吸の実感が戻ってくる。


ずっと走っていると、向こうから来た光に包まれて俺は気を失った。


 ◇


「あとは彼の首を取れば任務完了ですね」

鹿張は倒れている姜椰の元へと足を進める。

「フフフ。生身の人間など容易いもの……」


ダーン!!!!!!!!!


「ん?」

鹿張が振り返った先にいたのは、ボロボロになった彼の部下たちだった。

「鹿張様……特殊部隊がすぐそこまで……!」

「あれだけの数を配置したというのに、たかが能力も無い人間に押されてのこのこと逃げてきたのですか……!」

「もうしわけ……ございません……」

部下たちはよろよろと鹿張の前まで歩いてきた。

「人数を教えてください。僕が直接対応します」

「は、はい………ッ⁉鹿張様ッ!!!後ろですッ!!!!」

「⁉」

鹿張は咄嗟に手を翳した。


ビシュッ!!!!!!!!!


「なッ……⁉」

鹿張は一瞬にして細かな斬撃を受けて後ずさった。

「い、生きてる……⁉バカな、確かに命中したはずでは……!!!」

「はぁ……まだだ。戦いは……まだ、終わってない」

姜椰は血塗れた左手を振って血を払い、剣を強く握った。


鹿張は姜椰にかつてない恐怖を抱き、取り乱した様子を見せた。

「あ、有り得ませんッ!!僕の『捻転』をもろに食らって動けるなんて!!!」

「もろに食らった……いいや、そんなことをしたら俺でも死ぬ。俺はコイツに……お前のヴァリァスを吸収させたんだ……」


セイエイが姜椰の隊服から「ピョコ」と姿を現す。

鹿張はセイエイを見るなり、大きく目を見開いた。

「なるほど……道理でこんな攻撃ができたわけですか。しかし、自ら種明かしをするとはずいぶんと余裕があるようですね。僕の部下を一人でも逃がして、その情報を想決様のところに……」

「心配は不要だ。一人としてここから逃がすつもりは無いからな」

「そうですか。では僕は帰らせていただきます。照旗(しょうき)、彼の足止めは頼みましたよ」

彼の側近である照旗は力強く頷き、そのまま倒れてしまった。


「照旗……⁉何をしてるのですか……?早く彼の相手を……」

鹿張は照旗の背中にある深い傷を見て、ハッと何かを悟った。

絶望の顔を上げる。そこには鹿張の逃げ道を防ぐように姜椰が立っていた。

照旗の後をついてきた部下たちは全員、姜椰を前に冷たい骸にされてしまった。


「お前で最後だ、鹿張」

「し、終曲天体!!!」

鹿張はイチかバチか黒い円盤を姜椰に向けた放った。

「もう……見切った」


ズパッ______!!!


「う……すみません……想決様……」

鹿張はバタッと倒れた。

「……」

ふと姜椰も星空を見上げた。セイエイが破壊した天井が額縁のように星空を切り取っている。

彼の命星もこの星空の中に、まだあるのだろうか。それともすでに、黒い部分の一部になったのだろうか。


「……今日が晴れでよかった」

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