第百十九話 「遭遇」
それから一ヶ月、四月も終わりに差し掛かったある日___。
復帰した小春を含めた俺達三人は、世薙を殺した赤い角の男の情報を集めていた。
(どいつもこいつも口を揃えて……!)
お、俺は何も知らない___ッ!
私みたいな下っ端が知るわけないでしょ___!
死んでも言うもんか……!
この一ヶ月もの間、俺達は八人の『互』の構成員と戦い、全てに勝った。
面倒だが、すぐに殺さず抵抗できない程度にまで追い詰め、恐怖に駆らせ情報を吐き出させる。
「お前らが先にやったんだ。俺の仲間に手を出した報いは受けてもらう……!」
◇
そして現在、俺は別の任務の帰りに『互』の者に襲われていた。
日没の合間で一番視界が悪かったため、どこから襲われてるのかわからず、のこのこと廃倉庫まで追い詰められてしまった。
「終わりだッ!」
刺客が俺の背後を取り、勝ち誇ったように叫ぶ。
その時、倉庫の扉の隙間から船のライトが入り込んできた。
(加速ッ!)
「ッ⁉」
すぐさま刺客の背後を取り返し、その不意を突いた。
背中から思いっきり血を噴き出し、そいつは倒れてしまった。だがそこまで深く斬れなかったから致命傷には至ってないはず。その証拠にまだ指先が動いてる。
「う……あぁ……」
瞬時に切り伏せられて戦意喪失したのか、さっき叫んだとは思えないほど情けない呻き声を上げていた。
傷口からは真っ赤な血が服にじわじわと染み込んでいる。
もう、何度も見てきた光景だ。
俺は電撃剣の光で周囲を薄暗く照らし、逃げようと匍匐前進をしている刺客の前に立ちはだかった。
「お前、頭に赤い角が生えている男を知っているか?」
「そっ、そんなこと聞いてどうするんだ!」
「……」
ゴン___!!
俺は刺客の顔を蹴飛ばし、ごろごろと転がった刺客の頭を思いっきり踏みつけた。
「答えろ!知ってるのか、知らないのか早く答えろ!」
「教えたら……俺のことは見逃してくれるのか……?」
「……わかった。ただし嘘をついた瞬間、頭と胴を離すからな」
刺客は観念したように知ってる情報を吐いた。
「鹿張……その男で間違いないんだな?」
「俺も……昔の会議の見張りの時に、何回か見たことがある。そいつは特殊部隊の総隊長……相田俊之の息子の想決とかいうやつの右腕だ」
「想決……ッ!」
刺客は仰向けになり、鼻血を拭った。
「能力もわかるか?」
「言っただろ。俺も見ただけなんだ」
「流石にか……他には幹部に誰がいる?まだ何人かいるんだろ?」
「俺はあくまで鹿張の傘下に置かれただけなんだ。他の幹部のことは知らん」
刺客がふらふらと立ち上がり、俺の方を見た。
「思い出した。まだ一人だけ幹部が残ってる」
「誰だ?」
「越津みちひ……」
「おっと……その程度にしておいてくださいね」
誰かの手が後ろから刺客の首を掴む。
「逃げろッ!コイツが……!」
刺客は首をもぎ取られた。後ろにいた男は刺客の首を放り投げ、立ち尽くす胴体の方を片手でどけた。
「誰だ、お前は」
男は何も言わず電撃剣の照明の中へと姿を現した。
「君が神村姜椰ですか。初めまして……鹿張と申します」
次話は10/28(火)になります。お楽しみに。




