第百十八話 「足踏みよりも小さな一歩」
「……誰ですか」
俺は聞く。すると男は自己紹介をし始めた。
「俺の名前は玖維。こう見えてもSランク隊員だ」
「自分はSランク九番隊所属、神村姜椰と言います」
「ああ、君の活躍はかねがね聞いてる。今話しかけたのは、未来の後輩がこんなところで目を瞑っていたものだから気になってな」
俺は床に残っている血の跡を見ながら言った。
「自分は……仲間を弔っていただけです」
「彼が亡くなったのは俺も知ってる。この目で見たからな」
「……玖維さん、弥生と一緒に来ていたんですか」
玖維は道端に置かれている花束に黙祷を捧げると、話を再開した。
「俺は巡回がてら散歩をしていたんだ。気づけばここに来ていた」
「……」
「さっき城城も一緒だっただろう。なんでそこから出てきたんだ?」
玖維は結婚相談所を見た。
「それは……」
俺は言葉に詰まった。
「おおかた……彼の死に納得がいかず、監視カメラで情報を集めていたとかじゃないか」
「!」
「当たり……か。俺もここに来たときに何か違和感があった……」
玖維は歩き始める。
俺は少し迷ったが、とりあえず彼の後をついて行くことにした。
少し歩き、彼は突然立ち止まった。
「ここだ」
「ここは……?」
「見てわからないか。戦闘の跡だ」
「……!!!」
姜椰は破壊されたコンクリートを見て何かを悟った。
「ここは渡世薙が化け物を倒したところだ。そしてあそこは彼が死亡していたところだ」
「玖維さんも世薙の死に思うところが……?」
「まあ……互の連中から命を狙われることだってあるだろう。だが、化け物を倒したであろうところから遺体がこれだけ離れてるのは不自然だと思ってな」
「……あそこ(結婚相談所)の防犯カメラに世薙とそれを追う誰かの姿が映ってました。きっとそいつにやられたんだろうと……自分はそう思ってます」
そう言うと、玖維は黙り込んだ。
「先日、里弦駅から上りの電車が大型の化け物によって脱線した事故があったのを覚えているか」
「……もちろんです。なんせ……自分は当事者ですから」
「まさか、あれに乗っていたのか⁉」
姜椰が頷くと、玖維は「そうか……」と納得し話を続けた。
「実は線路に化け物が出現した際、隙ができた俺の相棒を助けてくれた恩人がいてな。そいつは化け物を指一本触れずに捻り潰してしまったんだ。到底、人間のできたことじゃないだろう?その日以降、ソイツのことは見ていないが、今回の彼の死に方を見て思い出したんだ」
玖維はあのとき自分が見た男の特徴を教えた。
胸に金色のバッジ……頭に赤い角……背を垂れる純白の直垂……
「防犯カメラではそこまで詳しい情報は得られませんでしたが、頭の上に赤色の何かはあった気がします。それに幹部でなければ世薙が負けるはずありません」
「ほぼ確定……だな」
「他のメンバーにもこのことは伝えます。ではこれにて失礼します」
姜椰は赤い角の男に強い苛立ちを覚えた。しかしそれ以外に何も手掛かりがない現状にさらに苛立ちつつつも、必ず敵を討つことを心に誓った。
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