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第百十七話 「宿命は歯車のように廻る」

玄関をくぐると、俺の心とは対照に眩しい世界が広がっていた。


「これから……出かけるの?」

「弥生……?なんで俺の家に……」

彼女はフードを脱いで俺の目を見た。

「姜ちゃんも同じことを考えてるんじゃないの?まだ……納得がいかないんでしょ?」

「ああ、そうだ」

「小春はまだ目が覚めないから、二人だけでどうにかしないといけないね……」

「現場、見たんだろ。どうだったんだ?」

弥生は視線を斜め横下にずらし、口を開けた。

「……多分格上だった」

「……そうか」


「よし、まずは防犯カメラを確認しに行こう。そこに何か映ってるはず」

二人は現場へと向かった。


 ◇


「ここがその……」

「まだ血痕が残ってる。あれだけ出血してたし……」

二人は近くの電柱などを注視したが、カメラらしきものは見当たらない。

というか戦闘で破壊されてしまったのかもしれない。


「無いな……」

「お店とかはどうかな。ここは商店街だから、もしかしたら映ってるかもしれない」

「目の前は空き……隣のここはどうだ。ありそうな感じがする」

姜椰が指したのは一面ガラス張りを観葉植物が隠している結婚相談所だった。


「まあ……角度的に厳しそうだけど一応聞いてみたほうがいいね」

二人がそこへ入ると、受付の作業をしている男性と目が合った。

姜椰が足を進めて受付に話しかけた。

「すみません、今少しお時間よろしいですか」

すると受付は困惑したような顔を浮かべ、後ろにいる弥生をちらりと見た。


「あの……ここは二十歳未満の方は入会できないのですが……」

「知ってます。別に俺達は相手を探しに来たわけではありませんから」

「は、はぁ……」

受付は困惑した表情を保ったまま続けた。

「それでは……こちらへは何のご用件で……?」


「……」

俺は天井を見上げ、監視カメラらしきものを見つけた。

「俺達はヴァリァス特殊部隊の者です。先日、そこで起きた戦闘の映像を確認したく、近隣の施設に協力をお願いしているところなのです。もし防犯カメラに外の様子が映っているのなら、見せてくれませんか」

「防犯カメラ……少々お待ちください」

受付は奥へ入っていった。


「姜ちゃんて、外ではちゃんとした言葉遣いができるんだな」

「できなかったら大変だろうが……」


それから待っていること五分程、奥から受付が上司らしき人を連れて来た。

その男は俺達を見ると、状況を確認するように口を開けた。

「ええと……この度は入会の件で来たのですか?」

「……は?」

俺は驚き、受付の方を見た。

受付も驚いた表情をし、店長に小声で説明した。

「ですから違いますって。特殊部隊の方々がここの防犯カメラをご覧になりたいと……」

「ああ……ですが一応個人情報も含まれますので、先にお二方の隊員証を拝見してもよろしいでしょうか」

「隊員証……?こちらです」

俺と弥生が隊員証を見せると、店長は丁重にそれを返した。


「……承知しました。防犯カメラの映像を確認してみましょう」


 ◇


店長と俺と弥生の三人で当時の記録まで遡った。

「映るとしたら入り口にあるカメラか……現場自体は捉えてないがその付近で何があったかはなんとなくわかりそうだな」

「私達の車に続いて追手が来たのならきっとここに移り込んでるはず。問題は小春に斬られた敵と世薙を殺したのが同一人物なのかどうか……」

「……もし違ったら?」

映像を眺めながら姜椰が聞く。

弥生は黙り込んだ後、短く呟いた。


「殺す__」


普段の明るい声の面影が消え去るほどドスの効いた声だった。

「……そろそろ時間だ。もうじき俺達の車がここを通るはずだ。店長、あと五分程進めてくれませんか」

「あ、はい」

倍速された車が猛スピードで右から左へと走り去ってゆく。

そして姜椰の言った通り五分程経った頃、弥生たちが乗っていた車が通った。

「……そろそろかな」

「いや、世薙が降りたのはここからもっと前の地点のはずだ。俺の目の前で飛び降りたから覚えてる」

「どういうことだ……??????」

「不利になったから逃げた、と仮定して……逃げ切れずやられたのかもしれない」

「何⁉」

弥生はキレ気味で突っかかった。

「怒るな。それも見ればわかるはずだ」


それから全員無言で映像を見ていると、右から猛スピードで走り去った人影が映った。

「店長、今のところで止めてください」

「あ、はい」

店長が機械を操作して映像を止めると、世薙らしき人影が映っていた。

「この時点ですでに戦闘は始まっていたようだな」

「そうだね。あとは敵の姿が映ってれば……」


ドカーン!!!!!


二人して画面を凝視していると、物凄い物音が鳴り響いた。

一瞬だけ画面が揺れ、そのすぐ後に黒い人影が現れていた。


特殊部隊の隊服と似ている___まるで暗部が着てそうな簡素な布切れを纏っていた。


「これは……やはりそうだ、この人影は小春さんと戦ったやつじゃない。明らかに人間だ……つまり……」

「___姜ちゃん、外に出よう。もう知りたいことは知れた」

俺の話を遮り、弥生は店長に礼を伝えて外に出た。


「予感……当たってしまったな」

「むしろこれでよかったよ。世薙の無念を晴らすことができるんだから」

「このあとはどうする。もう少し周辺で情報を集めるか?」

「いや、今日はもう解散しよう。また何か情報を掴んだら連絡する」

弥生が帰った後、俺は世薙の遺体があったという場所に寄った。


(世薙、お前の敵は俺が取る。敵を取ったらまたここに来るから、その日までゆっくりと星空でも眺めて待っててくれ)


黙祷を捧げ終え、俺も帰ろうとしたその時、後ろに人の気配を感じた。

まあまま良い体つきをしている男だ。

俺が固まっていると、その男は喋り出した。


「君も彼の知り合いか?」

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