第百十一話 「刺客は死角から」
「っ!」
俺が申奏を連れて出ることは叶わず、サンドワームに吞み込まれてしまった。
真っ暗な中で妙な音とともになんかの部品が手の甲に当たった。
「車両が破壊されてる……⁉セイエイ、車両に適応して時間を稼げるか⁉」
「一応やってみる!」
セイエイが服から抜け出して車両に入り込む。すぐに破壊は止まったが、同時にすごい衝撃が襲ってきた。
(サンドワームが動き始めた!しかもかなり激しく暴れてる……ってことは外で戦闘が始まったのか?あるいは電車が喉につっかえたとか……)
その時、申奏が俺の二の腕を弱弱しく掴んだ。
「起きたか?」
激しく揺さぶられながら冷静に彼女に呼びかける。
おそらく彼女は俺よりも重傷だ。状況がわからずパニックを起こさなければいいが。
「何が起こってるの?何も見えないんだけど……」
「ここは化け物の腹の中。今はここから出る方法を考えてるところ」
「私達さ、電車に乗ってなかったっけ……?」
「この化け物が先頭含めた四車両を丸々呑み込んで、その衝撃で列車が脱線した後に残ってた車両も呑み込まれたって感じだ。あ、揺れが収まった……のか?」
真っ暗な中でスマホのライトをつけて車内を照らした。
「……酷いな」
床にも天井にもどこも血だらけだった。この車両と一緒に呑み込まれた乗客たちは、割れた窓から外に放り出されて化け物に吸収されてしまったようだ。
「どうやってここから出るの?なんか武器持ってたりするの?」
「何にも無い……けど頼れる仲間がいるから」
「頼れる仲間……?」
その時、サンドワームが姜椰たちのいる車両だけを吐き出した。
「申奏、頭を守れ!」
ドーーーーン!!!!!!!
再び強い衝撃に襲われた後、俺と申奏は互いに生きてることを確かめた。
ボロボロの金属の塊になった車両からセイエイが飛び出した。
「いででででででで……」
セイエイが老人みたいな声で痛がる。
俺は仰向けになってセイエイを持ち上げた。
「お前のおかげで命拾いした。ありがとう」
「この際だから言っておく。僕は適応する物体の体積が大きければ大きいほど強化の度合いが弱くなるんだ、よく覚えとけ。あぁ……いでででででで」
俺はセイエイの頭を撫でた。
申奏がやや引き気味で言う。
「しゃ、喋った……」
「ん?なんだお前、僕がそんなに変か」
セイエイが申奏にメンチを切る。
「あぁ……あわわ……」
申奏はへなへなとその場に倒れてしまった。
「……バレたな。お前の存在が」
「コイツなら別に構わないだろ。相棒の恋人なんだし」
「余計なこと言うなって」
俺はセイエイを自分の服に戻し、額に流れている血を拭った。
「養成高校の生徒がいるぞ!担架をこっちに!」
どこかの部隊の人間がこちらを指さして叫ぶ。
「やっと助けが来たか……でもまあ、今日は嫌いな授業だらけだったから不幸中の幸いかな」
姜椰はニヤリと笑った。
◇
「このっ!」
玖維がサンドワームの体の側面に細かく斬撃を入れる。するとサンドワームは苦しそうにジタバタと暴れ始めた。
しばらくするとサンドワームの口がボコッと膨らみ、中から半壊した電車が出てきた。
玖維は電車を見た後、聴き慣れたエンジンの音に振り返った。
「あれは……おい!こっちだ!」
それは特殊部隊の車両だった。
玖維はやっとの応援に安堵の表情を浮かべたが、目の前にまだ化け物がいることを思い出しすぐに戦闘態勢に戻った。
「電車の中にまだ人がいるかもしれない!俺がヤツの相手をするからその間に確認してくれ!」
「了解です!」
「玖維隊長、私も手伝います!」
気づけばアリィも戻って来ていた。
「よし、行くぞ!」
二人はサンドワームに斬りかかり、それを援護するように後方が動いた。
「アリィ、お前はそっちを斬れ!」
「はいっ!」
サンドワームが大きく口を開ける。その口を切り裂くように刃を入れた。
地上には狭い範囲で血の雨が降り、その雨が止む頃には線路に沿うようにサンドワームの開きが横たわっていた。
「はぁ……はぁ……アリィ!怪我は無いか!」
アリィは向こうでグーサインを出し、武器を投げ捨てた。
◇
「あの便に乗っていたはずですが、果たして死んだのでしょうか……」
現場から少し離れたところ、先程アリィを助けた男がスマホを見ながら薄笑いを浮かべていた。
「神村姜椰……あのサンドワームから生き残れるほど力があるのなら、始末するにはもう少し時間がかかりそうですね。しかしそれを一興というもの……」
少し連載をお休みします。




