第百二話 「天へ舞う傀儡」
現場にいた隊員たちも加勢して黄月を取り囲む。
彼はすでに体の自由が無くなっているようで自我があるかどうかすらも怪しかった。
誰もが攻撃するのを躊躇っていると、神楽坂が真っ先に斬りかかった。
その大鎌を振り回し、黄月を追い詰めていく。
「余裕がある奴は神楽坂隊長に加勢しろォ!!!!!」
誰かの鼓舞に感化された隊員たちも続いて黄月に斬りかかった。
「うおおおおおおおおお!!!!!!!」
キン__カーン!!
「俺も行かなくては……!」
隊員たちは俺を追い越して黄月に斬りかかった。
流石の黄月と言えども、弱体化した状態で数の暴力に遭うとやはり押されていくようだ。
「フッ!」
神楽坂の鎌が黄月の左目を破壊した。
あまりの衝撃でよろけた黄月は千鳥足になって後退し、建物の壁に寄りかかった。
そこを仕留めようと他の一般隊員が襲い掛かった。
「『壊滅状態』起動___」
黄月の右手から剣が出る。そして近くにいる隊員に容赦なく斬りかかり、血飛沫を舞わせた。
瞬く間に五、六人の隊員が殺され、辛うじて死なずに済んだ隊員も大怪我を負わされた。
(『加速』を使ってる間に激しい動きをしなければある程度の時間は保てるはず。それで彼の動きに追い付けるのかはわからないが、攻撃を見切るには十分だ)
俺は黄月に近づいた。
「黄月さん……俺が相手します」
電撃剣を引き抜き、黄月へと刃を突きつけた。
すると黄月が地面を蹴ってこちらへ向かってきた。
彼の鋭い太刀を冷静に見切り、剣で受け止める。
「セイエイ、今だ」
「了解ッ!」
地面からものすごい本数の結晶が姿を現す。黄月は素早く俺から離れ、攻撃を避けてしまった。
それを見ていた他の隊員たちは見慣れぬ結晶に状況が飲み込めず、攻撃を止めた。
「結晶が地面から生えるだけのものだと思ったか?」
すると姜椰の周囲にフワフワと真っ黒な結晶が浮かび始めた。
「発射___」
結晶の弾幕が黄月に襲い掛かる。彼は円を描くように、姜椰との距離を保ちつつ周囲を回り始めた。
結晶が当たったところは粉々になり、地面にはゴルフボール程度の大きさの穴が空いた。
「なんだあの技は⁉」
「あの隊員も想決と同じ化け物なのか⁉」
固唾を飲んで見守っていた隊員たちは姜椰の技を見て面食らっていた。
弾幕が止むと黄月は俺の目の前に現れ、右手を翳した。
黄月の右手が光り始めた次の瞬間、ものすごい火力の火炎が姜椰を襲った。
全員が前のめりになって見ている。
駐車場に生えていた木々は灰になり、地面からは白い煙が出ていた。
黒い煙が風によって取り払われると真っ黒な結晶が現れた。
姜椰は結晶の盾に守られていた。
「熱……っ」
結晶が崩れると同時に、姜椰は手で自分を扇いだ。
「ッ!!」
余裕そうな素振りを見せる姜椰を黄月の回し蹴りが襲う。
姜椰はすぐさま電撃剣を抜いて攻撃を受け止める。
パキィーン___!!!!!
黄月の強烈な攻撃に耐えかねた電撃剣が亀裂を入れられて折れてしまった。
それと同時に黄月の拳が姜椰に向かう。
すぐさま神楽坂が助太刀に入り、申奏も援護射撃を行った。
姜椰は後ろにバランスを崩す形で拳を避けた。
神楽坂の鎌が黄月の右腕を破壊するも、中に備えられた剣が邪魔して完全には破壊できなかった。
申奏の弾丸も軽々と避けると、何故かピタリと動きが止まった。
(倒せたのか……?)
隊員一同が不安そうに見守る。
「『殲滅状態』移行___」
黄月はボロボロになった右腕を使って神楽坂を殴り飛ばした。
神楽坂は地面に鎌を突き刺して受け身を取った。
「まだ終わってなかったか……!」
姜椰は隙ができた黄月めがけて電撃剣を突き刺した。
たちまち大量の電流が黄月の電気系統に流れる。黄月の体から電気独特の匂いと黒い煙が出始め、黄月は予想外の攻撃に焦る様子を見せた。
「……」
黄月は電撃剣を引き抜き、地面に投げ捨てた。
そして目にも留まらない速さで姜椰の目の前まで動き、右腕の剣を姜椰に向けて振り下ろした。
「ッ……!」
姜椰はローブで顔を守る。しかし黄月の剣は姜椰の顔の前で止まっていた。
黄月の目の色が赤色に点滅していた。
彼の中で制御システムの信号と自分の意志が戦っていたのだ。
「黄月さん……元に戻ったんですか……?」
姜椰がおそるおそる聞く。
すると黄月はにっこりと微笑んだ。
「神村殿の電撃剣のおかげで……一時的に信号が乱れたようです。ですが……それもあと少しだけ……」
黄月から右腕が落ちる。その破片の一部が姜椰の隊服に乗った。
「う、腕が……!」
「神村殿……そんな心配そうな顔をする必要はありません……。保存されているデータを使って復元してくださればまた会えますから。紫影殿、早く私にとどめを……!!!!」
その瞬間、神楽坂が黄月の背後にまわった。
「では、お体に気をつけて。またいつか……」
神楽坂の鎌が黄月の頸を斬った。
黄月の首は横に吹っ飛び、彼の体は俺の懐に倒れた。
「黄月さんッ!」
俺は黄月さんの首に駆け寄り、両手でそっと持ち上げた。さっきまで動いていたせいか頭はすごく温かった。
しかし彼の目は光を宿していなかった。
「……っ」
俺は思わず目が潤んだ。
機械だからまたいつか会える。それは間違ってない。
だが黄月の製作費はおよそ五十兆円……日本の国家予算の半分近くあるのにそんな易々と作れるはずがない。
「今まで……お疲れ様でした……」
俺はそっと彼の頭を地面に置いた。
これがきっと最後の会話になるんだろう。
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