第九十九話 「機械と怪物の決闘」
相田想決
ランク:A ※養成高校爆破時に部隊から除外されている。
適性 :「身強」「顕現」「???」
夢を叶えるために自身の体を改造した者。さらなる力を求めた果てに「顕現」を発現した。
「顕現」は自分の体に適度のヴァリァスを溜め込み、自分のタイミングで放出することでより強度な身体強化が可能になる。
それだけでなく、体内のヴァリァスを使用することで傷も再生させることができる。
「母さん……この僕が、この忌まわしき災いから世界を救ってみせるよ___」
「総隊長に……何か言い残すことはありますか?」
「……無いよ。ここで君を破壊した後、僕自ら父さんに伝えるから」
想決の頭に鋭く真っ暗な角が生える。禍々しいオーラがあたりに立ち込めてきた。
それを見た黄月はよりいっそう険しい顔になった。
「その角……あなたはもう人間ではなくなったのですね……」
想決は両手をグーパーして力の調子を確かめた。
「さて……準備はいい?」
「いつでもどう……」
黄月が言い終えるよりも早く想決は動いた。
想決の刃と黄月の拳が衝突し、互いにじりじりと膠着した。
「流石だね。僕の攻撃を余裕そうに受け止めたのは君が初めてだ!」
「私もあなたのようなバケモノと戦うのは初めてです」
「フッ!」
想決は体を翻し、華麗に天井に着地した。
「面白いな……少し時間をかけて相手してあげるよ」
次の瞬間、想決は黄月の背後まで移動して攻撃を仕掛けた。
黄月はその攻撃を拳で流すと、超高速の蹴り技を繰り出した。
「さっき戦った慈串とやらに比べれば全然速いね。でもその程度じゃ……!」
蹴りが当たる寸前、想決も超高速の斬撃を繰り出した。
キィィィィン!!
金属が激しく火花を散らせ、二人は衝撃で真逆に吹っ飛ばされた。
黄月は素早く立ち上がるが、想決は壁にめり込んでいたため復帰するのに少し隙が生まれた。
「威力は申し分……」
「ハッ!!!」
その隙に黄月の渾身の打撃が想決めがけて放たれた。
パシッ__ドォーン!!!!
想決は左手を使って顔の前で黄月の拳を受け止めた。その衝撃で想決の体はさらに壁へとめり込んだ。
「化け物は君の方じゃないか?」
想決は黄月を嘲るように言った。
「……そうかもしれませんね」
黄月は想決の手から素早く拳を引き抜くと、怒涛のラッシュを放った。
それに呼応するように想決もまた左手だけで全て捌いていった。壁はどんどん壊れていき、入る亀裂はみるみる大きくなっていく。
想決は防戦一方でただひたすら攻撃を受け止めることしかできなかった。
黄月の拳のスピードはさらに上がった。想決の顔からは先程までの余裕さが失われつつあった。
「ぐっ……!」
「いい加減にしろよ!」
想決が怒鳴った瞬間、さっきまで矛の形だった右腕も元通りになった。
「!」
「もう遅い!」
想決は黄月の拳を両手で弾き飛ばすと、ガラ空きになった胴体に何発も打撃を打ち込んだ。
そしてとどめの蹴りで黄月は水きりの石のように床を二回ほどバウンドした後、ホコリを巻き込んで転がった。
「フン……片手で可愛がってあげたというのに、散々殴ってくれたね……!」
想決は壁からゆっくりと起き上がり、吹っ飛ばした黄月を視界に捉えた。
「ぐっ……油断してましたよ。まさかいきなり反撃されるとは……」
黄月は立ち上がると体に付いたホコリを手で払った。
彼には特にダメージが入ってなさそうだった。やはり戦闘用にカスタムされているからだろうか。
「まだ威力が足りなかったか。Sランクの上澄みともなると一筋縄ではいかないものだね」
「あなたに褒められても素直に喜べませんよ」
すると想決は「フッ」と鼻で笑った。
「そうだろうね。君はSランクの上澄みなんかじゃないんだから。生まれつき国の命令だけを聞いてるだけの奴隷にかける言葉なんて無いよ」
黄月の眉がピクリと動いた。
「確かに私は奴隷かもしれませんが、あなたと同じように夢を持ち、気高く生きているつもりですよ」
「ハハッ、図星だったかな……」
想決はまたニヤリと笑った。彼は完全に黄月を見下していた。
「それと……今”夢を持つ”って言ったの?機械で作られた君が……?アハハハハハハ!!!!!」
想決は高らかに笑い出した。
いつ黄月が攻撃を仕掛けてきてもおかしくないのに、全部そっちのけで笑っている。
「”夢”……か。フン、メカが人間の真似なんてして……夢を語るなよッ!」
想決と黄月の戦闘はヒートアップしていった。
しかしお互いに傷はまったくついていない。今はそう見えていた。
「フン!」
激しい戦いの末、一瞬の隙を見逃さなかった想決の蹴り上げが黄月の胴体を掠めた。
「あの体勢で躱せるんだ……君も君で厄介だね。普通の人間はそこまで関節を曲げられないのを考慮していなかった……」
「……」
この時、黄月は自分の体の見えない損傷に気づいていた。
さっきの連撃と今の打撃でほんのわずかに装甲(肌)に亀裂が入っていたのだ。
「どうしたの?まさか降参じゃないよね?」
「……」
黄月は何も無かったフリをして体勢を整えた。
想決は一気に黄月との間合いを詰めると、元に戻した右腕も使ってラッシュ攻撃を放った。
黄月も超高速で拳を放ち、空気が震えるほどの衝撃を生んだ。
互いに速度の限界まで近づいてきて間もなく、黄月の拳が想決の右手を砕いた。
「な……⁉」
想決は飛び散る自身の肉片を見て驚きを隠せていなかった。
「ハッ!」
黄月は想決の顔面に向かって最速の一撃を打った。
「……学べよ、機械」
そう言い放つと、想決は黄月の拳を軽くいなして黄月にボディブローをかました。
すると黄月の体はガクンと項垂れた。黄月の胴体には想決の左手がめり込んでいた。
破片が床に落ちる。想決は勝ち誇ったように解説し始めた。
「君がさっきからここを守るように戦っていたからさ、ちょっと当ててみたらやっぱりヒビ入ってたんだね」
「……」
想決は右手を再生させると、自身の目を指さした。
「ヒビが入ると、その部分は黒く見える。まともに光が届かず暗く見えるからね。僕の観察眼あってこそだよ」
想決が拳を引き抜くと黄月は床にぶっ倒れて一切動かなくなった。
「やっぱり上澄みなんかじゃないね。本物はもっと強い……」
想決は足を止めた。
彼の行く手を阻んでいたのは神楽坂紫影だった。
「っ……君も僕を殺しに来たの?」
「……」
神楽坂は黙ったまま、床に倒れている黄月に目を向けた。
「命の重さが無い……」
「何か言った?全然聞こえないよ」
「お前には関係無いことだ。死ぬがいい」
神楽坂は想決に鎌を振り下ろした。
想決は避けずに手で刃を受け止めようとした。
「切れ味が良さそうな鎌だね。重くな……」
鎌は想決の右手を切り裂き、そのまま腕まで斬り込んだ。
「うぐっ⁉」
想決は突然感じた激痛に驚き、無意識に後退した。
「な、なんだその鎌は……ッ!」
神楽坂は想決の反応を真顔で眺めている。まるでそうなることがわかっていたかのように。
「手で受けるのは間違いだったね。君は黄月とは違うようだ!」
想決は右腕を刃に変形させて神楽坂に斬りかかった。
至近距離で何度か打ち合うと、想決は懐に手を伸ばした。
「君と僕は相性が悪い。君とだけは絶対に戦いたくないね」
懐から出したポケットヴァリァスを床に叩きつけた。
容器が割れると中から謎の化け物が生まれてきた。
「これが君の相手だ。僕はもう時間が無いッ!」
想決は一瞬にして姿を眩ましてしまった。
神楽坂は生まれたての化け物が成形を成す前に鎌を突き刺して絶命させた。
「ヤツが向かった先……神村も向かっていたな」
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