表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

エイプリルフール(2025)

「うーむ…」


僕の名前は夜山柚子。

突然自分が創った世界に連れてこられ、元の世界への戻り方を探している。

今日は4/1。

そう、エイプリルフールだ。

あの三人になんとか嘘をつきたいが… 

あの三人は嘘に気づきやすい。

どうにか騙す方法はないものか…

そう思い、起きてからずっとベッドに座って考えているのだ。


「1番騙せそうなのは青坏…」


マジシャンをやっているというのもあって、嘘には敏感な青坏。

だが、あの三人の中なら1番騙されやすい気がする。

しかし、どんな嘘を付くか…


「大袈裟な嘘は騙されやすい…だから、日常生活に潜んでるような嘘を…」


一つ、嘘を決めて思い切って立ち上がる。

着替えをして髪を整え、青坏がいるであろうバーに向かった。

バーのカウンターには予想通り青坏がいた。

優雅にカフェオレを飲んでいる。


「おはよう青」

「あ、おはよう柚子」


何気ない挨拶を交わし…気づく。

いつもは机の上にあるはずのアレがない。

慌てて青坏に尋ねる。


「ねぇ、青。僕の朝ごはんは…?」

「え?そこに………あ!」


視線を僕の方へ向けて目を丸くする。

そして手を合わせて僕に向き直る。


「ごめん!忘れてた!」

「はあ!?」

「そうだ。店裏の果樹園から苺採ってきてくれない?その間に作っちゃうからさ!」

「もぉ…わかったよ…」


苺を入れる用の籠を取り、果樹園の方へと行く。

毎日作ってる朝ごはんを忘れるだなんて…そんなことある?

ハサミを持って、仕方なく苺を採っていく。

内心、ため息をついていた。

青坏につく予定だった嘘…つけなかった…

苺を採りながら、ゲームのイベント回収しとかないとなと考える。

そこでハッと思いつく。

早く試したくて苺をササッと採り青坏の元へと持っていく。


「青!終わったよ〜!」

「おぉ、いつもより早いね」

「そうかな〜」


そんな会話をしたところでバーの扉が開く。

入ってきたのは残りのターゲット2名。

スイレンと氷華だ。

タイミング良し。

さっき思いついたことを早速試すべく、行動に出た。


「そうそう氷華!聞いてよ!前に氷華が言ってた新作ゲーム、手に入れたんだ〜!」

「へぇ…」


そう、先程僕が思いついたのは氷華につく嘘だった。

氷華はニヤリと意味深に笑った後、僕に質問してきた。


「じゃあ主人公の名前は?」

「…へ?」


勿論、僕は買っていないので返答に戸惑う。

主人公の名前!?ようつべとかにあるかな…

そんなことを思いながらスマホを開く。


「あれ、スマホ開くなんて。ゲームしておきながらわかんないわけ?」

「い、いや、これは…その…ほら!買ったっては言ったけど、まだプレイしてないから…!」

「へぇ。詳細も調べずにゲーム買う?」

「それは…その…」


完全に追い詰められ僕は戸惑う。

そんな僕を愉快そうに笑う氷華。

嘘は突き抜けだったということだ。

とどめを刺すように氷華から一言。


「買ったならソフト見せてよ」

「ぐっ…!!」


完全なるノックアウト。

とどめを刺された僕は正直に吐いた。


「嘘です…買ってないです…」

「だろうね。あのゲーム、主人公の名前自分で決めるし、ソフトじゃなくてダウンロードだし」

「…え?」


じゃあ…ワンチャン騙せたってこと…?

かもかけられた…?


「氷華ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「エイプリルフールだから怒っちゃだめっしょ〜」


ニヤニヤと笑いながらそんな事を言う。

僕はめちゃくちゃ苛立っていたが、氷華の言うことは正論なので必死に落ち着かせようとする。

そんな僕に降り注いだのは、スイレンの悪魔のささやきだった。


「そういえば柚子、今日パン屋に新作が出たらしいですよ」

「マジ!?」

「はい、しかも抹茶だとか」

「ちょっと出かけてくるー!!」


スイレンの言葉を聞き、僕は一目散にパン屋へと向かった。

スイレンは表情もいつも通りだったしこれは本当だろう。

そう…信じていたのに…


「休…業…日…」


パン屋の前で立ちつくす僕。

しばらくしてから騙されていたことに気づき、またもや急いでバーに戻る。

思い切りバーの扉を開けると、パーンと大きな音が鳴った。

僕は驚きすぎて大声で叫ぶ。


「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?」

「あっはははははw」


クラッカーの犯人は青坏。

当の犯人は腹を抱えて笑っている。

その様子に僕は堪忍袋の尾が切れそうになっていた。


「青…どういうつもり…?」

「いやw3人全員に騙されるとかwおめでたいな〜ってwww」


明らかにおめでたいだなんて思っていない青の様子に、プツンと僕の中で何かが切れた。


「青…知ってる?」

「なにをw」

「嘘とドッキリは違うんだよ?」

「…あ」


僕が手にしているものを見て事の重大さを理解したらしい青坏は顔も名前の通り真青に変えていく。

僕が手に持っているのはお酒の瓶だった。

それも、前に青坏が高いと言って自慢していたお酒だ。


「ま、ままま待って柚子…その瓶…ゆっっっくりおろしてくれない…?」

「え〜?どうしようかな〜」

「お願いします柚子様ぁぁぁぁぁぁぁ!!」


その後、僕はお酒を人質…いや、酒質?にとって青坏をからかい続けた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ