イノセント田中 第12話
『第12話 芸術の守護神』
イノセント田中が深夜に公園内の道を歩いていると、特攻服を着た青年がトイレの壁にペンキで見事な龍の絵を描いていた。イノセント田中は背負っている日本刀を鞘から引き抜いて青年に向かって突進し、青年に向かって叫んで言った。
「公共の場所に落書きをするんじゃねえーっ! 落書きは犯罪なんだぞーっ!」
その声を聞いた青年が驚いて後ろを振り返り、突進して来るイノセント田中を見て慌ててズボンのポケットから伸縮式の警棒を取り出した。イノセント田中が青年の胸に目掛けて日本刀を振り下ろし、青年が警棒で日本刀を弾き返してイノセント田中に怒鳴って言った。
「世界的に有名な奴が落書きをすれば素晴らしい現代アートだと称賛されて、作品が桁違いの額で売買されて、何で俺たちが落書きをしたら犯罪になるんだよ! 不公平だろ!」
イノセント田中が青年に向かって怒鳴って言った。
「不公平だと思うならその怒りを芸術に昇華をさせろ! お前のような芸術の才能のある人間が、間違ったことや低級なことをやりだしたら、それはもはや人類の精神的滅亡だろ! 公平とは無縁の通貨制度によって成り立っている不公平なマネー文明に人類が染まり切ることになるだろ! 不公平なマネー文明に苦しむ人々の心を癒やすのが、お前のような芸術の才能のある人間の使命だろ! お前のような人間が、人類の精神的滅亡を阻止する最期の砦だろ!」
イノセント田中はそう叫び、日本刀の峰で青年の腹を強打した。青年が「うぐおわっ!」と悲鳴を上げて、その場に倒れて意識を失った。イノセント田中が失神した青年の顔を見て静かに言った。
「お前は人類の精神的滅亡を阻止する人間になるかもしれない、命は助けてやろう」
イノセント田中はそう言って急いでその場から逃走した。この公園内の道を歩いていた帰宅途中の男性がその一部始終を目撃し、スマホで救急車を呼んでこの事件を警察に通報した。しかし、警察はイノセント田中の行方を追おうとはしなかった。なぜなら、そう、彼は地球のヒーロー、イノセント田中だから。(♪テーテーテーテテー、テーテーテテテテー、本物のー芸術はー上手い売れる人気出るーそんなことは超越ーしているぜーそんな下等な理由でー存在してはいないぜー俗臭の無い芸術はー本当に人の心をー癒やせる力があるぜーそういう作品作らずにー子供騙しの作品をー公共の目立つ場所に描きー強制的に人に見せー真の芸術で人々にー感動される喜びをー知らずに有名になる奴やー貧しい国で貧困にー苦しむ子供を絵に描いてーその絵を売ってカネにしてーうまい飯を食う奴やーその絵を買って転売しー贅沢三昧する奴がー昔は大勢存在しー俗の心で芸術をー俗へと引きずり込んだぜーしかしー近年ーそういう不埒な人間がー激減しているぜーそれはーそうさーイノセントー田中がーそういう不埒な人間をー失敗作を切るようにー斬り捨てているからなのさー芸術の守護神ヒーロー、イ、ノ、セ、ン、トーーー田中!)