表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
肆天の守護者-虎軍奮闘記-  作者: 藤沢蓮
9/10

あいも変わらずギリギリ更新ほんとすみません。

稚拙な文ですがお楽しみください

音虎は新品の戦闘服を着て晴と共に歩いている。


「音虎ちゃん、緊張してる?」

「そりゃしますよ、初めてですもん。」

「そんな緊張しなくていいわよ、いざとなったら私がサポートするわ。」

「お願いしますよ、学校の一件以来初めての実践なんですから。」

「あれを乗り切れたならなんとかなるわよ。」

「それでも緊張しますよ。」


 音虎は移動中、深呼吸を繰り返している。いつもの明るい雰囲気が嘘のように静かで真剣な顔をしている。晴も音虎を気遣ってかあまり話しかけず、珍しく静かな時間が流れていた。2人が協会の地下へ着くとそこには空間が捻じ曲がりドス黒い赤色に発光している威界行きのゲートが存在していた。


「これを潜ったらいよいよ威界よ、覚悟なさい。」


 音虎は深く深呼吸をし両手で頬をバチンと叩く。


「行きます!!」


 そう言い音虎と晴はゲートへと踏み入る、眩い光が視界を遮り音虎は思わず目を閉じる。光が抑まり目を開くとそこは灰色の大地に生気のない木が所々に立つ荒野だった、音虎は見慣れない光景にたじろいでいると前方に大きな影が迫って来た。それは、飛蝗型バッタがたの怪威だ、音虎は真っ直ぐ怪威を見て腕を構える。


獣装ユニオン!』


 そう叫ぶと音虎の体から雷が迸る、そして腕が薄灰色の装甲を纏い指は水色の半透明の長爪へと変質する。怪威はそんなこと意に介さず水平に跳躍し迫ってくる、音虎は弓を引くかのように右手をゆっくりと構え、晴に教わった事を反芻する。


 (怪威の弱点は頭部、突撃してきたらチャンス、よく狙って…)


 怪威が音虎の眼前に迫る、音虎は引いた腕を体を回転させながら前へ、怪威の頭部目掛けて突き出す。


「貫く!!」


 爪は怪威の頭部に深々と突き刺さる、怪威はピクリとも動かなくなりやがて塵になって空気中に霧散して行った。しかし、塵となった怪威のすぐ後ろに新たな怪威がおり、残り1メートルも無いほどに接近している。音虎は咄嗟に手を広げ手のひらに魔素を込める。


「雷球!」


 そう言い音虎は手のひらから雷の球を怪威に向け発射し、頭部へと命中させ怪威を弾き飛ばすことに成功した。しかし、頭部を破壊するには至らなかった。


「やっぱり威力が足りないや。」


 音虎は辺りを見渡すと目の前の飛蝗型怪威が五体、蟷螂型怪威が二体と怪威の群れが音虎の前方を取り囲んでいた。音虎は深く息を吐き右腕を左腰に当て、刀を構えるかのような体制を取る。音虎は右手に魔素を集中させる、するとやがて右手が青白く光り輝き始める。怪威はそんなことお構いなしに一斉に音虎へ突撃してくる。一瞬怯んだ音虎を脳内で虎徹が叱る。


「集中を解くな!距離は俺が測る!!」

 

 音虎は怪威をまっすぐ見つめ、魔素を再び集中させる。怪威が迫って来る、残り3メートル、2メートル、1メートルとわずかになった時虎徹が叫ぶ。


「今だ!!」


 音虎は右手を抜刀するかのように真横に振り抜く、その軌跡は三日月のような綺麗な弧を描きその場に光り輝く斬撃を残す。音虎が腕を振り切った時、その斬撃は砂塵を巻き上げ前方へと発射されその場にいた全ての怪威を両断する。その場に残るのは両断された怪威の亡骸と音虎、そして遠くから見守っていた晴だけである、これが『虎月〈三日月〉』の威力である。並の怪威では当たれば即両断され、最期の一撃を入れる間もなく塵となる、万全の状態で放ち命中すればムクロとてただではすまなかっただろう。

 一息つき獣装を解除した音虎に後ろから晴が話しかける。


「やるじゃない!修行の成果バッチリね。」

「はい!」


 音虎が嬉しそうにしていると虎徹が頭の上に乗っかり、クドクドとダメ出しを始める。


「まだまだだ、まず怪威が来た時に毎回ビクッてなるな。そんでそうなったら毎回毎回魔素の集中が止まるんだよ、ビクッてなるのは良いにしても集中を止めるな。それと、近くにいるヤツに雷球使うのやめろ。それから…ブベッ」


 晴が虎徹に強烈なチョップを喰らわせる。


「初めての実践でどこまで求めてんの、初めてにしちゃ上出来でしょう?クドクドダメ出ししないの。それに結果全部倒せてるんだからちゃんと褒めないと。」


 虎徹は不満げな顔をしながらスッと消えて行った、幻獣は霊体化し自由に回りを飛び回ることができるのだ。


「逃げたわね、まぁ近くにはいるでしょう。さ、次の任務に行くわよ。」

「すぐ拗ねるんだから。」


 次の任務は周辺の調査だ、どんな地形か、どんな怪威がいるのか、どんな植生か調べて報告するのだ。今回音虎は『灰色の森』と呼ばれる地帯を調査する、そこは灰色の葉が生い茂る生気のない森である。音虎がそこに着くと生気の無さに驚く、葉は生い茂っているのに関わらず生物の気配もいた痕跡も何一つもない、当たり前だ、威界には生物ば人間以外立ち入ることが出来ない。生物は居ないが、怪威がいた痕跡は至る所にある。音虎は周囲に十分に気をつけながら森の中を歩く、木の上でガサリと何かが動く音がし小鳥が目の前に落ちて来る。音虎が臨戦体制を取ろうとした時、晴が驚いた声を上げる。


「雀型怪威じゃない!!珍しいわねぇ〜。」


 そう言って晴は怪威を手で掬い上げる。よく見るとそれは全体が黒味がかっている雀のような見た目をしている。


「やだ!可愛い!!」

「晴さん?怪威…なんですよね?」

「あ、説明して無かったわね。怪威と言っても人間に友好な種類もいるのよ。特にこの雀型は人懐っこいから癒されるのよ〜。ただ、数が少なくてね、なかなか出会えないのよ。」

「じゃあすごくラッキーなんですね。」

「ん〜それがそうとも言えないのよ、雀型怪威にあったら何かアクシデントが起こるっていう迷信があるのよ。」

「迷信かぁ…怖いなぁ…」


 不安がっている音虎を気遣うかのように雀型怪威は音虎の肩に乗り頬擦りをする、それに嫉妬したのか気まぐれなのか分からないが虎徹がヌッと現れ雀型怪威を肩からはたき落としてしまう。


「あぁ!!虎徹!何やってんの!?」

「ここに乗るのに邪魔だった。」

「はぁ?反対側に乗ればいいでしょ?」

「こっちがいい。」


 地面に叩き落とされた雀型怪威は虎徹を睨みつけながら音虎の頭の上にのっかった、虎徹は不満そうな顔をして雀型怪威を睨むがバカにしたような目を返され飛びかかる。


「私の頭の上で喧嘩するなー!!」


 そう言って音虎は2匹ともを頭の上から落とす。


「しばらく地面歩いてなさい!!」


 2匹とも残念な顔をしながら地面を歩く。一悶着ありながらも音虎は任務に戻る。二人で森を調査していると音虎は森の外に何か建造物を見かける、最初は見間違いだろうと気にしていなかったが、二度三度と見かけるたびに見間違いでは無いとわかる。


「晴さん、森の外に建物見えるんですけどこっちにも建物ってあるんですか?」

「建物?無いわよ、人が住んでるわけじゃあるまいし。」

「でも外になんかお城みたいなやつありますよ。」

「どっちの方向?」


 音虎が指を刺し、晴がその方向を見ると晴の顔がどんどん険しくなってゆき、音虎のことはお構いなしでその方向へ走り出す。木の上を素早く走り、森の端まで飛び翔ける。音虎は晴を必死で追いかける、音虎が晴に追いつくとそこには天高く聳え立つ禍々しい城と城を囲うように並ぶ城下町が存在していた。晴の顔は強張り見たことのない表情をしていた、晴は音虎が横に来たことに気づき、ハッとして表情を朗らかにしようとするがどこか不自然な顔にしかならない。音虎はそれを見て相当重大なことだと気づく。


「音虎ちゃん、あそこには近づかないようにしなさい。」

「多分…やばいやつですよね。」

「えぇ…おそらくあそこには人型怪威が集団で住んでいるわ。」

「人型って学校で戦ったムクロみたいなやつですよね…」

「えぇ、今のあなたじゃあそこに行ったら間違いなく死ぬわ。」


 するとその時だった、得体の知れない威圧感が当たり一体に広がる。晴は素早く周りを見渡す、するとちょうどここから10m離れた場所に骨で構成され禍々しいオーラを放っている何者かがいた。『それ』をよく見ると眼球が片方だけ存在し顔の筋肉がほんの少しだけ存在している、そして筋肉が少しずつ形成されている。それを見て晴は音虎に言う。


「私が合図するから、合図したら急いでゲートまで逃げてちょうだい。何があっても止まっちゃダメ、たとえ私が死のうとも走り続けて。」


 その瞬間、『それ』がこちらに気づく。晴は大声で叫ぶ。


「逃げて!!」


 その瞬間、音虎は全速力で逃げる。それとほぼ同時に『それ』が春に向かって飛びかかる。


「ユニッ…」


 晴は咄嗟に武器を構えるが言い終わる前にそれの攻撃が晴に襲いかかる。その場で大きな爆発が起きる、爆煙の中から獣装をした晴が姿を現す。両手に銃剣のついた拳銃を握り、片方を『それ』に向けている。


「まったく、変身シーンは攻撃NGって知らないのかしら。まぁ…おかげで片腕は貰ったわ。」


 攻撃を仕掛けた『それ』は右腕を先の爆発で失ったようだ、しかしすぐにも左腕を振り下ろし攻撃を仕掛ける。だがそれを晴か銃剣で切り落とす、切り落とされた左腕は後方の地面へ突き刺さる。


「あなた、一体何者?人型にしては脆すぎるし、存在が不安定、しかも人型にしては魔素量が異常に少ない。既存の枠組みから逸脱しすぎている。」

「バアァァァアァァエ゛ェェェエェェバアァァァ」

「どうやら話の通じる相手じゃなさそうね。」


 そう言って晴は拳銃を構える、すると、拳銃は一瞬にしてライフルへと姿を変える。


「あなたがここで死ねば正体も何も無くなるわ、何か起こる前に死んでちょうだい。」


 そう言うと晴は『それ』に向かいライフルを乱射する。『それ』は爆煙に包まれやがて塵となって霧散する。晴が霧散を確認し、獣装を解除しようとしたその時後ろから音虎の悲鳴が聞こえる。晴が急いで後ろを向くと切り落としたはずの左腕が音虎の脇腹を後ろから貫いていた。晴はすぐに左腕を銃で撃ち抜く、左腕は音虎から弾き飛ばされ再び地面に突き刺さる。晴は急いで音虎を抱えあげ、ゲートへ向かい全力で走る。晴が後方を確認すると両腕と肋骨だけになった『それ』がこちらに向かってきていた。晴は走りながら思考する。


 (再生能力持ち…それにさっき撃った時、最初より明らかに固かった…一度受けた攻撃は効かないと見て良さそうね…音虎ちゃんを抱えて打てるのはせいぜい拳銃1丁…方術でやるにしても逃げながらは部が悪い…ここで手札を晒すよりかは再戦時の手札を増やした方が良いわね…音虎ちゃんの傷も酷いし逃げる一択ね)


 晴は走るスピードを一層上げる、しかし『それ』も一切スピードを落とさず、距離が離せない。そうして逃げているうちにも『それ』は再生し、足が生え、スピードが上がる。晴は拳銃を取り出し『それ』に向ける、数発の銃弾を放ち、『それ』を弾き飛ばし、再び全速力で走り出す――


 


 ――時を前後し、音虎が森を探索していた頃、宗子は今日も今日とて音虎に会いに協会へ来ていた。宗子はしばらく応接室で待っていたが中々音虎はやってこない。今日は音虎が初めての任務だと言っていたので多少遅れるのは分かっていたがそれでももう30分以上れている。何かおかしいと思い応接室を出て少し奥に進んでみると何やら騒がしい。宗子がちらりと覗いてみるとちょうどそこに担架で運ばれている、その上には血まみれの音虎が横たわっていた。


 「音虎…?」


 宗子は消え入りそうな声でそう呟く、宗子はそこからそれ以上動けなかった。音虎重症であると、死にかけであると認めたくなかったのだ。あれは音虎ではないと頭の中で何度も繰り返す。だが、幼いころから音虎と過ごしてきた宗子には分かってしまう、あれは紛れもなく音虎だと。宗子はその場に立ち尽くし泣き出しそうになってしまう、そんな時奥から声が聞こえてくる、しかし宗子は気が動転していてはっきりと聞き取れない、だが不幸にも「このままじゃ死ぬぞ!!」という言葉が、そこだけが耳に入ってしまう。宗子はその場にいるのが怖くなり静かにその場を離れる。教会の外に出てどこかへと走り出す、宗子の眼には涙であふれていたが覚悟を決めたような眼をしていた。

読んでいただきありがとうございます、もしよければブックマーク等、よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ