音虎と夏依
告知遅すぎてすみませんでしたッッ!女子会を予定してましたが思いの外進行が遅かったため次回になります、すみません。
「戦闘服!?なにそれかっこいい!」
「それぞれの戦闘スタイルにあったオーダーメイドのものよ。」
「わー楽しみー!それってどこで作るんですか?」
「工房で作ってるのよ、だから今からそこにいくわ。」
「はーい!」
音虎はルンルンしながら廊下を歩く、それを自分の娘かのように晴と俊助は眺めている。
「ねぇ俊助。」
「ん?どうした晴姐。」
「女の子でも戦闘服ってテンション上がるのね、てっきり男の子だけだと思ってたわ。」
「中学生だろ?年齢的にそう言う年頃だろ。」
「厨二病ってやつなのね。」
音虎はそんな2人の会話も聞こえないほど先に進んでいたがT字路に差し掛かったところで立ち止まり2人が来るのを待っていた。
「あの…工房ってどっちですか?」
「右よ。」
「はーい。」
右へ曲がり少し進むと工房と書かれた扉が見えてきた。中からは機械を動かすエンジン音や何かを叩きつける音など轟音が響いていた。
「晴姉さん、すごい音してるんですけど。」
「いつもよ、気にしないで。」
そういうと晴はガチャリとドアを開ける、そこにはむさい男どもが機械を手に持ち何かを作っている様子があった。そこで1人の作業服姿の男がこちらにきて話しかける。
「戦闘服の採寸ですかい?局長呼んできやす!」
「はーいお願いするわ。」
そう言うと男は奥へ走って行った、そしてすぐに夏依を連れて来るが夏依は恥ずかしいのか少し抵抗していた。音虎はそれを見て夏依に呼びかける。
「夏依ちゃーん!」
「あ…音虎…ちゃん。」
「局長、知り合いですかい?」
「知り合いというか…その…」
夏依はチラリとこちらを向く、音虎は笑顔で軽く頷く。
「友…達…」
「局長…ついにご友人が出来たんすね…」
男はポロポロと涙を流して喜んでいる、ふと周りを見ると他の男達も感極まり拍手をしながら嬉し泣きしていた。
「やめろー!」
夏依が顔を赤くし叫び近くにいた男にぐーで殴る。男はそれを片手で受け止めて夏依をなだめる。
「まぁまぁ局長、仕事っすよ。ほらお客さん待たせてる。」
「後で覚えとけよぉ…」
2人は音虎達の前へやってくる。
「いやーお見苦しいところをお見せしました。私技術局副局長を勤めております海老子川蓮二郎と申します。新守護者さんよろしくお願いしやす。」
そう言って海老子川は深くお辞儀をするので音虎は少し困ってしまい反応に困っている。そこへ夏依が話しかける。
「音虎ちゃん…この人いつもこうだからあんまり気にしないで雑に扱うくらいでいいよ。」
「あ、局長ひどい!」
「音虎ちゃん…いこ。」
海老子川を無視し夏依は音虎の手を引いて奥の個室と連れて行く。そこはメジャーなどの採寸道具が置いてあるだけの殺風景な部屋だった。
「音虎ちゃん…上脱いで。」
「へ?」
「採寸するから…上来てると測れない。」
「そっか、了解。」
そう言うと音虎は服を脱いで、上半身はスポブラだけの姿になる。夏依が採寸道具を持って音虎の後ろへ回る、その背中を見た時夏依は絶句してしまう。音虎の背中には夥しい数の何か大きなものが刺さったかのような傷痕があったからだ。
「音虎ちゃん…これって…」
「あー、昔崖から落っこちちゃってさ。その時に木の破片みたいなのが刺さっちゃったらしくて」
「らしい…って?」
「落っこちた時の衝撃であんま覚えてなくてさ。」
「そうなんだ…。」
そう言いながら夏依は採寸を始め、背の高さ、足の長さ太さ、胸の大きさ、ウエストその全てを測る。
(以外と体つき細いんだ…ダボっとした服着てるからわかんなかったや。)
「音虎ちゃんって…以外と細いんだね…。」
「ふふん、シンデレラバストってやつだよ。」
「誇ることじゃ無いと思うよ…。」
「うるさいやい。」
そんな会話をしているうちに採寸が終わる、夏依は用紙に記録を書き留め音虎に訪ねる。
「戦闘スタイルって…どんな感じ?」
「えーと、爪?で戦う感じかな、動き回る感じで戦いたいかも。」
「了解…これで終わりかな。出来上がったら…伝えるね。」
「了解〜。」
音虎は服を着て採寸していた部屋を出て晴たちと合流する、そこには初めて見る男性が2人と共に立っていた。スーツ姿でメガネをかけて黒髪をオールバックにしており、それはまるでビジネスマンのお手本のような姿だ。音虎は晴に尋ねる。
「晴姉さん、その人だれ?」
「あぁ、音虎ちゃんおかえり。この子は白久保聡太。私の弟よ。」
「えー!晴さん弟いたんですか!?」
「そうよ。ね、聡太。」
「兄貴、子供扱いはやめてくれ。もうすぐ俺も30だ。」
「お姉さんと呼びなさい、いつも言ってるでしょ。」
「兄貴は兄貴だろ。」
「可愛くない子ねぇ。」
「30歳に可愛さを求めるなよ。」
「ほんと可愛くないわねぇ。」
そう言いながら晴は聡太にヘッドロックをかましている、そして技術局の人たちはこれを笑いながら見ている。そんな中、聡太が海老子川に話しかける。
「頼んでたやつ出来たんだろ?受け取りに来たんだ。」
「お、おう。とってくるがその体勢キツくないのか?」
「キツい、腰にくる。」
「晴姐、離してやってくれ。このままじゃせっかく作ったやつを使ってくれるやつがいなくなる。」
「しょーがないわねぇ、えびちゃんに感謝しなさい。」
そう言い晴は聡太を離す、聡太は腰をさすりながら体を起こす。
「海老、取り行くぞ。」
そう言うと聡太は海老子川を連れて工房の奥へと進んでゆく。それを見届けると晴は音虎に話しかける。
「採寸とかは済んだ?」
「はい、済みました。」
「それじゃ今日やることは終わりね。ほんとは今日音虎ちゃんの歓迎会するつもりだったんだけどみんな出払っちゃってるのよね。こっちに来たばっかりなのにすぐ歓迎会できなくてごめんね、代わりに今日好きなもの作ってあげる。」
「ほんと!?じゃあ、久しぶりに晴姉さんのナポリタン食べたい!」
「いいわよ〜、作っとくから先お風呂入っちゃいなさい。」
「はーい。」
そう言うと晴は食堂へ、音虎は着替えを取りに自室に向かう。晴は食堂へ向かう途中、2人の世話をしていた頃を思い出す。突然任された見知らぬ2人の子供の世話、なかなか懐いてくれず怖がられていた。でも、時間が経つに連れて心を開いてくれて今では姉のように慕ってくれている。
「たしか、初めて作ってあげた料理がナポリタンだったかしら。音虎ちゃんあれすきだったわねぇ、1週間に一回はせがまれてたっけ…。あれからもう9年経つのね、2人とも大きくなるわけだわ。さーて久しぶりに頑張りますかぁ!」
そう言い晴はエプロンを着て台所へと入ってゆく。
一方音虎は部屋着を取り寮の大浴場に入ってゆく、そこはまさにスーパー銭湯といった内装になっており、そういうところにあまりいったことの無い音虎は好奇の目を向けている。あたりを見渡しても誰もおらず荷物も置いていないようで一番風呂の権利を得たようだ。音虎は服を脱ぎタオルを持って風呂場へ向かう。そこには大きな浴槽が1つとシャワーが8個ほど並んでいる、そこには誰もおらず一番風呂は確実だ。上機嫌になり体を洗っていると脱衣所から声が聞こえてくる。そちらへ目を向けると夏依と雫が風呂場に入ってきていた。夏依は雫の手を引っぱっており雫を無理矢理連れてきたように見える。
「もう、夏依ちゃんったら強引ね。」
「こうでもしないと入らないでしょ。」
「“いつも”はちゃんと入ってますぅ。」
雫は少し煽るような表情と言い方で返事をする、それを見て呆れたように夏依は言う。
「今日は?」
「いやーそのーね?」
雫は目を左に寄せ苦笑いしている。
「広報がそんなんでどうするの…」
「別に香水つければバレないし…明日そんな仕事ないし…」
雫が言い訳をし夏依がそれを咎めている、それを見て音虎は年齢差的に立場が逆なのが正しいのではと疑問を浮かべる。しかし当人らはそんなこと微塵も感じている様子はない、むしろこれが日常のように見える。好奇の目で2人を見ていると2人がこちらに近づいてくる。
「音虎ちゃんからも…言ってあげてよ。広報なのにそんなんでいいのかっ…て。」
「まぁお風呂は毎日入った方がいいですよ。」
「はーい…」
雫は音虎の隣に座って体を洗い始める。夏依は一呼吸おき勇気を出して音虎に聞く。
「せ…背中洗おうか…?」
「ありがとーお願いするよ。」
「う、うん。」
その会話を聞き雫は口を大きく開けて驚き絶望したかのような表情をしていた。
(美味しい役回り持ってかれたぁぁぁぁ!いつの間にこんな仲良くなってんのぉぉぉ!?)
そんなことを考え酷い顔でこちらを見てくる雫を見て音虎は夏依に聞く。
「雫さん、すごい顔してるんだけど大丈夫?」
「あぁ…大丈夫だよ。ロクでもないこと考えてるだけだから。」
「夏依ちゃん酷いっ!私をなんだと思ってるのっ!?」
雫がわざとらしく被害者ぶると夏依は呆れたような口調で返す。
「ダメ女。」
「まーったくこの子は、目上の人に対する尊敬ってもんはないのかしらね?」
「あるよ、雫さんが目上じゃないだけ。」
「はー!まーたそんな生意気なことを!」
そう言いながら雫は夏依にシャワーのお湯を向ける、それは夏依の顔面に直撃し、しぶきが飛び散る。そしてそのしぶきが音虎の体の泡を中途半端に流した。泡の合間から音虎の古傷が見え雫がそれについて問いかける。
「音虎ちゃん、その背中の傷どうしたの?」
「昔、崖から落ちちゃって、その時に背中に木の枝とかが刺さっちゃってたみたいで。」
「へぇーよく生きてたわね。」
「昔からそういうところの運は強いんですよねー。」
「いいことよーそれ。大概のことは生きてりゃなんとかなるんだから。」
そう言い、雫は夏依の方を向いて笑みを浮かべながら話しかける。
「ねぇ、私今すごい良いこと言ったよね?」
「今ので台無しだよ。」
夏依は呆れた顔をし音虎の泡を洗い流しながら答える。夏依が泡を流し終えると音虎は夏依を自分のいた風呂イスに座らせる。
「お返しに背中洗うよ。」
「いや…悪いよ。」
「いいって、やられっぱなしじゃ嫌だし。」
「じゃ、じゃあお願い…」
返事を聞き音虎は夏依の背中を洗い始める、体の側面を洗っている時ピタリと音虎の手が止まる、その位置はちょうど胸の位置だった。
「…夏依ちゃんって何カップ?」
「え…B…だけど…。」
「クッ…負けた…。仲間だと思ってたのに…。」
「ちなみに…音虎ちゃんは何カップなの?」
「AAだよ。」
「なんで勝てると思ったの…。」
そのやりとりを見て隣で雫さんがゲラゲラ笑っている。それを見た2人は白い目を向けコソコソ話す。
「巨乳が笑ってるよ。」
「こっちの気も知らずにね。」
「やな大人だね。」
「ね。」
「こーゆー人が無意識のうちに人を傷つけるんだよ。」
「ネットの発言で1人くらい無意識で殺してるよ。」
「うわぁ酷い言われよう。もうちょっとこう、オブラートに包めなかった?」
「巨乳にかける慈悲はない。」
「ない。」
音虎は夏依の泡を流し終えると2人で湯船へと向かうそれに続くように雫も湯船へ向かう。3人が湯船に浸かりしばらく静寂が流れる。その静寂を破るように雫が2人に話しかける。
「ねぇねぇ見てー。」
そう言われ2人が雫の方を向くと上半身を湯船に沈め足から下を湯船から出して犬神家のポーズをしている。2人は唐突に現れた異様な光景に笑いが溢れそうになったが、ギリギリのところで押さえていた。その時、湯船の底から声が聞こえてくる。
「うぃうぅわうぃうぇ〜。」
おそらく犬神家と言いたいのであろう、ただの状況説明だが2人の腹筋を破壊するのには十分な威力であった。2人は大声で笑い出す、今まで静かだった風呂場に笑い声が響き渡る。湯船から顔を出した雫は得意げな顔をしているが、髪の毛が顔に掛かり貞子のようになっている。それがどう作用したのかはわからないが2人のツボにハマり、さらに笑いが加速していく。ひとしきり笑った後、2人は雫に話出す。
「急に変なことするのやめてよ!」
「びっくりするじゃん!」
「はははーごめーん。静寂が耐えきれなくって。」
「もー。」
そんな会話をしながら3人は風呂場を出て各々パジャマへと着替える。
「晴さんがご飯作ってくれてるから早くいきましょ。冷めたら良くないですし。」
「そうね、夏依ちゃーん。早く着替えてー。」
「裸で言うことじゃないでしょー!雫さんが早くしなさーい!」
「あちゃ、バレてた。」
3人はみなパジャマに着替え終わる、雫のパジャマシャツには胡瓜と書かれていた。
「雫さん、それダサくない?」
「人に見られないし別にいいのー。」
「まぁ雫さんがいいならいいけど。」
「夏依ちゃーん、行くわよー。」
「雫さん待ち。」
「相変わらず早いわね。」
「雫さんが遅いだけだよ。」
3人は食堂へと夕食を食べに向かう。食堂では晴が料理を作り終えていた――
継続して読んでいただけるのならブックマークしていただけると幸いです
あの人ほんとに広報なんすかね