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肆天の守護者-虎軍奮闘記-  作者: 藤沢蓮
3/10

夢、目的そして不安

遅くなりました!お楽しみください!


怪威が学校を襲撃する事件から3日経ったある日、音虎と宗子は用心棒協会本部に呼び出された。どうやら事件の事で聞きたいことがあるらしい、応接間に俊助含む3人の用心棒が集結していた。


「二人が来る前に事実確認するわよ。」


 そう言った紫色の髪をオールバックにし触覚を垂らして派手なスーツを着たオカマの用心棒の名前は白久保晴しらくぼはる、西古の東側を統括する用心棒協会3トップのうちの1人だ。


「白風って娘が選ばれたんだっけか?」


 そう俊助に問いかけるガタイのいいスキンヘッドの男は柄シャツを着ており無精髭を生やしている。そして顔には無数の傷跡がついており歴戦の猛者であることを物語る、そんな彼の名は芝泰西しばたいせい。西側を統括する用心棒だ。


「そうだな、初戦の功績は蟷螂型怪威2体、人型怪威第二魔装開放ってとこだな。まずまずってとこか。」


 問いかけに対し俊助が険しい顔で答える。何か引っ掛かることがあるように見える。


「どうした俊助、初回補正込みでも特に問題なさそうだが?」

「あいつはあの時1回死にかけてた、死の恐怖ってのは一度でも感じるとなかなか克服できないもんだ。よっぽどの戦う理由が無いと戦えねぇ。」


 そう話す俊助はどこか悲しい目をしていた。


 (白風…どこかで聞いたような…)


 晴は何か心当たりがあるようだが思い出せないでいた――


 ――所変わって音虎と宗子、二人は鬱蒼とした路地裏にいる。目の前には巨大なビルがあり蔦やらなんやらが絡み付いた扉がある。


「えーと裏口は…ここか。それにしてもこれからどうなるんだろうね。」


 音虎は不安そうな表情で宗子に話しかける。


「大丈夫だって、あの時だって二人で乗り切ったんだから。」


 宗子は微笑んで励ます、その顔は不安を消し去るほど暖かかった。二人が扉を開け建物の中に入ると細い廊下に双介が立っていた。


「や、二人とも。案内するよ。」

「ありがとうございます。」


 二人のお礼が同時に重なる。


「相変わらず仲良いね、それじゃ行こうか。」


 双介に連れられ二人は三人が待つ部屋へ向かう、その途中音虎が双介に尋ねる。


「なんで裏口から入らなきゃいけなかったんですか?」

「あぁ、それはマスコミが原因だね。」

「マスコミ…ですか。」

「そう、一般人がこの中入るだけですぐに根も葉もないこと書いてくるからねぇ。この前な姉さんが差し入れに来た時なんか〈一般人女性協会に駆け込む!怪威発生見逃しか!?〉なんて記事にしやがってね、無理矢理にも程があるよね。」


 そんな会話をしているうちに部屋に到着した。

 

「一人ずつ入れるように言われてるから…先に音虎君から入ろっか。」

「はーい。」


 そう言って音虎が部屋に入っていく、そこには晴、俊助、泰西の三人が座っていた。


「失礼しまーす。」

「どうぞ、そこに座って。」


 晴が返事をし席へ誘導する、その時音虎は晴の顔を見てハッと驚いたような顔をする。晴もそれを見てガタッと音を立てて立ち上がる。


「晴…姉…?」

「え、まさか音虎ちゃん?」


 どうやら二人は面識があり久しぶりの回合のようだ。音虎はうれしいようでその場でピョンピョン跳ねている。


「なんだ知り合いか?」


 泰西が二人に問いかける、それに晴が少し誇らしげに答える。


「昔、この子達の面倒見てたことあってね。確か8年前だったかしら?そうそう、宗子ちゃん元気してる?」

「はい!今日も一緒に来てます!」

「やっぱり!?キャー楽しみだわー!」


 二人は道端で出会った主婦かのように話し込む、そこの間に俊助が割って入る。


「晴姐、思い出話は後にして本題に入らないと。」


 晴と音虎は赤面し席に着く。それを見て泰西が話し始める。


「この前、学校で怪威と遭遇した時に白虎からの提案で守護者になった。ここまではあってるか?」

「はい」

「で、遭遇した怪威を二体撃破し人型怪威と交戦し負け殺されそうになったところに俊助が助けに入った。あってるか?」

「えと…私が倒したのは一体だけです。」


 その瞬間、部屋に静寂が走る。誰も音虎が二体倒したことを疑っていなかったようだ。困惑し、泰西が呟く


「じゃあ、一体誰が倒したんだ…」

「あの…もしかしたら宗ちゃんじゃないかなって…」


 その言葉で再び部屋に静寂が走る。すぐに晴が口を開く。


「宗子ちゃんって幻獣と契約してるの?」

「いや…そんな感じのことは言ってなかったです。」

「まぁ後で本人に聞けばいいわね。それじゃあ本題に入ろうかしら…。」


 晴は一息つきなにか覚悟を決めたように話出す。


「音虎ちゃん、守護者として戦う覚悟はある?」


 晴のその言葉は重く今までの軽口な様子ではない、それはこの決断の重大さを物語っていた。音虎もそれを理解しているようだった。


「正直…覚悟なんてものはないです…。でも、戦う理由ならあります、戦って守りたい人がいます。だから戦います。」


 音虎は静かに話したがその言葉は強さに溢れていた。それを見て晴は母親のように微笑む。


「わかったわ、音虎ちゃんがそう言うなら止める理由はないわね。頑張ってもらうわよ。」

「はい!」

「ふふっ、いい返事ね。それじゃこれからの流れを説明していくわね。まずこれから1ヶ月音虎ちゃんには泊まり込みで修行をしてもらうわ。明日着替えと荷物を持って裏口に来てちょうだい。」

「わかりました、何時くらいに着けばいいですか?」

「そうねぇ、12時くらいでいいかしら?」

「俺らはそう言うの疎いからよ、晴が全部決めてくれ。」


 俊助が軽く笑いながら答える、泰西が俊助の頭を叩き注意する。


「お前は組織のトップだろうが、疎くてどうする。」

「お前叩くこたぁねぇだろ。」

「いーやお前はこうでもしないと聞かないからな。」

「なんだとぉ!」


 晴と音虎の二人を放って二人は喧嘩を始めてしまう、それを見て呆れながら音虎へ話しかける。


「もううちのツートップがあれだから困っちゃうわよねぇ、それじゃまた明日よろしくね。5分くらい経ったら宗子ちゃん呼んでちょうだい。」

「はーいわかりましたー。」


 そう言って音虎は喧嘩してる大人2人を尻目に部屋を出る、ドアを出た先には双介と談笑する宗子の姿があった。音虎は嫉妬からかちょっとむくれた顔をするが何か思いつたかのようにニヤリと笑い宗子に後ろから忍び寄り飛びついた。


「わっ!何!?」

「えへへ〜ただいまぁ〜。」

「何だ音虎かぁ、おかえり。」


 宗子と音虎な輝いて見えるほどの笑顔で話しておりそれを横から見ていた双介は2人の微笑ましい姿に思わず笑みが溢れる。


「音虎はこれからどうするの?」

「守護者やるんだ、宗ちゃんこれからは私が守ってあげるよ。」


 音虎は自信満々の満面の笑みで宗子に話しているが、宗子は笑みの中に少し寂しさのような悲しさのような何かがあった。


「そうだ宗ちゃん、5分くらいしたら部屋入ってきてーって言ってたよ。」

「そっか、じゃあそろそろかな?」

「そうじゃないかな。あ、そうだ入ったらびっくりすると思うよ。」

「ほんとぉ?期待しとくねー。」


 そう言って部屋へ入っていく宗子をニヤニヤしながら見送る、そして部屋から「えー!」という声が聞こえると音虎はムフーと得意げになる。


「えー!晴姉さん!?」

「そうよ、久しぶりね。音虎ちゃんとはいい感じかしら?」

「そりゃもう仲良く過ごしてますよ。」

「よかった、それじゃこれからこの前の事件についていくつか質問してくわね。」

「あの…その前に一ついいですか?」

「ん?何かしら?」

「横で正座してる2人って…」


 そう言って目線を向けた先には頭にたんこぶを作り正座させられている泰西と俊助がいた。


「あーちょっとね」


 晴は笑顔で濁す、宗子はそれを見てこれ以上何も言わない方がいいことを察する。


「じゃあ始めるわね。」

「はい、お願いします。」

「事件の時怪我してたけどその後どう?違和感とかないかしら?」

「特にないですね普段どうりです。」

「それはよかったわ、あとは宗子ちゃんは何か幻獣と契約したりした?」


 その質問に泰西と俊助の顔が険しくなる、やはりそれほど重要なのだろう。


「してないです」

「そうなのねありがとう。」

 (これはもう一度調査が必要そうね、幻獣と契約してないとなると蟷螂型を一撃で仕留めるのは不可能に近い…音虎ちゃんが倒してないとなると第三者の可能性が高そうね)


 晴が考え込むのをみて宗子は不思議に思ったのかジーっと見つめている、それに気づいた晴はすぐに話を始める。


「ごめんなさいね少し考え込んじゃって、音虎ちゃんとは今も一緒に住んでるのよね?」

「はい、今も一緒に住んでます。」

「それじゃこれからのことについて話しておくわね、音虎ちゃんが守護者になることになったから明日から修行として1ヶ月ここで生活してもらうことになるわ。学校とかにはいつも通り言ってもらうし1ヶ月たったら家に戻れるから安心してね。」

「わかりました。」


 そう返事をする宗子の顔は少し暗かった、それを見て晴は小声で耳打ちする。


「やっぱり寂しい?」

「晴ねぇさんには敵いませんね…」

「じゃあこれ渡しとくわね、関係者証。これあれば様子見に来れるからいつでも来ていいわよ。」


 その言葉を聞き宗子の顔は太陽のように明るくなる。


「ありがとうございます!」

「いいってことよ、それじゃこれで終わりよ。」

「はーい、ありがとうございましたー。」


 そう言って部屋から出ると目の前に音虎が待ち構えていた、しかし宗子は最後まで部屋の中を向いており前を向いた頃には音虎を自らの胸の中にうずめる形になっていた。


「…嫌味かこんにゃろー!」


 そういうと音虎は宗子の胸を下から突き上げる、それにより宗子の胸は上下に揺れ宗子は変な声が出てしまう。


「ひゃっ!もう、何するのー!」

「ベーだ!あんなことする方がわるいんだろー!」

「あれは事故でしょ!もう…悔しがりなんだからぁ〜。」


 宗子は音虎の頭をうりうりしている、対して音虎は両頬を膨らませている。それを部屋の中から桜を見るような笑顔で晴が眺める、その後ろには同じような顔で泰西と俊助が眺めている。


「2人とも、お茶にしましょうか。」

「そうだな、淹れてくる。」


 そういうと3人は奥へと戻っていった。音虎と宗子は微笑ましい言い争いをしながら外へと歩いていく。2人が外に出る頃言い争いは終わり今日の夜ご飯の話題になっていた。


「音虎が守護者になるからね、今日の夜ご飯は贅沢しよー!」

「おー!楽しみー!」


 2人は家へ歩みを進める、しばらく歩いた先に亀田商店という店が見えてくる。そこはよく言えばレトロ悪く言えばボロボロな店だ、その店の前を白髪のおじいさんが箒で履いている。


「玄爺さーん」

「おぉ2人とも、いらっしゃい。」


 そう返事をした優しそうなお爺さんは亀田玄三郎かめだげんざぶろう、駄菓子屋を営む齢82歳だ。そんな彼だが親のいない2人を一時期育てていたことがあり、2人にとっては親族のようなものなのだ。


「聞いてよ、音虎が守護者になるんだ!だから今日はお祝いでご馳走をつくるの!」

「おぉそうかいだったらこれ、持っていきなさい。2人の大好きな肉饅じゃ。」

「いいの!?やったー!」


 2人は玄爺さんが作る肉饅が大好きでことあるごとに買っていたのだ、そんな肉饅をサービスしてもらい2人は有頂天になって家へと向かう。その後ろ姿を玄爺さんはどこか険しさのある顔で見守っている。2人はルンルンで家への帰路を進みしばらくすると家が見えてくる。


「ただいまー!」


 音虎は勢いよくドアを開けて家へあがる、それをみて宗子はクスッと笑いう。


「おかえり。」


 2人は協力して晩御飯の用意をする、ローストビーフ、アヒージョなど宗子の得意料理が食卓に並ぶ。2人はそれを美味しそうに頬張る。


「んー!さすが宗ちゃん!もうこれお店だせるよぉ!」


 音虎は美味しさのあまり腕をブンブン振っている。

 

「いやいやそこまでじゃないでしょー。」

「いけるいける、いつかレストラン作ろうよ!」

「音虎、いつもそれ言ってるね。」

「でもやりたいでしょ?」

「yesよりのyesだね。」

「でしょぉ?宗ちゃんが料理担当でー私が接客担当。」

「音虎…人見知りなのにできる?」

「バカにしてんのかー?」

「どうかなー?」

「もー!」


 音虎は頬を膨らませ宗子をポカポカ叩いている。


「あはは、痛い痛いやめて〜。」

「全く…昔よりはマシになってるんだからね?」

「でもまだ初対面の人には緊張するでしょ?これから1ヶ月あんまり会えないからあんまりサポートできないけど大丈夫?」

「まあ晴姉いるし大丈夫でしょ。」

「晴姉さんいるなら大丈夫か。」


 2人は晩御飯を食べ終え就寝と明日から1ヶ月間の生活への準備を始める。着替え、歯ブラシ、充電器…さまざまなものを鞄へ詰めるその様子はさながら旅行前のようであった、だが音虎のワクワクとした表情の中には少しばかり不安があるようにも見える、さらに宗子は笑顔ではいるものの音虎よりも不安の色が強くみえていた。それも当たり前であろう、これからは音虎ら命をかけて戦わなければいけない。さらに宗子はそれを見ているだけしかできない、辛くないはずがないのだ。


「ふぅ…大体終わったね。」

「そうだね汗かいちゃったよ。」

「それじゃお風呂入ろっか。」

「だね〜。」


 2人は脱衣所へ向かい服を脱ぎ風呂に入る。その中で宗子が音虎に問いかける。


「音虎はさ、怖くないの?」

「んー…少しね。でも大丈夫、宗ちゃんが昔守ってくれたみたいに頑張るから。」

「――そっか…。」


 そう返す宗子の表情はどこか悲しそうだった――


 ――翌日、音虎と宗子は荷物を持ち用心棒協会へ向かう、そこには晴と双介がドアの前で待っていた。


「いらっしゃい。」

「はい!これからよろしくお願いします!」


 音虎は深々とお辞儀をする、それに合わせて宗子も軽くお辞儀をし晴に荷物を渡す。


「音虎のことよろしくお願いします。」

「えぇ、任せて。」


 晴は優しそうに答える。

 音虎は荷物を持ち直し、宗子の方をくるりと振り向く。


「行ってきます!」

「いってらっしゃい。」

これからは1ヶ月1話を目標にしますがリアルの状況次第で早くも遅くもなります

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