表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
肆天の守護者-虎軍奮闘記-  作者: 藤沢蓮
11/11

達成

長期間の失踪すみませんでした


 音虎は傷から回復してたが、怪我を癒す過程で多量の筋肉を分解してしまったためリハビリが必要となった。


「晴姉〜いつまでこれやればいいの〜?流石にもう普通に歩けるよ〜。」


 平行棒に手を触れながら歩く音虎は不満げな顔をしている。


「飽きてもやらなきゃダメよ、ここでこれサボった治るの遅くなるわよ。」

「もっとパッと終わる奴ないの〜?」


 音虎が平行棒の片側に寄りかかって聞く、晴は頭を掻きながら


「あるにはあるけど、難しいわよ?」


 と言い、それを聞いた音虎は身を乗り出しながら


「やるやる!」


 と言う、それを見た晴が忠告をする。


「いいけど本当に難しいわよ、それと……」

「それと?」

「乗り出しすぎると転ぶわよ。」


 それと同時に音虎はバランスを崩し、前に倒れお手本のような転倒をする。


「イテテ……」


 そう言いながら音虎はゆっくりと立ち上がる、以前の機敏な動きからは想像つかないほどゆっくりだった。やはりまだ本調子とは程遠いようだ。春に連れられ着いた先はトレーニングルームだ。


「それじゃあ、教えて行くわよ。」

「お願いしまーす。」

「先に言っておくけど難易度ベリーハードよ。ダメ元で教えるだけだから出来たらラッキーくらいでいいわよ。」

「そんなに難しいのか……。」

「えぇ、協会内でも数えるほどの用心棒しか使えないわ。」


 音虎はその後の苦労も知らずにワクワクしている。


「今から教える技術の名前は『馬力』、身体能力を一時的に向上させるものよ。」

「なんか、思ってたよりシンプルなんだね。」

「えぇ、効果だけじゃなくてやり方もシンプルよ。体内に流れる魔素の流れをより早くするだけ。たったそれだけよ。」

「意外と簡単そうだね。」

「1回やってみなさい?思ってる以上に難しいわよ。」


 音虎はその場で目を瞑り体内へ意識を集中させる。やがて体内の魔素の流れを感じられる、あとはこの魔素の流れを加速させるだけ……どうやって?魔素を堰き止める時とは話がまるで違う。あれは魔素の一部を操作出来れば良かった、しかし流れを加速させるとなると魔素全てを操作しなければならない。それは、体内の赤血球1つ1つを自由に動かすのとほぼ同じだ。もはや人間業では無い。だが、音虎はふと「魔素の一部だけを加速させてみたらどうなるのか」と考えた。音虎は一度大きく深呼吸をし、やってみる。しかし思いの外難しい、たった1粒の魔素を経路に沿って動かす。イライラ棒のようなものである、さらにそれを高速でやるのだから余計難しい。30分は経っただろうか段々と動かすのにも慣れてきた。そのおかげか少しの間だけだが動かせるようになってきた、しかし、体が動かせない。正確に言うと体を動かすと魔素を動かす方に意識が回らなくなってしまうのだ。何回か試していると肩にポンと手が当たる。


「頑張るのはいいけどちょっと休憩しましょ?」


 それを聞いて少し落ち着いた音虎はその場に座り込む、周りには汗が床に落ちた痕があり相当汗をかいていたんだとわかる。疲れてぼーっとしている音虎に晴がペットボトルの水を差し出す。


「水くらいは飲んどきなさい。」

「うん……」

「どう?出来そう?」

「全っ然、1粒動かすだけでも精一杯だよ……」

「動かせているだけすごいわよ。それに、魔素を粒で認識出来てるのはすごいわよ。」

「ホント⁉︎」


 音虎はとても喜んで、座りながらはしゃいでいる。その姿を微笑ましく眺めていた晴立ち上がる。


「そろそろ再開?」

「いいえ、お手本でも見せようと思って。」

「使えるの?」

「じゃなきゃ教えてないわよ。」

「たしかに。」


 晴が奥の倉庫からサンドバッグを持って来た。ゆっくりと右の拳を引き、狙いを定める。次の瞬間、拳がサンドバッグを叩きサンドバッグが大きく揺れる。


「これが馬力をかけて無い時のものね。」


 (元からすごい力じゃん……)音虎はそう思った。


「で、次が馬力をかけたものよ。」


 そう言って晴は深く深呼吸をし、目を瞑る。またゆっくりと右手を引き、構える。目を開き、狙いを定める。音虎はその一連の流れを見て1つのことに気づく、晴の腕が微かに薄紫に光っている。音虎がそう気づくと同時に拳が打ち出される。強化された腕から打ち出される拳は先ほどとは比べ物にならないほど速く、破裂音とともに部屋の中に突風を巻き起こした。音虎は思わず一瞬目をつぶってしまう、目を開けるとそこには袋が破け中身があたり一面に飛び散ったサンドバッグの亡骸があった。音虎は思わず絶句してしまう。


「とまあ、これが私のできる最大出力ね。」

「サンドバッグが……」

「どうせ捨てる予定だったし大丈夫よ。」


 そうじゃないんだけどなぁと音虎は思った。


「ところで何か気付いたことあるかしら。」

「なんか…光ってたよね。」

「正解よ、馬力を使うとうっすら光るの。」

「すごーい。でも、あんま参考にならないかも……」

「あら、そう?」

「光るってわかったってやり方に進展が無いよー。」

「…失念してたわ。」

「ちょっとぉ?」

「…まぁそう簡単にできる物じゃ無いってことよ。」


 音虎は納得できないといった顔をして練習に戻る。再び目を瞑り再び体内へ意識を向ける。特にやり方にヒントは無かったのでひとまず我武者羅にやってみることにした。体感で1時間は経っただろうか、経路に沿って加速させることには慣れて来た。しかし、全身へ意識を向けることは変わらず身体が動かせない。ここで音虎に一つのアイデアが浮かぶ、全身ではなく一部だけに意識を集中させればいいのではないかと。思いついたら即行動、音虎は早速操作している魔素を経路から外そうとする。その瞬間、音虎の腕に激痛が走る。


「痛ッ!!」


 音虎は思わずその場に座り込む。サンドバッグの残骸を掃除していた晴がすぐに駆けつける。


「大丈夫!?」

「急に…腕が…。」

「何やろうとしてそうなったか教えて?」

「腕だけで馬力やろうとして、腕で周回させようとしたら…」

「音虎ちゃん、それはもう二度とやらないで。」

「え?」

「腕を切り落とさなきゃ行けなくなるわよ。」


 音虎顔が一瞬で青ざめる、冷や汗が溢れ出し、小刻みに震え始める。晴が急いで付け加える。


「最悪、最悪の話よ。一瞬だけなら全然大丈夫だから、ね?落ち着いて?」


 音虎はほっとした顔をして、「よかったぁ」と呟く。


「でも、よく気付いたわね。」

「え?」

「馬力を全体じゃなくて一部分だけかけたら楽って。」

「全身に集中するの無理だなって思って、それでやってみた。」

「すごいじゃなーい。」


 晴はワシャワシャと頭を撫でる、音虎はエヘヘ…と嬉しそうにしている。その時だった、ドォンと爆発音が響き渡り、協会の建物を揺らす。


「ちょっと待ってて。」


 そう言って晴は爆発が起こった方向へと走り出す。音虎に返事をする間を与えないほど早く、晴は部屋から飛び出ていった。音虎はオロオロしながら座り込んでいる。しばらくして、館内放送がかかる。


 『技術局で爆発、多分いつも通り実験失敗。一応火の手が無いか誰か確認行ってちょうだい。』


 と、晴の声。音虎はホッとしてゆっくり立ち上がる、落ち着いて脚に集中する。しかし、前とは違い音虎は脚の一点だけに意識を絞る。その部分で一気に魔素を加速させ脚の間だけ循環を早めた、その結果、今までより遥かにやりやすくなった。音虎はそっと目を開ける、意識は依然集中している。そっと脚を動かしてみる。


「…軽い。」


 まるで体重が無くなったかのように脚が軽くなった、一歩踏み出すと大怪我明けとは思えないほど動きやすい。それどころか怪我をする前よりも速くスムーズに動ける。音虎は楽しくなって10分程部屋を駆け回っていた。


「すごい…全然息切れしない。てか…晴姉さん全然戻ってこない。」


 音虎は数秒考える。


「んー…暇だし技術局行こ。」


 音虎が技術局に着くと何やら盛り上がっている。海老子川を見つけ話しかける。


「何があったんですか?」

「おぉ!白風さん!それは局長から聞くのがいいと思いますよ。」

「ありがと、聞いてくる。」


 音虎は少し進んだ後、一瞬止まって振り向く。


「夏依ちゃんどこ?」

「まっすぐ行って突き当たりを右に行った煙出てる部屋ですよー。」

「ありがとー。」


 音虎は小走りで言われた方に向かう。


「この前大怪我してたのに、若いってすげえなぁ。」


 音虎は言われた通り突き当たりを曲がるとドアの隙間からうっすらと煙が立っている部屋がある。音虎はそーっとドア開けてみるとここにくるまでの廊下が薄暗い雰囲気だったのもあるが眩しく感じて一瞬目が眩んでしまう。やがて目が慣れてくるとそこには赤色に輝く小さな物体と椅子に座ってそれを嬉しそうに眺めている夏依がいた。


「夏依ちゃーん。」


 音虎がそう呼びかけると夏依はビクッとしてこちらを見る。


「びっくりした…いつからいた…?」

「今来たとこー。」

「そっか、ところでこれ何?」

「これはね…


 夏依は早口でぺらぺらと理論や構造などを説明していくが、まさに専門用語のオンパレード。音虎は全くと言っていいほど理解出来なかった。夏依は途中でハッとしたような顔をし、恐る恐る音虎の方を見る。音虎は理解できてないことが見て取れる顔をしていた。


「ご…ごめん……わけ…分かんないよね…。」

「分かんないけどなんか凄いことなんだよね。それは分かるよ。」

「えっと…前…紅鎌について話したのは…覚えてる?」

「もちろん。」

「ざっくり言うとあれの研究が大きく進んだの。」

「凄いじゃん!!おめでとう!!」

「まだ実用化には程遠いけどね…。」


 その時ドアが音を立てて勢いよく開く、そこには少し息の上がった晴がいた。


「もー!勝手にどっか行っちゃだめでしょ!!心配するじゃない!!」

「だって全然戻ってこなかったじゃーん。」

「それでもダメ。怪我したらどうするの?」

「ごめんなさーい。」

「まったく…。」

「晴さん、手に持ってるそれって?」


 夏依が晴の持っている一通の封筒に気づく。


「あぁ、さっき郵便が来てね。音虎ちゃん当てに。」

「もしかして。」


 晴が音虎に差し出すと音虎は一瞬で受け取る。


「やっぱり!宗ちゃんからだ!!」


 音虎が封筒を開けると鍵と共に手紙が一枚入っていた。



 

 音虎へ


 手紙もらったばっかりですごく申し訳ないんだけど南学校への交換留学生に選ばれちゃったからしばらく家に帰れなくなっちゃった。

 今日からもう行かなきゃいけないから、家に置いてってた鍵は一緒に送っとくから忘れ物あれば自分でよろしくね。

 怪我はちゃんと完治してから運動するようにね、治りかけた時に調子乗って走って怪我し直すとかやめてね。


 ps.晴姉さんに迷惑かけないようにね。野菜も好き嫌いせずに食べなよ。



「親か!!」


 音虎はあまりの過保護っぷりについ大声でツッコミを入れた。晴がずいと顔を寄せて手紙を見る。


「ありゃりゃータイミング悪いわね、まぁこれで回復に専念できるわね。」


 音虎は早く会いたかったのか残念そうな顔をしている。


「ところで、よくここまで一人で来れたわね。」

「それはね〜」


 音虎はそう言って足に集中し『馬力』をかける。さっきよりも簡単に出来たようにも感じる。


「馬力できるようになったよ!」

「えー!ほんとに!?すごいじゃなーい!!」


 晴は音虎を強く抱きしめる。しばらく抱きしめた後ハッと何かを思い出した顔をする。


「音虎ちゃん…もしかして馬力かけたまま走り回ったりした?」

「…してないよ。」

「ならよかった、走り回ってたら明日は筋肉痛で動けないわよ。」

「えっ…」


 音虎は晴に聞こえないくらいの声が漏れた。しかしすぐ横にいた夏依は何か察した顔をしていた。

 当然翌日筋肉痛で悶え苦しんだのは言うまでも無い…

また月一投稿頑張るので読んでください

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ