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肆天の守護者-虎軍奮闘記-  作者: 藤沢蓮
10/11

復帰

今回短いですがお許しください


暗闇の中に宗子が立っている、音虎は宗子に向かって歩いている。音虎が宗子に近づくと宗子はくるりと後ろを向き歩き始める、音虎は宗子を追いかける様に歩く、差は縮まらない。差を縮めようと音虎が走っても、宗子も走り出す、差は一定縮まらない――


「待って!」


 そう言い音虎は飛び起きる、脇腹に激しい痛みが走る。音虎は反射的に後ろに倒れ込む、見上げると無機質な天井、自分を周りから仕切る様に取り囲むカーテン、ここは病室なんだと気付かされる。なんとか痛みに耐えて体を起こし周りを見ても誰もいない、時計を見ると2時20分を刺している。お昼すぎかと思ったが、周りがやけに静かだ。窓を見るとカーテンが掛かっているが光が一切差し込んでいない、夜だ。夜の2時に起きてしまった。音虎は暇に任せて、なにがあったかをゆっくり思い出すことにした、まず、威界に任務に行きゲート周りの怪威を撃退したことを思い出す。じゃあどこで脇腹に怪我をしたのか、その後の探査任務だ。探査任務でこんなに怪我をするのかと考えていると病室のドアが開く音がする、誰だろうかと考えるまもなく、走るようなスピードで足音がこちらへ近づいてくる。病院で走るなんて…と考えているうちに周りを囲うように広がってカーテンが開く、そこには走ってきて汗を掻き息が上がっている蛇達がいた。


「やっと起きた…よかった…。」

「やっとって…そんなに寝てたんですか?」

「1週間くらいかな、体に違和感とか無い?」


 蛇達はすぐに呼吸を整え、音虎に問診を始める。音虎は脇腹の痛みが強いこと、それから体がいつもより重く感じることを伝える。ちょうど伝え終わった頃、ガラリと扉が開き病室に晴が入ってくる。


「まったく、あなたが病室走ってどうするのよ。いつも病室で走るなって言ってるくせに。」

「面目ない…」


 蛇達が露骨にしょぼんとする、常に糸目なのに表情豊かで面白い人だなと音虎が眺めていると急にキリッとした顔になり、先程伝えた違和感の原因を説明し出す。


「脇腹の痛みはそこに深い傷があるからだけど覚えてないかな?任務の時に刺されたって聞いてるけど。」

「晴姉が逃げてって言ったのは覚えてるんですけど、その後からは何も覚えてないかな。まぁ大体は察してますけど。」

「そっか、まぁ刺されたのも後ろからだったし覚えてないのもしょうがないかもね。それで、体が重いのは治療の影響かな。僕の『白蛇の治』は本人の自己治癒力を高めるから体力を消費しちゃうんだ、白風さんはここ1週間寝たきりだったしまともに食事もとってない。だから体がすごく重く感じるんだよ。」


 音虎は蛇達をじっと見つめて「お医者さんみたい…」と呟く。それを聞き晴はクスリと笑い、蛇達は苦笑いを浮かべる。音虎が不思議そうにしていると晴が口を開く。


「蛇達ちゃんは用心棒協会医療局局長なのよ。お医者さんみたい、じゃなくて本当にお医者さんよ。まぁ初顔合わせの場に居なかったから分からないのもしょうがないけどね。」

「あの時は緊急オペあったんだからしょうがないじゃ無いですか。」

「でもその後挨拶に行ってないわよね。」

「うっ…どうせいつか会えると思ってて…」

「まったく…あなた局長なんだから、そこのところ自覚持ちなさいよ?」

「すみません…」


 蛇達が塩らしくなっているのを見て面白いなと思っているが音虎は何か忘れているような気がしてならない。二人が何か談笑しているのを横目に少し考えればすぐに答えは出た。


「宗ちゃん!宗ちゃんってあの日どうしたんですか!?」

「宗子ちゃん?入館記録はあったから来てはいたと思うわよ?ちょうどその時ゴタゴタしてたらしくて来た後どうしてたかは分かんないんだけど気づいた時には帰ってたわ。」

「そう…ですか…」

「で、今日の昼にそこに置いてあるフルーツ持って来てたわ。」

「何か言ってました!?」

「学校の用事で忙しいからしばらく顔出せないって、後、音虎が起きたら手紙欲しいって。」

「紙とペンください。」


 少し食い気味だ、晴が取りに行こうとした時蛇達が静止する。


「気が早い、治療が先。」


 晴は一旦近くの椅子に腰を下ろす。蛇達は一息置き、話出す。


「いい?治療でたくさんのエネルギーを使ったせいで今白風さんの体は今ボロボロなんだ。だからまずはエネルギー補給しないと。ご飯の用意してもらってるから手紙書くのはその後。多分、そろそろご飯ができる頃だからね。」


 するとちょうどその時、病室の扉が開く音がする。音虎が目を向けるとお盆の上にご飯と炒め物、味噌汁を乗せてこちらに歩いてくる俊助がいた。


「言われた通り作ったけどよ、さっき起きた奴にスタミナ炒めって大丈夫なのか?こういう時って大体お粥とかうどんとかじゃねぇのか?」

「大丈夫ですよ、今回の怪我で白風さんは内臓を損傷したわけじゃ無いですからね。それに、白蛇の治の効果で内臓はいつもより元気ですよ。」

「そうか、ならいいか。」


 そう言って俊助は音虎の前にお盆を置く、そこにはザ・男飯といった見た目のスタミナ炒めと炊き立てのご飯がこんもりと盛られていた、味噌汁は以外にも具は控えめでナメコと豆腐だけだ。美味しそうではあるが、寝起きかつ1週間ぶりの食事、流石に重すぎるのではと思うが蛇達は何も制止していない。音虎は勇気を出して一口食べるとガツンとした味ではあるがどこか優しい、どこか心休まる感じがする。咀嚼し飲み込めばすぐに口は米を欲する、茶碗を手に取り咀嚼する。一息つくと大きな音でお腹が鳴り、極度の空腹感に襲われる、音虎は周りの目も気にせず一心不乱にかき込む。食べ終わる頃、音虎は極度の満足感に満ちていた。それを見て微笑みながら蛇達が話しかける。


「よく食べたね、おかわりいる?」

「大丈夫です。」

「そっか、それじゃ少し真面目な話をしようか。」


 蛇達の表情がキリッと真面目になる。


「今、体に栄養が入ったから体の再生が加速していくと思う。変な感覚だと思うけど治っていってると思って我慢して欲しい、それとあと5分もしたら眠くなると思うからそしたら我慢せずに寝てね。そうすれば明日の朝には元気になってるはずだから。それと、ここからが大事な話なんだけど、あんまり僕の治療を当てにしないで欲しい。今回治療に使った「白蛇の治」は自己治癒力を高めるって言ったよね、それは治療に限度があるってことなんだ。あまりに大きい怪我だと莫大な時間がかかっちゃうから、それに…


 蛇達は一息置き、話出す。


 この技は、寿命を削っちゃうんだ。」


 音虎はその言葉を聞き緊張感が走った、音虎は恐る恐る蛇達に質問する。


「どれくらい…削っちゃうんですか…?」


 蛇達は音虎を宥めるように優しく説明する。


「怪我の具合にもよるんだけど、そんなにガッツリ削れるものでも無いよ。でも回数を重ねるとその分削れちゃう、だから極力治療は一般のものを使って欲しい。それと、大きすぎる怪我は治療が間に合わないことがあるから気をつけて、細胞分裂を早めてるだけだからどうしても上限があるんだ。だから、気をつてけね。」

「わかった。」


 音虎が頷くと同時に大きなあくびが出る、音虎は恥ずかしさから少し赤面する。蛇達は優しく「おやすみ」と言い、部屋の外へ出る。その頃には音虎は眠気が限界に達して眠りについていた――――



 ――――翌日、宗子の元へ手紙が届く。

 「宗ちゃん、元気?私は昨日回復したよ、宗ちゃんが来た日に起きたって聞いてびっくりしたよ。もう少し起きるの早かったら会えたのにね、あとフルーツありがと。好きなのばっかりで嬉しかったよ。それと、あの日約束してたのに会いに行けなくてごめんね。宗ちゃん忙しくて会いに来れないって聞いたよ、そろそろテストだもんね。今度、私から会いに行くから楽しみにしてて。行く日決まったらまた手紙書くね、それじゃあテスト頑張ってね。」

 

 可愛い手紙用紙に丸文字で書かれていた、宗子はそれを折り畳み机の引き出しにしまう。宗子小さく「ごめんね」と呟き少し大きめの荷物を抱えて家を出る――――

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