49話【親友とゴシップ】
「…ああ。お金のことなら心配しなくて良いよ、お兄ちゃん」
もぐもぐと朝ごはんのドーナツを頬張りながらそう言ったのはリリス。ちなみに現在うちに居候中のフランちゃんはまだ夢の中だ。よほど疲れているのかゆすっても持ち上げてもリリスが振り回しても起きなかった、…まあ昨日家失ったり色々あったしなあ…。閑話休題。
「心配ないってどういう事?」
僕には十万ゴールドの借金がある、そして返済猶予はわずか十二日だ。これを心配ないと言うのは中々豪胆すぎな気もするけど…。
「ふっふっふ、何のためにあんなヤバい子の家まで行ったと思ってるの?」
「や、ヤバい子…」
もちろんフランちゃんの事だろう。ドーナツをごくんと飲み込んで何かごそごそと床に乱雑に落ちていた紙を束ね始めるた。
「じゃーんっ!これのためだよ!」
そういうとリリスは十数枚の紙をこちらに見せてきた。その1枚目には……「複合魔法のいろは」と書かれている。
ああ、そう言えばフランちゃんの家に行った時その魔導書を複製してもらうって言う話してたっけ…。
「わたしが複合魔法さえ使えれば今の倍以上…!ううん十倍はお兄ちゃんの力になれるんだから!この魔法さえあれば色んな危険な任務にも同行できるしいっぱい魔石だって稼げる!んふふ、だからお兄ちゃんは安心して!」
「安心してって…そんなに凄いの?複合魔法って…」
「もちろん!単純に魔法と魔法を掛け合わせるんだから最強の技術だよ!これさえあれば最上位魔法の無限魔法にだって対抗できるんだから!」
無限魔法が何かは知らないけど名前からして凄そうだ……。僕視点ではリリスはもう十分強い気がするが僕というお荷物がいる以上これ以上強くなって貰えるのは確かに心強い。それに今日早速アンリと一緒にダンジョンへの同行任務の予定だってあるし試し撃ちには良い機会だろう。
「さて、アンリさんとの待ち合わせの時間まであと2時間くらいあるしその間にわたしは複合魔法を習得しておくね!お兄ちゃんは今日はゆっくりしてて良いから!」
「い、いや。ゆっくりって言われてもなあ…」
部屋の掃除は終わってしまったし洗濯ももうしてある。お金がないから買い物もできないし…。
「あ、じゃあ少し走ってこようかな。零魔法の安定化には基礎体力が大事ってアンリが言ってたし」
「お、お外行くの?……じゃあわたしも…」
「いやリリスは複合魔法覚えるんでしょ…?あ、それにフランちゃんのご飯もあるからもし起きたら食べさせてあげて」
「えええー…。フランにぃ……?」
「ま、前から思ってたけどリリスフランに当たり強く無い…?」
見た感じほぼロリコン騎士よりちょっとマシくらいの扱いをしている気がする。
「いやフランは確かに友達だけど……なんていうか出会いとかが最悪だったから……」
「出会い?そういえばどうやって友達になったとか聞きたいと思ってたんだけど…」
「コイツいきなり私に昨日の閃光花火って爆弾投げてきたんだよ…」
し、失明不可避では…?
「それで聞いてみたらさあ「やっぱり次期魔王様ならこれくらい余裕だと思いましたわ!」とか笑顔で言うからわたしも何も言えなくて…しかもそれ以来色んな魔法道具を私で試す様になってさあ…」
「それもう刺客では…?」
人間と内密にやり取りしてた事といいスパイを疑った方がいい気がしてきた。
「でもこの子もわたしが魔法が好きなのと同じで、魔法道具に魅入られてるって思ったらなんか嫌いになれなくて…それで次に魔法道具で攻撃してきた時わたしも魔法で反撃したら「やっぱり次期魔王様は最高ですわ!」なんて笑って防御されてて…それ以来二人でどうやったら効果的に戦えるかとか試すうちにお互いの家に行ったり下級魔族狩りする様になったりしてたって感じだから……。う、うーん、やっぱりこれって友達なのかな…?」
「…お、思ったより戦闘民族みたいな関係してるんだね」
あと魔族の国では下級魔族狩りとかあるんだ…。同族であっても認識は家畜と牧場主くらいの関係なのかもしれない。
「でも、それだけお互い曝けあって一緒にいられるなら…確かに友達じゃなくて親友って感じだね」
「……親友?………ふふ、親友かぁ。やっぱりお兄ちゃん面白い」
それはどういう意味だろうか。「友達の少ないお前が親友を語るか」見たいな煽りかな?
「確かに、お兄ちゃんとドランさんみたいなモノだもんね。じゃあ親友かも」
「僕とドランが!?いやアイツとは別に親友じゃ──」
「はいはい。じゃあわたし勉強するから、お兄ちゃんも運動がんばってねえ〜」
むう。僕の話を聞き終える前に複製魔導書を読み始めるリリス。もう少し文句を言いたかったけど、勉強の邪魔をしてはいけないと厳しく育てられた僕としてもこれ以上話しかけるのはやめようと外へ出た。
※※※※
「ぜえ…ぜえ…やっぱり1週間入院したのもあって…持久力が、ひぃん…」
わずか10分程度で足が震えてしまい、小さな公園で休憩をしていた。幸いこの異世界では魔石というもので水は使い放題のため公園にあった小さな噴水型の水飲み場で水分を取って足を休ませる。
昨日の疲れもまだ残っていたのかもしれない。
「……せめてもう少し体力ないと、また異世界人が襲ってきた時、僕も戦えるくらいに…」
「それならもっと魔法を勉強するのが良いんじゃ無いですか?吉田君は体力が無さそうですし!」
「い、いや。僕は欠落適性だから…魔法は……」
そう言って息を整えながら隣の女性にとなりの女性!?
「うわあああ!こ、コノハさん!?」
「あはは。コノハ、で良いですよ!にしても吉田君欠落適正なんですね〜!異世界人としては珍しいじゃ無いですか!」
い、いつの間に近くにいたんだろう。いや彼女のスキル【瞬間移動】考えたらいつの間にかいた、と言うのが正しいのかもしれない。単に疲れていて足音に気付けなかっただけかもだけど…。
「前回は途中で消えてしまいすみませんでした!いやあ、あの子妹ちゃんですか?お兄さん想いのいい子ですね、今度取材しても──」
「い、いえ。あの子人見知りがちだから…それより何か用ですか?」
「ああ、すみません!前回話していた新聞ができたので見本誌をお渡ししにきました」
そう言ってコノハさんから新聞を一部受け取る。………うわ、僕の事は伏せてあるけど魔王が女装して鎖の勇者を魅了したとか散々なこと書かれてる……。
「ご安心くださいっ!私はプライバシーはちゃんと守りますから、決して吉田君がやったとバレる様な事は無いはずです!」
「そ、そうしてくれると助かるよ」
全然信用できねえけど。そう思って一応中も確認しようとページを一枚めくった。そこには【魔王続けて破壊の勇者を殺害‼︎】の文字が────…。
「…………え?」
………破壊の勇者、殺害………?




