48【変態とペット】
バアルと名乗る強力な魔族から何とか逃げ切った僕ら三人は、とりあえずと言うことでアルゲニブを目指していた。
まだまだ街は遠くに見えるが、とりあえずさっきの小屋からはかなり距離を置けた様だ。
「ぜぇ…ぜぇ…り、リリスちゃんだっこぉ……」
「自分で歩け!!今回のことは殆どフランのせいでしょっ!」
「ひぃぃぃん!お、お兄様ぁ…!」
…確かに今回の発端はこの子が魔族を裏切って人間に魔法をこっそり流していたこと、あとめんどくさがって複合魔法の魔導書が盗まれた事を報告しなかったフランちゃんにある気がする。………でもこんな辛そうな顔されるとなぁ……。
「わ、わかったよ。僕がおぶって行くから乗って…」
「お兄ちゃんあ、甘やかさないの!そいつ魔族なんだから人間よりは力あるんだから!」
「ぜぇ…い、いえ。どうもここ最近魔法道具作りで引きこもってた結果……ちょっと体力が落ちちゃいまして……」
「うわ、本当だ……リリスより軽い気がする……」
「はあーーーー!?」
やばい、失言だった。さ、流石に女の子に重さの話をするのはデリカシーがなさ過ぎたな…。なんとか訂正しないと…。
「い、いや、フランちゃんリリスより服装もかなり軽そうだし本当そのくらいの差だって!!」
「でもフランの方がその分胸が大きいのでやっぱりリリスちゃんの方が重い様な………」
「お兄ちゃんどいて。そいつ殺せない」
「リリス目がマジで怖いんだけど!?」
その後何とか宥めつつ結局フランちゃんはリリスが背負っていくことになった。
「はあ……しかしさっきの方はとんでもなく強かったですわね…流石は魔王軍四天王のバアル様と言ったところでしょうか…」
「革命派ってのには四天王なんているの?」
「いえ、今フランが考えましたわ」
「お兄ちゃん本当この子適当な子だからあまり真面目に聞かない方がいいよ……」
う、うーん…。これまでリリスやドランといった真面目な解説キャラばっかりだったからとても新鮮…。初めて会ったのがフランちゃんだったら僕の異世界観めちゃくちゃになってただろうなあ…。
「しかしフランのお家を破壊されてしまうなんて……これからフランはどうしたら…」
「西ノ街の近くにいいダンジョンあるからそこに置いていくよ」
「い、いや普通に僕らの家に連れていってあげようよ……」
「え、ええええええええ!?!?」「あら、それは助かりますわ!」
驚いた様に大声を…て言うか驚いて大声を上げるリリスと喜ぶフランちゃん。…い、いや友達なんだよね……?
「ぱ、パーツイリュージョンでフランちゃんの魔族っぽい所隠せばうちの街でも大丈夫じゃない…?他に行く所も無いなら僕らの家が一番…」
「お兄ちゃんいいの!?あ、あの狭いお部屋にコイツが増えちゃうんだよ!」
「フランはお風呂とトイレと魔法道具を作れるテーブルさえあればどこでも……」
「全部ないから外で寝てなさい!」
「いや確かに部屋には無いけど……」
僕らのアパートでは風呂トイレは共用スペースにある。でも魔獣溢れる外よりはマシだろう……。それについさっき四天王(フランちゃん命名)に襲われたばかりだし…。
「じゃ、じゃあ今度一緒に空き部屋を探して、とりあえず今日はうちで泊まるって言うのは…?フランちゃん魔族に狙われてるみたいだしやっぱり外に置いておくのは心配じゃない?」
「えぇぇ………。………じゃあ数日だけなら……」
「わーい!久々にお泊まりですわー!」
「フラン、その代わり複合魔法の魔導書うちについたらすぐ複製してね」
「ひ、ひぃん…………さっきの風で途中の全部無くなっちゃったんですけど…」
「じゃあもう一回最初から複製しなおしなさい」
「ひ、ひぃぃぃぃん!」
フランちゃんの鳴き声を聞きつつ、僕らは何とか家に着いた。
しかしこの子も魔族、本当に街では目立たない様に振る舞わなきゃ……。
※※※※
「いいえ!!だからこの二人は僕のペットなんですってッッッ!!!!」
「わんわん!ですわ!」
「わ、わん………」
街について五分。僕らはめちゃくちゃ目立っていた。
先週の魔王襲撃の事もあり以前より厳しく門番を務める憲兵騎士達にステータスの開示を求められたのだ。…僕はともかくこの二人のステータス、特に種族欄を見られるとまずい…っ!。
というわけで二人にはペットのふりをして貰っている。
「騎士さん見てください、僕ステータスの職業のところ。変態ペットブリーダーとちゃんと書いてあるでしょう?だからここにいる二匹は僕のペットなんです。その飼い主がステータス見せてるんですからもう良いでしょう?」
「…………………は、はい……?」
「よし、行くよ。リリス、フランちゃん」
勢いだけだがなんとか一人の憲兵が道を開けてくれる。この隙を逃すわけには……!
「お、おい勝手に通してるんだお前…!ちゃんと全員検問してから通さないと…」
「ん?リリスおしっこしたいの?仕方ないな、ならそこの門の柱にでも……」
「早くこの変態を行かせろッッッッッ!!」
一瞬止められかけたが僕の言葉に全ての門番達が道を開けてくれた。二人に四つん這いさせながら堂々とその道を歩き、様々な人たちから視線を浴びて僕らはなんとか家へとたどり着く……。
………これ隠居生活って言うの無理だな…。
※※※※
「め、めちゃくちゃいい匂いがする………」
異世界生活十六日目。
目覚めると小さい女の子二人に抱きしめられている。………め、めちゃくちゃ暖かくて幸せだ…。とはいえ朝のゴミ捨てなどやらなきゃいけない事も多いので二人を起こさない様にゆっくりと布団を出た。
当たりを見渡すと昨日の騒ぎ、フランちゃん歓迎会(本人主催)の残骸で散らかっている。うーん、掃除のしがいがありそうだ。
とりあえず目につくゴミからゴミ箱に詰めていく。お菓子の袋がいっぱいだな……。
本当は入院費もあって節制したかったんだけどペットのふりをさせたリリスの機嫌を取るため所持金+昨日手に入れた魔石を売ったお金全てをこの歓迎会に費やしてしまった。
そして現所持金は綺麗に0。
………残り十二日で十万いけるかなあ………。




