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47話【魔法と問題児3】


「ふ、フランのお家がーーーーっ!!!」


僕の腕の中でフランちゃんがジタバタと暴れている。魔法の竜巻は何とかプチ紫電一閃で回避することができた。

リリスも間一髪跳躍で僕らのそばに回避している。

……さっきまで僕らがいた場所は嵐が通った後の様に建物の跡形も無くなっていた。あ、アレを直に食らっていたら間違いなく死んでる…。


「お、お兄ちゃんはフランを抱えて逃げてっ!私が時間を稼ぐから!」

「っ!!駄目だリリス!それじゃ──」

「それはこちらに好都合です。私としてもここであなたを殺せるなら何よりも嬉しい」


そう言ってその魔族はリリスに照準を合わせる。


「【シャドーウォー…!】っうわあっ!」

「!………リリス!?」


黒い障壁をものともせず風の塊が壁ごとリリスにぶつけられる。しかし、そのまま空中で体勢を立て直すとバアルという魔族の方向へその手を向けた。


「っ…【火術(フレイア):ファイアボール!】」


掌から膨らむ様に現れた火球がそのまま魔族の方へと飛んでゆく。これは躱せない…!


「……ふふ、困りますね、これが全力ですか?」

「………えっ」


火球は魔族に当たる直前で何かに衝突し、そのままかき消された。熱を浴びたことでようやく視認する事が出来たが彼の周りだけ空気が歪んでいる様に見える。………あれは、風の壁?


「……困ったことに、これは圧倒的過ぎますね。私のスキル【風の加護】ではスキル無しの貴方じゃ相手にならないようです」

「………!」


っ………スキル持ち…!

リリスにはスキルが無い。それは珍しいことではないのだが、今はその差が戦力差を広げているようだ。


「や、ヤバいですわお兄様!フランのせいでリリスちゃんが…!」

「わかってる……フランちゃんは離れてて!」


その場に彼女を置いてリリスのそばに駆け寄る。…けどこのままじゃ二人ともやられるだけだ。ここはイチかバチか…!


「そこの魔族、僕に従え!!」

「………ん?」


やはり【魔族隷奴】は発動しない。こんな状況になっても以前心の中にあったスイッチの様な気配すら感じなかった。


「お、お兄ちゃん…」

「…。大丈夫、僕が何とかするから」


周囲を見渡し、武器になるものを探す。フランちゃんの小屋だった残骸の中にさっきの小麦粉の袋が見えた。あれなら……!やることが決まれば後は一直線に走り抜ける。


「っ……何をするかは分かりませんが、させませんよ!」

「こっちのセリフ!【シャドーウォール】!」


突然走り出した僕を止めるためにバアルがこちら目掛けて風の塊を撃つ。しかし魔法の障壁が一瞬盾となってくれたおかげで僕の後方に攻撃が落ちた。風圧でよろけそうにもなるが何とか紙袋に手が届く。あとはこれを…!


「くらえっ!」

「っ……これは、粉…?」


風の壁が袋を裂いて中から小麦粉が霧散する。


「リリス!炎!」

「!【ファイアボール!】」


火球が粉の近くまで寄った瞬間、大きな爆発をたてて魔族を包む。粉塵爆発…空気中の粉と酸素に火がついて一気に爆発する現象だ。あれで倒せたら一番いいけど…!


「逃げようリリス!とにかく今はダメージを与える方法がない!」

「……う、うん!」


倒せなくとも時間稼ぎにはなるはずだ。アイツは絶対やばい、全身がそう言っていた。


「…………困りました、今ので大ダメージを負ってしまった様です」

「…なっ…………。」


ほとんどさっきと変わらず、その魔族はそこに立っていた……。


「……これはどうやら鼓膜がやられた様ですね、これは本当に困ります。…が──」


そう言ってバアルは指をこちらに向ける。身体を纏っていたであろう風までもがその指先に集まり圧縮されてプラズマを発していた。さっきの攻撃以上の魔法であることは一目瞭然……っ。


「この一撃で決めて仕舞えば全てが解決すること──」

「お兄様!リリスちゃん、目を閉じてくださいまし!!」


後ろからバタバタと足音と共に声が聞こえる。その声に合わせて僕とリリスはすぐに目を閉じた。


「必殺魔法道具、【閃光花火(せんこうはなび)ーっ!!】」


直後、目を閉じていた僕でさえ眩しいと感じるほどの光が当たりを包む。ま、魔法道具っていうかこれ兵器じゃ…っ。


「!お兄ちゃん、こっちっ!」


リリスは先ほどの光をうまく防げたのか僕の手を引いて走り出す。やっと僕の目も慣れてきた様で当たりの色がわかる様になってきた。


「フラン!あの道具使うならもっと事前に言ってよ!!お兄ちゃんが失明したらどうするの!?」

「いやぁ、鼓膜が聞こえないって聞こえたら思いついてしまいまして…それにリリスちゃんなら多分大丈夫かと」

「ぼ、僕も大丈夫だよ。それにあんなヤバいのから逃げるってなったらこれしかなかったと思う…ありがとうフランちゃん」

「い、いえいえそれ程でも!!……えへへ」

「だからフランはヒロインっぽくしないでってばー!!」


後ろを振り返るとまだバアルは何が起こったのか理解できていない様で僕らとは真逆の方向を向いている。…耳と目を奪った今とにかく距離を置くしかない。

僕らは必死に駆けて何とか逃げ切った様だった。

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