43話【ハーレムとお祝い】
「うぅ…本当にごめんなさいお兄ちゃん…。」
「ま、まあ次から気を付けてくれればいいって。心配してくれたのは嬉しかったし…」
家に帰宅してから、ていうか帰る途中もだけどずっとリリスはこんな調子だ。
僕の入院費のこと、今日あったこと、そして棚から落ちてきたぼたもちのお金をそのままドブに叩き捨ててしまったこと、全部きちんと話し合って、どうやらそれが全部自分のせいだと思っているらしい。…僕がしっかりしていれば防げたことなんだけど……。
「なんか最近変な夢ばっか見ちゃって…それですごく不安っていうか…」
「変な夢?」
「うーん…、目が覚めると忘れちゃうんだけど…なんか、すごく怖い夢……。」
どんな夢だろう、いやどんな夢にしろまだこの子はほんの二週間前に母親を亡くした子供だ。心的ダメージが残っていても不思議なことではない、これもメンタルケアを怠った僕のミスだ。
「僕こそごめんね、夢の話とか…もっとちゃんとリリスの言葉を聞いてあげるべきだった。これからはお互い思ったこと全部話そうか」
「うぅ…ごめん……。……っていうかお金とかどうしよう…!全部私のせいだ…!」
どうやら僕の話もあまり耳に入っていないらしい、目をぐるぐると回すリリス。するとふと鈍い頭痛が僕を襲う、…こ、これは久々のペナルティ…。リリスを悲しませたことで発生する魔王の呪い…。
「だ、大丈夫だよ。僕らが力を合わせればきっと何とかなるから!ほら、明後日アンリと同行任務もあるし…!」
「………うん、そうだよね…。今はちゃんとしないと………。」
何とか頭痛が治った。良かった……。
「…って言うかこう言う時僕の【スキル】が使えたらいいんだけど…。ステータスオープン」
もう慣れた動きでステータスウインドウを表示する。指を少し動かして僕のチートスキルの詳細画面を表示した。
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スキル
・【絶対隷奴】
最大対象数:0
視界に入っている人間と魔族に命令を与える。
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「………やっぱり、まだ使えないかぁ…」
以前入院中に確認したとき同様、最大対象数は0。
僕の魔王様に貰ったチートスキル【魔族隷奴】はいつの間にかカズトのスキルと融合して進化してナーフされていた。何を言ってるのかわからないと思うけど僕もわかんない…。
「そもそも他人のスキルを奪ったって言うのもよくわからないんだよね…お母様の魔族隷奴はそんなこと起きなかったし…」
「…‥これが使えればドランの財産奪って返済してたんだけどなあ」
「お、お兄ちゃんたまに悪魔みたいな発想するよね…」
しかし使えないものは仕方ない、リリス曰く対象指定数は時間経過で増えることもあるらしいのでしばらくはこのまま様子を見ることにした。
……けど魔法もスキルもろくに使えないとなると色々心配だな…。
「…そういえば、お兄ちゃんが会った異世界人とは連絡取れそう?」
異世界人、東雲メイ。
貰った名刺には会社名と名前だけが書かれている。
もう少し話を聞きたかったが、こちらから会うのは無理そうだ。首を振ってリリスに伝えた。
「ドランの妹を救える人を知ってるみたいだったし…一応街で見かけたら声をかけてみるよ。警戒は続けるけど」
いくら相手がフレンドリーな人とはいえ僕が魔族側であることは変わらない、異世界人と接触する時は注意深くなるに越したことはないだろう。
「うーん…その人ならお兄ちゃんのスキルを使える方法わかるかもだし、わたしも偶然見かけたら教えるね」
「い、いやリリスはあんまり会わない方が…」
「いや、今日のことはほとんどわたしのせいだし…!ちゃんと挽回するから!わたしだってお兄ちゃんの役に立てるし…!………そうだ、あの子なら…っ」
むんっ!と両の拳を胸の前で振るリリス。何やら気合が入っている様だけど、あまり無茶はしてほしくないな…。
と、何かリリスが呟いてる時、後ろから年季の入ったうちの木の扉を叩く音が聞こえた。もう結構な時間だと言うのにお客さんだろうか?
「はーい……あれ、レベッカ?何でうちに?」
「あ、ゆ、優人。ええっと、ドラン様にこの場所を教えてもらって。それでちょっと様子を見にっていうか、これ渡しに────」
すると見覚えのある、僕ら兄妹御用達のパン屋の紙袋を差し出してくれた。中にはぎっしりと色々なパンが詰まっている様で受け取ると重みを感じる。
「………あっ。もしかして僕の退院祝い!?ご、ごめんお見舞いの品もたくさん貰ったのにこんな……」
「い、いや違うって!私が夕ご飯用に買ったんだけどちょっと間違えて買いすぎちゃったからお裾分けに来たって言うか!どうせお金に困ってまたパンクズがご飯だとリリスちゃんが可哀想でしょ!?だから受け取って!」
間違いでこんなに買っちゃうならそれは心配なんだけど、なんて思ったら昼間の事で僕を気遣ってきてくれたらしい。本当にいい友達だ。
「それなら…うちでご飯食べて行く?と言っても飲み物もろくに出せないけど…」
「いいの!?……じゃ、じゃあ一緒に食べたい…」
「良かった。…あ、アンリっていう友達から貰ったコーヒーもあるんだった、今淹れるから上がって待っててね」
「…………」
レベッカを家にあげると、一瞬後ろから殺気のような気配を感じ振り返ったがそこにはリリスしかいない。うーん、気のせいかな。
「そうだリリス、レベッカがパンをくれたからお礼を言ってくれる?」
「……あっ、リリスちゃんこんばんは!お姉さんも今日はお夕食お邪魔するね」
「…………………どうぞ、…パンありがとうございます……」
僕がコーヒーを淹れている間も彼女が妹の面倒を見てくれていた。
リリスの方いつもよりは食欲がなさそうだったけど大丈夫かな…。ご飯を食べて楽しく世間話をした後、レベッカを家まで送りその日は久々の自宅でゆっくり眠った。




