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31話【転機】


異世界生活六日目。


昨日の同行任務のおかげで今日はちゃんとした朝ごはんが作れる。

カチカチで豆みたいなのが混ざったパン(50コイン)をナイフ(80コイン)で切り分け鉄製の妙に重たいフライパン(名前は忘れた)で卵(6つで10コイン)を乗せる。

油を買い忘れたせいで少し焦げ付いてしまったが、それでもこれまでのパン屑をお湯で薄めたものや白湯といった極貧ご飯に比べたら上出来だろう。

ちなみに今の財布の中身は800コインですフライパンはいくらでしょう!!…なんて独り言もほどほどに今日もミノムシ状態で布団に潜るリリスを起こした。

血圧が低いのかこの子は本当に朝が弱い。カワヨ。



※※※※



「……おお、ふ、普通のご飯だ…!」

「流石に今までのがロクでもなさ過ぎたんだけどね…」


はしたなく口の端から黄身をこぼしながらリリスは朝食に喜んでかぶりついた。

…次期女王になるんだしテーブルマナーみたいなのも僕が教えた方がいいのかな…、でも本人が美味しそうに食べてくれてるからいいか。

と頬を揺らしながらご飯を食べるリリスを見つつ洗い物を済ませ僕も食事をとり始める。

こうパン生活が続くと和食が恋しくなってくるなあ…。

そんな僕をよそにあっという間に2枚の目玉焼きパンを食べたリリスが僕に今日のスケジュールを提案する。


「あ、お兄ちゃん。わたし今日は図書館に行きたい」

「………えっと今日も、じゃなくて?」

「まあそうだけど」


えへへと笑うリリス。

魔法大好きっ子の彼女としてはあの図書館は夢のような場所なんだろう。

…でもどうか今日こそ僕の呪いを解く方法について調べてくれることを祈る。

できるだけこの子を一人にするわけにもいかないし、僕自身いつも図書館で会うあの可愛い女の子に会いたいので僕もいそいそと身支度を済ませ家を出た。

今日の異世界の温度は十五度程だろうか。

さ、さむい…。



※※※※



「あ!ねえお兄ちゃん、あれ買わない?」

「ん?」


図書館への道中、リリスが立ち止まり古着屋を指差す。

そこには一着の黒いワンピースが飾ってあった。


「ああ、ああいう服が欲しいの?」


そういえばリリスの服も僕ほどじゃないにせよ一部ほつれてきた。

彼女を象徴する赤いフード付きコートにも一部穴が空いているしその下の黒いスカートは色落ちし始めている。

確かに年頃の女の子であればああ言った綺麗な服に興味を持っていても

「いやお兄ちゃんに着て欲しくて」


「………………」


これは妹に女装しろ、と言われているのだろうか。

昨日のドランの言葉を思い出しちょっと普通にマジでキツめに傷つく。


「…あっ。い、いやあのまんまじゃないよ!?えっと……ほらお兄ちゃんの今着てる服って結構ボロボロじゃん?しかも毎日それを着回してるし…。あの服なら正面をバッサリ切ってちょっと縫ったりするだけでちょうど良いコートになると思うんだよね」

「ああ、なるほど…」


要するに服のリサイクルか、確かにお値段も60コインとお安い。

ボタンやちょっとした布に糸と合わせてもちょうど100コインで収まるだろう。

…何より、リリスが僕のために提案してくれたのが嬉しい。

ふふ、…ここ最近いい関係性を築けている気がするぞ!


「…うんっ、じゃあ買おっかな!」

「本当に!?いや〜実は今このお店3着で200コインのセールしててね!、私あと他にこれとこれとこれとこれが………」

「…………あっ…、なるほど…。」


どうやら僕のコート云々はついでだったらしい。

にぃぃ…(鳴き声)。



※※※※


結局両手が塞がるほどの紙袋を抱えて、僕たちは図書館にたどり着いた。

ちなみに今の財布の中身は200コインです一体リリスは何着買ったんでしょう…。


「じゃあ私今日は魔法の本のあたりで勉強してるからっ!」

「今日もだろ、今日も!」


嬉しそうに足をスキップさせる彼女を見送り僕もアンリを探す。

今日もいると良いんだけど…。


「おっ俺をお探しかな?」

「お前じゃねえよ帰れ」


僕と目が合ったドランが嬉しそうに足をスキップさせて駆け寄ってきた。

け、穢らわしい…。


「…何でここにいるんだよ、騎士の仕事はいいの?」

「非番だよ非番。格好見てわからないか?」


確かにいつもの甲冑のような装備ではなく、シャツとジャケットと年相応な格好をしている。

…てことは今まで本当に仕事の日に僕らに絡んでたのかこいつ、騎士ってそんな楽なら僕もなりたいなぁ……。


「リリスちゃんはいないのか?」

「ドランアレルギーが酷過ぎて家で吐いてるよ」

「ったく。見舞いの品でも持って行くかぁ」


本当にそういう状況で行ったらそれはもうトドメの一撃をお見舞いしてるだろ…。


「……あっちにいるよ。でも今日はあいつ魔法の勉強してるみたいだからそっとしておいてやって」

「ああ、昨日の任務でもすごい練度の火炎魔法使ってたもんなぁ。なるほど勉強熱心なのか」


一応居場所を伝えておく。

もしカズトがリリスへ攻撃しようとしてもドランに見張っててもらうためだ。

…今日はどうやらアンリは来てない様だし、僕も一人で零魔法の練習でもしようかな…。


「あぁ、そうだ丁度いい。お前ら今日の午後予定あるか?」

「予定?うーん薬草採集はまだできないだろうし特にないけど…」

「ならちょっとついてきて欲しいところがある、会っておきたいヤツがいるんだ」


会っておきたい奴?

誰だろう、そもそもドランの用事に僕がついて行って何かできることがあるのだろうか。

そう心配する僕にニヤリと笑ってドランが告げた。


「多分当たりだぜ…、異世界人カズトの被害者。

……数日前にお前らが救助した女に話を聞きに行くぞ」



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