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29話【ドラン】

「優人、お前は異世界人なのか?」


どうして気づかれたんだろう。

ドランは真剣な顔をしてして僕を見つめる。その理由が、その意味がわからなくてただ黙ってしまった。

どう答えるべきか迷って、考えて、もう間違わないように。

……僕はドランの目を見つめ返して本心から会話をすることにした。


「だったら、どうする?」


ちょっと悪役っぽく答えてしまって笑っちゃう。

…これじゃ肯定してるのと同義じゃないか。

彼も僕と同じみたいで吹き出して答えた。


「……ハ、ハハ、悪い。別にお前をどうこうしたかったわけじゃない。ただ聞いておく必要があったんでな」


必要?騎士は野良の異世界人を管理するとかそういう役目でもあるのだろうか。

だとしたらちょっとまずい、カズト以外の11人の異世界人にまだ僕の存在は知られたくないし…。


「……………………一年前の話だ、俺の住んでた村がドラゴンに襲われた」


慎重にドランが何かを話し始めた。


「…見たことあるか?すげえでっかくってな。俺はまだ騎士になりたてでそこまで強くなかったのもあって、アイツの鱗に傷一つつけられなかったぜ。俺よりずっと強いB級冒険者のおじさんも…、そん時の俺はまだC級だったから流石に今は俺のほうが強いけどな、そのおじさんなんか剣を抜く前に食われちまって…。ああ、近所の足の悪いババアなんか俺の後ろでその光景みて馬鹿みたいに泣きながら笑ってたっけ…」


遠くの山を見つめながら記憶を一歩づつ歩み返すように話す。

…きっとドランは当時の景色を正確になぞって僕に聞かせてくれているんだろう。

どうして今そんな話をしてくれてるのかはわからないが、真剣なその表情に僕も黙って話を聞いた。


「それで俺は…騎士だから戦わなきゃいけないのに、喰われてく村の人達を無視して自分の家に走った。人生で一番早く走ったと思う、突然何かそういうスキルが与えられたんじゃないかって錯覚するくらい早く走った。……けど、なかったんだ。…………俺の家があった場所にはでっけえ足跡があって、少し離れたところに妹の頭だけが転がってた」

「………」


僕は黙って聞く。


「俺に似てすっげえ可愛いやつなんだぜ。毎週クソガキ共に遊びに誘われててさ、あいつ優しくて断れないから困った顔して俺の方をチラチラ見てくるんだよ。だから俺がめんどくさそうな顔して追い返してやると「お兄ちゃんありがとう」って…」


「……けど俺はなんか恥ずかしくて…なんて言ったか覚えてないけど、多分ロクな返事しなかったんだろうな…嫌じゃなかったんだから笑って返事してやればよかったって、今でも思い返す。……何でそうしなかったんだろう、本当に全然わかんねえ……」


僕は黙って彼と同じ方を向いた。


「そんな妹が頭だけになってて、そんな妹を抱き抱えながら、俺はすげえ泣いた。本気で泣くと声が抑えられないって知ったよ。とにかくでかい声をあげて…………後ろからなる足音に気が付いてたのに泣くのをやめられなかった。」


ドランの声が少しずつ低くなっていく。


「もう死んでるのにさ、これ以上妹を殺させてたまるかって思って…。……妹を左腕で抱えたまま龍に切り掛かった。文字通り歯が立たないんだがそれでも何度も何度も剣と魔法で攻撃して……でもアイツは全く気にしないみたいで、足で俺達を踏み潰そうとしてきてさ。………………ああ俺はもうここで死ぬのか、妹のこの頭だけは何とか投げてでも守りゃよかった、とか思った瞬間………。どっかから風が吹いて、その風が……竜の首を切り落とした」


「……一瞬何が起こったか分からなかった。…さっきまで俺の剣が全然通らなかったやつを、一瞬で殺した奴がいたんだぜ。……それで近くを見渡すと杖を持った妙な格好をした女が立ってたんだ 」


「…そいつは今さっき竜に村人のほとんどが殺された、その現場にいるなんて1ミリも思ってない様な明るい声で俺にこう言ったんだ。「私の回復魔法ならその子を生き返らせられるわよ、その代わり【異世界翻訳】ってスキルを持ってる男を見つけたら私に連絡して。そうしたら助けてあげるわ」…って」



…ようやく話がまとまり、彼の目的が見えてくる。

もう一度僕に聞こえるようにはっきりとこう言った。


「なあ、お前もあいつと同じ異世界人なのか?」

「…………」


……異世界人が、異世界人を探している?

わからない、どうして…。

人間側の異世界人達はみんな聖地で召喚される、だからてっきりお互いに知り合っているものだと勝手に思っていたが違うのだろうか。

……あるいは、一年前から僕がこの世界に来るのを予見していた人がいる?

…虫食い状の問題文では解けない様に、その答えはまだわからない。

けど僕は、真摯に話をしてくれた彼に向き合うようにこう答えた。


「…そうだよ。僕は別の世界からきた」


…もちろんリリスのことは伏せる。

ドランには向き合うけど、けどそれは僕の心の問題。

今こいつには真っ直ぐに向き合いたいけど、そんな僕のエゴにあの子を巻き込みたくはない。


「………………マジかぁ……」


ドランはその答えを聞いて、頭を掻きながら何か考えている。


「お前全然強そうに見えねえし…てか実際弱いからそんなわけないと思ったんだけどなあ…」

「じ、実力はともかく見た目も弱そうって何だよ!」

「はは、実際初めてお前見た時は正直女を吹き飛ばしたと思って焦ったんだぜ」

「はあ!?」

「お前全体的に小せえし顔もなんか可愛いからさ、あん時はマジでビビったわ〜」

「やめろマジでお前の口から可愛いとか聞きたくない………」


以前のように話す僕たち。

あとしれっと衝撃の事実が出てきて吐き気もする。…こいつの口から可愛いとか言われたくなかった…。


「………で、僕のこと。その異世界人に伝えるの?」


連絡と言っていたがどうするんだろうか。手紙に僕の名前を書くとか?

そしてその異世界人は僕をどうする気だろう。

やはり目的は魔王の欠片、リリスだろうか。


「……ああ。そうしたいんだが───」


………え?したいんだが…?


「………俺そん時なんかイラッとして断っちゃってよ。連絡先とかもなんも知らねえんだよなぁ……お前同じ異世界人なら何か知らないか?」


真剣な話が続いて忘れていたが思い出す。

そういやこいつバカだったな…。

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