27話【同行任務】
「おお、お前………何だよ元気そうだなぁ!」
「や、やめろって…僕の肩を抱くなよ」
図書館を出た後昼食をとり、ギルドに入るやいなや僕らに話しかけてきたのはいつものロリコンストーカー、竜騎士のドランだ。
昨日のギルドでの僕の様子を心配して待っていたんだろうか、仕事しろ仕事を。
ギルドの中では昨日の凄惨な事件があった後というのに賑わっていた。
待機所(冒険者達は酒飲み場程度に思っているにだろうが)ではサニーの死を弔うとかで彼のパーティの仲間たち主催で冒険者たちが笑い泣き彼の生き様を語っている。…僕にあそこに混ざる資格はないので目を逸らした。
……本当にごめんなさい。
「ねえ見て!竜騎士と変態がまたイチャイチャしてる…」
「今変態の方が「僕を抱くな」とか言ってなかったか…?」
「えへ、えへへ閃光の狼ちゃんにこの光景教えてあげなきゃ…」
……冒険者達は基本バカばかりなのでまた僕らの適当な噂話をしていた、普段からダンジョンや魔族との戦いで命を賭けているだけにメンタルが強い。
リリスの方はというと馬鹿みたいな噂に巻き込まれない様に他人のふりをしつつ依頼ボードを見ている。
…ここにいるとまたカズトに襲われるかもしれないし僕も急いで薬草採集の仕事を受けないと。
幸い僕の西ノ街の地縛の呪いはこの街の敷地内、草原までなら問題なく行動できるらしい。これはステータスウインドウから呪いの項目をタップして得た情報なので安心して行動できる。
「ねね、お兄ちゃん、見て…」
「ん?」
リリスに促され依頼ボードを確認する。
何だろうロリコン竜騎士ストーカーの討伐依頼がついに発布されたりしたのかな、なんて思いながら眺めると他とは違う色の一枚の紙に気がついた。
「えっと何々…、薬草採集の依頼を一時中止する………!?」
確かにそう描いてある。リリスが注目していたものも同じようで頷いて僕の方を見た。
「あー、それなぁ。なんでも今朝異世界人様から郵送で大量の薬草が届いたらしいな。採りすぎても無駄にするだけって、ことで三日くらい依頼を止めるらしいぞ」
ドランが説明してくれる。
………カズトだ。けど何のために?嫌がらせにしてはねちっこいし子供っぽい。
僕らが薬草採集の依頼しか受けられないのを知ってのことだろうか。
幸いさっき昼食で使った100ゴールドを差し引いても僕らの残り所持金は100。お湯と激安パンで三日くらいは持つだろうけど三日後また同じことをされないという確証もない。
けどできればリリスに魔物狩りはさせたくないしなぁ…。なんて考えているとドランが僕の肩を叩いてきた。
「お前ら暇なら俺と同行任務するか?丁度Cランクの救助依頼が来ててこれから行くとこだったんだ、お前らでもそこまで難しくはないし分け前に1000ゴールド出してやるよ」
ドランが僕らに依頼書を見せてくる。
どうやら場所はこの街の近くのダンジョンの様だ。一応アルゲニブの敷地内だから僕は問題ないんだけどリリスの正体がバレるリスクを考えると「や、やろう!お兄ちゃん!」
…僕の思考を遮ってリリスが提案に乗っかる。
い、いやでも…と言いかけたところで、リリスの今の姿を見て理解した。
今彼女は【幻術:パーツイリュージョン】によって自分の頭部のツノを消している。
つまり外見特徴から彼女が魔族であると見抜かれることはまずない。
あとそれでか、さっきからドランがジロジロ見てたのは。フードを脱いだだけで人の妹に欲情するんじゃない。
「1000ゴールドあれば調理器具とか乾麺とか買えるし…お兄ちゃんの冬服も買えるでしょ?」
自分の身の回りのもとより僕が寒そうにしてる姿を心配する妹に感動する。
1000ゴールドは前世界の貨幣価値にして一万円。
確かにそれだけあれば少しの間はお金の心配をせずに暮らせるかもしれない。
……ただダンジョンに行くということは当然また迷宮モンスター達との戦闘になるってことだけど…
なんて考えているとリリスが僕の手を握ってきた。
これは多分、わたしを信じろの意味だろう。
…………この子が気にしてないのに同族殺しがどうとか僕が口を挟むのは違うと気がついた。
「…………………わかったよ。ドラン、その任務僕らもついて行っていい?」
「おう!……へへ、言えたじゃねえか…」
…何だこいつ……。
別にドランに頭下げるのが嫌で今まで同行拒否してたわけじゃねえよ。
そうして二度目のダンジョン探索に向かうべく、何か準備をしにに向かったドランとの距離が離れたことを確認して、リリスが僕に小さな声で耳打ちしてきた。
「…お兄ちゃん、わかってると思うけど魔族隷奴はあまり人前で使っちゃだめだよ」
「……えっ」
「…スキルの名前だけじゃわかんないだろうけど、魔族を従属させるスキルってところまでバレるとお兄ちゃんと魔王との繋がりを知られるかもしれないでしょ、………ドランさんそこまで馬鹿じゃないし」
「いやあいつは馬鹿だよ」
「い、いやそうだけどー…」
くだらない軽口はともかく確かにリリスの言っていることも一理ある。仮にも人間側の騎士なんてしてる奴に僕の今の立場は知られたくない。
…しかしそうなると必然僕の武器は…。
「もしかして今日僕素手だけでダンジョンに潜るの?」
「ま、まあそうなるね………」
……ステゴロ上等。
喧嘩なんて数えるくらいしかしたことない僕の二度目のダンジョン攻略が始まる…。
…今度こそマジで死にそう。




