26話【新魔法習得】
「…私はアンリ…。アンリ・マルル…」
この子名前まで可愛いのか最強だな。…なんて思ったりして僕らは今図書館の外の傍にいた。
ここは小さな暗い路地裏状になっているみたいで、異世界人の脅威に触れたばかりの僕としてはちょっと怖い。
「…できれば私の魔法は誰にも見せたくないから」
そんな魔法、零の奥義と言っていたものを彼女はこれから僕に教えてくれるらしい。
「……この魔法を知ってるのはわたしと、お姉ちゃんだけ。………見た相手はみんな殺したから…」
………これ僕も殺されるんじゃないだろうな、と震えながらアンリから一歩離れて僕は説明を聞いた。
「…欠落適正は体内に極端な程魔力が少ない人が、なる適正…。…そのせいで私たちは魔法式を覚えても、外に放出する魔力がないから…魔法を使えないの」
と、小さな声で彼女は僕に説明をしてくれた。
魔力っていうのがそもそも血管を流れているものなのか、はたまた細胞的内の粒子的なモノなのかイメージしにくいけどそこら辺は感覚で理解しろって事なのかな。
「…でも少ないからこそできる技がある…………見てて、ね。」
「う、うん。」
彼女はカーディガンを脱ぎ僕に預ける。
インナーのもこもことした姿でその場をぴょんぴょんと飛び始めたがウォーミングアップだろうか。…今日も寒いもんね。
やがて準備が整ったのか彼女は真上、図書館の壁を越えさらにその上の空をじって見つめ始めた。
「……いくよ、【零式:紫電一閃】」
「………え?」
消えた。
その場から一瞬にして。
左右を見渡すもどこにもいない、彼女のいた場所に立ってみると小さな声が真上から聞こえてきた。
「…ぉーぃ……。ぉーーい…。」
声が小さくて気付くのが遅れたが、ずっと手を振っていたらしく図書館の屋上から身を乗り出して恥ずかしそうに僕に手を振るアンリの姿があった。
い、いつの間に…!?
ここからあそこまで15、20メートルの高さはあるぞ!瞬間移動!?
一瞬であそこまで移動した方法を考えていると「…よいしょ」とアンリが上から壁と壁を蹴りながら降りてきた。
マリオか。
「………えへへ、わかった…?」
「いやなんもわからない」
女の子がえへへって笑う姿ってなんか可愛いなってこと以外なんもわからないぞ。
「……む。……うーん、じゃあもっとわかりやすいの…」
そういうと彼女は僕の胸にそっと手を当てた。この子おててちっちゃくてかあいいねえ、なんてほっこりした顔で僕が見ていると突然胸に衝撃を感じ
「…【零式:……えっと、スーパーアタック】」
「 …は!?」
絶対今適当に考えたであろう詠唱が遠くに消え僕は彼女の手のひらから吹き飛ばされる。
吹き飛んだ先の空中で今何が起きたのかと思案するがやがて重力に惹かれ僕は地面に落下し転がった。
クソ痛い………。
打撲だらけの身体を無理やり起こしアンリの元へ歩いていく。
「… えへへ、わかった?」
「う、うん、なんとなく………」
天性のSだこの子。
半分くらいしか理解はしていないがここでわかったって言わないと次は崖から今の魔法で突き飛ばされて「…えへへ、死んじゃった…」とかなる可能性がある。
リリスを残してここで殺されるわけにはいかないのです…。
僕は起きた事象と自分の身体、特に触れられた手のひらから感じた胸への圧力を元に推察を彼女に話す。
「…え、えっと。つまり零魔法って、体内で圧縮した魔力を収束して一瞬だけ外に放つ技ってこと?」
彼女は手のひらで触れていた。にもかかわらず最後に僕の胸が感じた感覚はその三分の一程度の大きさ、よく見ればさっき彼女が屋上まで一気に跳んだその地面にも小さな穴が空いている。
…これ僕の身体がもう少し弱かったら腹に風穴空いてないか?
彼女はにこっと笑い説明をしてくれる。
「……せいかい。普通の人が魔力をそんな使い方したら、集めた魔力が爆発して身体がバラバラになっちゃう
……外に放出しない、体内から、すぐそばのゼロ距離へ一撃を…一瞬だけ放つひっさつ奥義、それが……」
「……それが零魔法……」
か、かっけえ……。
何が良いってゼロってその響きがもう心をくすぐる。
そしてこの魔法は使える人も知っている人間もほとんどいない。
つまりだ、これを習得できればカズトの意表をつくことだって───
「それで、この魔法どれくらいで覚えられる!?」
「……ふふん」
アンリが指を一本立てる。
「…‥一年あればいける」
終わった………。
※※※
アンリと別れ僕はまた図書館の中にいた。
習得に一年かかるはいえ、零魔法を断る気にもならなかった僕は、基礎訓練ということでまずは図書館とその横の建物の壁をキックして登るという練習をアンリに見てもらっていた。(ちなみに一回もできなかったけど)
衝撃への反動耐性を身につけないと零魔法を放った術者の方が逆に吹き飛んでしまうそうだ。
…2時間ほど壁を蹴っては地面に頭を打ちつける練習をした後、アンリが仕事があるということなので一度切り上げた次第です。
あと1時間続いていたら頭蓋骨が割れていただろう…。
その後は2時間もリリスを一人で置いてしまっていたことに焦り、僕は今小走りで図書館の中小さな僕の魔王を探している。
司書さんに尋ねようとしたが近づくや否や舌打ちを受けたので泣く泣く手当たり次第本棚の裏き回った。
……リリスは僕のために解呪について調べてくれていたはずだ、僕も遊んでいたわけじゃないが妹を一人暗い本の中に置いてきてしまったことを考えると少し胸が苦しくなる。
思えばこの異世界ライフ、いつも彼女がそばにいた。このまま会えなかったら、もしカズトに何らかの理由でリリスが攫われてしまっていたらと思うと自然と足早になる。
そんな僕の不安を裏切って、赤いフードの少女が少し離れたところから手を振っていた。
「!…リリス、ごめん。何も言わずに外に出てて…」
「んーん大丈夫!わたしも今ちょうど終わったとこ…ってその顔の傷何!?もしかして…」
「あ、いやこれはただ女の子に虐められただけだから大丈夫」
言って気づくけどあんま大丈夫じゃねえなその傷。
しかしリリスも異世界人絡みでないのならと安心したようで、その話は切り上げて僕に一冊の本を差し出した。
「ほらお兄ちゃん見て!!私見つけたよっ」
「え!?」
僕が女の子に楽しく吹き飛ばされたりしている頭を打ち付けたりしている間にこの子は僕を助ける方法を見つけたのだろうか、な……何とできた妹か。
いや本当申し訳ねえ、てっきり僕は解呪なんてすっかり忘れて大好きな魔法の本ばかり読んでいるものかと…。
そう思っているとリリスは一つ咳払いをして「見ててねっ」というとその赤いフードを脱いで見せた。
「…じゃーん!部分変化の魔法!この魔法は体の一部を変化させられるから私のツノを消したの!これでもうわたしずっとフード被んなくて良くなったんだぁ〜!」
「……あ、そ、そっすか………。良かったね…」
ニコニコと笑う彼女に僕は何もいえなかった。
外でずっとそれ被ってるの鬱陶しそうだったもんねぇ…よかったよかった。
【ステータスが更新されました】
リリス・ヘルファンタズマ 種族:魔族
スキル
・------
魔法
・ファイアボール
・ファイアランス
・シャドーウォール
・パーツイリュージョン←NEW!




