25話【零魔法】
「……昨日のこと、謝りたくて探した…」
うとうととそんなことを言いながらも眠たげにあくびする少女、昨夜寝ていない僕より眠そうだ。
白銀色のショートの髪の毛が小刻みに揺れて何だか可愛い。
同い年くらいの女の子と話したのは思えば転移してから初めてだったかもしれない。
カーディガンの様なゆったりした服で隠れてはいるがその下から伸びた細く長い脚のおかげでかなり華奢な体格をしているのがわかる。背は僕より十センチほど少し低いくらいだろうか…、140ちょっとかな?
「…あ、えっと……謝るために僕のことを探したって?」
「…うん、そんなはっきりと伝えることじゃないって…姉さんに怒られたから…。」
おそらく僕の欠落適性のこと言っているのだろう。
ゆっくりと立ち上がりながら頭を回す。
その事なら別に気にしてはいないんだけど…わざわざこんな朝早くから来てくれるということはよほど厳しいお姉さんなんだろうか。
「いや、いいよ。元々僕の地元は魔法とかなかったしさ。無いものが無いってわかっただけだし」
「……」
なにやらじっと見つめられる。な、何だろう、照れるな…。
僕に好意でも寄せてくれているの「………変態?」
「はあ!?」
思わず行間を空けず聞き返す。
…いくら言葉責めASMRを好んで聞く僕であっても、知らない女の子にいきなり変態呼ばわりされるのは戸惑う。
………僕の見た目ってそんなに変態っぽく見えるのだろうか…。
「……司書さんに、貴方を聞いたの、こんな感じの人今来てますかぁ…って。…そしたら司書さんがあの変態には関わっちゃダメって…」
「…………」
心外…、ていうか人権の侵害だろ。
何で見知らぬ司書に僕は変態呼ばわりされてるんだ。そういえばサニーが僕の職業やありもしない噂を街中の飲み屋で話してるなんてこと前にギルドの人から聞いた気がする。
あ、アイツ………。
「……他の人もあなたは妹をペットにして初対面の女の人に散歩を誘う変態ペットブリーダーって言ってた…。」
………それはまあ、僕のせいです。
あのギルドでの一悶着そんなに街で噂されてるのか、もうここから逃げたいところだがカズトの呪いのせいで逃げられない。…まさかあの異世界人ここまで計算して僕に呪いをかけたんじゃないだろうな…。
「……あと竜騎士とイチャイチャしてるところをよく見るって…」
「……………」
これはドランのせい。
あのロリコンがいつも僕らを待ってるせいで嫌な噂が立っているみたいだ…。
よりにもよってアイツとだけはない…。
「…男の人が好きなの?」
ブンブンブンと首を全力で振って否定する。
多様性に配慮した時代であっても自分のセクシャリティをはっきりと主張するのは大切なことだ。
ていうかよりによって相手がドランなのはマジでない。
「…なんだ……」
「え?」
何だかがっかりしたように息を漏らす少女。
何だか僕とは真逆の性癖を持っている気がしたが踏み込まないでおく。
「……それで変態」
「もしかしてさっきから僕喧嘩売られてる?」
さっきから続く言葉責めに耐えかねて聞いてみた。
これで「…うん」とでも帰ってきたら泣いていたが幸いそうではないようでフルフルと小さく首を横に振っていた。
「…あなたに、お詫び?したくて…」
「お詫び…?」
こくりと小さく頷くと彼女は懐から魔法紙を取りだす。
ぎゅっと目を閉じながら指先に力を込めている姿を見つつ小動物みたいで可愛いななんて思った。
「…わかった?」
「え?…あぁうん、…可愛い?」
「…………そ、そうじゃなくて……!」
うっかりついて出た僕の言葉に顔を赤らめて否定する少女。
か、可愛い…。
しかし今伝えたいのはそういうことではないようで魔法紙を僕に突きつけてきた。
………変色しない、真っ白なその紙を。
「…えっ」
「…わたしもあなたといっしょ、だから…」
「……教えてあげる、私たちだけのとっておき。零魔法を…」
続けて、言い直しながら彼女はこう言った。
「……ぜ、零の奥義を、みせてやるぜ……」
照れながらそのセリフを言う少女の姿は、マジで可愛かった。




